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福岡高等裁判所 昭和36年(ラ)149号 決定 1961年7月15日

筑紫中央信用組合

理由

記録によつて調査するに、本件は抵当権者筑紫中央信用組合、小笠原フクヱ、園田和枝の申立に基いて、抵当権の実行としてなされた競売手続であるところ、競落不動産は全部抗告外同和金融合資会社が昭和三四年八月二七日同不動産の所有者(競売債務者)月脚繁春との間に、同会社が根抵当権者として有する債権元本極度額二〇万円の被担保債権を月脚繁春において失期弁済しないときは、当然右会社を賃借人とする賃貸借が効力を生ずる旨(賃料月三、〇〇〇円、賃料の支払時期毎月末日、存続期間効力発生の時から三年、賃借権者は賃借権を譲渡しまたは転貸をなすことができるとの内容を有する契約)の停止条件付賃貸借契約を締結し、同会社はこの停止条件付賃借権を保全するため、福岡法務局二日市出張所昭和三四年七月二七日受付第四八一二号をもつて仮登記を経由していること、右会社の月脚繁春に対する債権は、すでに弁済期到来しているのに、弁済がなく停止条件はすでに成就していることの各事実を認定することができる。

右のような賃借権は競売期日の公告に掲記するを要することは、当裁判所の判例とするところである(昭和三五年三月二五日決定、高裁判例集一三巻三号二五七頁。なお、大審院昭和一一年六月二五日決定、一五巻一五〇三頁参照)から、右賃借権を掲記しない本件競売期日の公告は、民訴第六五八条第三号の要件を具備しない違法があり、同法第六七二条第四号第六八〇条により本件競落は許すべきではない。加之職権をもつて調査するに、原審は本件不動産の昭和三五年六月二〇日の第一回競売期日並に同三六年五月一〇日の第一回の再競売期日の公告に前記賃借権を掲記しないで、執行吏に競売を実施させ、許すべき最高競買の申込がなかつたため、順次最低競売価額を低減し、この低減した競売価額を次回の最低競売価額として競売期日の公告に掲記していることが記録上明認されるところ、競売期日の公告に違法がある場合は、競売期日を適法に開くことはできないので、開くべからざる競売期日にたとえ競買申出人がないにしても、次の競売期日における最低競売価額は低減しないそれを公告に掲記すべきである(前示当裁判所の決定並びに同決定援用の各決定参照)。

したがつて本件競落は民訴第六五八条第六号第六七二条第四号第六七四条第二項第六八〇条によつても、これを許すべきでなくこれを許した原決定は取り消さなければならない。

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