福岡高等裁判所 昭和41年(ネ)602号 判決 1968年8月30日
主文
原判決中被控訴人田口健二関係部分を次のとおり変更する。
控訴人らは連帯して、被控訴人田口健二に対し金一一六万九、二〇〇円とこれに対する昭和三七年九月四日以降完済まで年五分の割合による金員を支払え。
右当事者間の訴訟費用は第一、二審ともこれを二分し、その一を控訴人らの連帯負担とし、その一を被控訴人田口健二の負担とする。
本判決は第二項に限り被控訴人田口健二において各控訴人に対し各金二〇万円の担保を供するときは仮りに執行することができる。
被控訴人田口寅雄同田口ミヨ子に対する控訴を棄却する。
前項の控訴費用は控訴人らの連帯負担とする。
事実
控訴人らは、「原判決を取り消す、被控訴人らの請求を棄却する訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする」旨の判決を求め、被控訴人らは「本件控訴をいずれも棄却する、控訴費用は控訴人らの負担とする」旨の判決を求めた。
当事者双方陳述の事実および証拠関係は、次に附加するほか原判決事実摘示と同一であるからこれを引用する。
控訴人らにおいて。
一、請求原因一(二)に対する答弁の補足。控訴人士朗はガソリンスタンドの名義人であつたが、一切の営業は同久之に任かせ自らは農業に従事していたものであり、ガソリンスタンド・雑貨商・自動車修理業を営んでいた者ではない。また控訴人久之は、本件自動車を保有していたが、自動車修理業は当時既に廃業しており、本件自動車は間もなく廃車された。控訴人アヤ子は前に勤人であつたところ、当時失職中のため家の手伝をしていたにすぎない。しかしてアヤ子は、控訴人士朗や同久之から本件自動車の運行を戒められていたのに近所に怪我人が出たので頼まれて怪我人を病院に運ぶ途中本件事故をおこしたものであるから、控訴人士朗同久之が自己のために運行に供していたものでもなく、本件事故がその運行によつて生じたものとも云うことができない。
二、被控訴人寅雄同ミヨ子は慰藉料請求権を有しない。被控訴人田口健二の本件傷害の程度では民法七一一条の類推適用を認めるのは相当でない。
〔証拠関係略〕
理由
一、控訴人ら三名が本件事故につき被控訴人田口健二に対し損害賠償の責任を負うべき点およびその損害額についての当裁判所の判断は、原判決の示す理由と同一であるからこれを引用する。(原判決理由冒頭から一四枚目表末行まで)。右認定に反する〔証拠略〕は、前記判断の証拠および当審証人田原藤枝の証言と対照し信用しない。
二、被控訴人田口健二もまた本件事故について過失があり、そのこうむつた損害の賠償請求について右過失が斟酌さるべき点についての判断も、当裁判所は原判決の示すのと同一であるからこれを引用する。(原判決一四枚目裏一行から一五枚目表六行目まで)。しかして被控訴人田口健二の前記過失の程度について考えるに、控訴人山口アヤ子の自動車の進行して来るのを認識しながら、訴外島田典博とあいあい傘の奪い合いをして道路中央部にとび出し中央線よりやゝ左側によつて来たことによるものであること〔証拠略〕によつて認められるから同被控訴人が小学低学年であつたとはいえその程度は相当に重いといわねばならない。よつて被控訴人田口健二のこうむつた損害額が金二三三万八、四〇〇円であること前記認定のとおりであるから、同被控訴人の前記過失を斟酌し、同被控訴人が控訴人らに対し請求しうべき損害賠償額は金一一六万九、二〇〇円とするのが相当である。
三、被控訴人田口寅雄、同田口ミヨ子の精神的損害の認容せらるべきこと、その損害額の判定についての当裁判所の判断は原判決理由の示すのと同一であるからこれを引用する。
よつて被控訴人田口健二の本訴請求は前記二記載の限度において認容すべきであり、これをこゆる部分は棄却すべきであるから原判決中同被控訴人関係部分を主文第二ないし第四項の如く変更することとし、被控訴人田口寅雄同田口ミヨ子に関する控訴は理由がないから棄却することとし、民事訴訟法三八四条三八六条九五条九六条八九条九二条九三条一九六条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 中園原一 亀川清 岡野重信)