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福岡高等裁判所 昭和46年(ネ)299号 判決 1972年3月24日

主文

本件控訴を棄却する。

原判決をつぎのとおり変更する。

控訴人(附帯被控訴人)は、被控訴人(附帯控訴人)幸峰人に対し金一七一万一四八二円、その余の被控訴人(附帯控訴人)らに対し各金六七万四三二一円および右各金員に対する昭和四三年一月二二日から各完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

被控訴人(附帯控訴人)らのその余の請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審を通じてこれを三分し、その一を被控訴人(附帯控訴人)らの負担とし、その余を控訴人(附帯被控訴人)の負担とする。

この判決は、主文第三項に限り仮に執行することができる。

事実

控訴人(附帯被控訴人、以下単に控訴人という)代理人は、控訴につき「原判決中控訴人勝訴部分を除きその余を取消す。被控訴人(附帯控訴人、以下単に被控訴人という)らの請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を、附帯控訴につき「附帯控訴を棄却する。附帯控訴費用は被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、

被控訴人ら代理人は、控訴につき「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を、附帯控訴として「原判決中、被控訴人ら敗訴部分を取消す。控訴人は、被控訴人幸峰人に対し金二八〇万円、その余の被控訴人らに対し各金一〇三万三〇〇〇円および右各金員に対する昭和四三年一月二二日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。」との判決ならびに仮執行の宣言を求めた。

当事者双方の事実上の主張ならびに証拠関係は、つぎに附加するほかは原判決の事実摘示と同一であるから、これをここに引用する。

一  控訴人の主張

(一)  本件小松ハフペイローダが道路運送車両法第三条、同法施行規則第二条別表第一にいわゆる大型特殊自動車に該当するとしても、

(1)  従前主張の如く、本件自動車の運転には運転免許は不要であり、かつ、自動車登録も必要でないこと。

(2)  本件小松ハフペイローダは税法上は、減価償却資産中の機械設備として取扱われていること。

(3)  更に自動車損害賠償保障法第一〇条により、本件小松ハフペイローダは強制保険の適用も除外されていること、

等からして、本件の如く、控訴人会社の作業場内のみにおいて運行されるものは、自動車損害賠償保障法第三条の適用はないものと解すべきである。

二  被控訴人らの主張

(一)  原判決が認定した、亡幸君子の損害額ならびに被控訴人らの慰藉料額は失当であり、

(二)  更に、被控訴人幸峰人は本件事故に基く損害賠償請求のため、大分県弁護士会所属弁護士河野浩に対し第一および第二審の訴訟を委任したが、その際、弁護士手数料は訴状による請求額につき、謝金は判決認容額につき、かつ、審級別に大分県弁護士会報酬規程による最低額を支払う旨の約束をした。

そして、同被控訴人が同弁護士に対して負担した債務は、本件事故と相当因果関係にある損害であるので、右弁護士に対する費用金一〇〇万円を新たに附加して請求する。

(三)  よつて、前記附帯控訴の趣旨記載の如き判決を求めるものである。

三  証拠関係〔略〕

理由

一  原判決理由一および二記載の事実は当事者間に争いがないところであるので、これをここに引用する。

二  そこで、本件事故について自動車損害賠償保障法第三条の適用の有無につき判断するに、本件小松ハフペイローダが控訴人の所有であり、控訴人がその事業用に使用中であつたことは当事者間に争がないところ、〔証拠略〕によると、本件ハフペイローダは、道路運送車両法第二条第二項にいう自動車であつて、同法第三条、同法施行規則第二条、別表第一の大型特殊自動車中のシヨベルローダに該当し、自動車損害賠償保障法第二条にいう自動車であることが明らかであり、そして、同法にいう運行とは、同条第二項により明らかな如く、道路運送車両法第二条第五項にいう運行よりも範囲が広く、工場敷地内や公園等道路以外の場所のみで、自動車をその用方に従い用いる場合をも含むものであるところ、前記争いのない事実によれば、控訴人は、その所有の本件ハフペイローダを自己のため運行の用に供していたものであり、かつ、本件事故はその運行によつて生じたものであることが明らかであるので、控訴人は本件事故によつて生じた損害につき、自動車損害賠償保障法第三条の責任があるものといわなければならない。

もつとも、同法第一〇条によると、道路(道路法による道路、道路運送法による自動車道及びその他の一般交通の用に供する場所をいう)以外の場所のみにおいて運行の用に供する自動車については、同法の規定する強制保険(同法第五条)の適用はないけれども、そのことと同法第三条の損害賠償責任とは別個の問題であつて、右の自動車についても同第三条の適用を排除さるべきいわれはなく、また、控訴人が主張するような本件ハフペイローダにつき運転免許を要しないことならびに自動車登録を必要としないことないし税法上の取扱いの如きことは、本件事故につき自動車損害賠償保障法第三条の適用の有無の判定に当つては、関係はないものといわなければならない。

三  よつて、本件事故によつて生じた損害額の点について判断する。

(一)  亡幸君子の逸失利益について、

当裁判所は、亡幸君子の得べかりし利益喪失による損害額は金九四万三一四七円と認定するものであるが、その理由は、原判決七枚目裏四行目の「亡君子の」以下同五行目の「月額一二、一一五円であつた」までを「亡君子の昭和四二年七月より同年一二月までの平均賃金は月額一三、六七八円であつた」と改め、同八枚目表三行目の「君子の」のつぎに「右生活費を控除した一ケ月の平均純収入は金五、六七八円となるので、これを基礎にした右君子の」を加え、同四行目から五行目にかけて「金六八三、五二二円」とあるのを「金九四三、一四七円」と改めるほかは、原判決の理由五の(一)と同一であるので、これをここに引用する。

(二)  亡幸君子の慰藉料

当裁判所も、亡幸君子の慰藉額は金一〇〇万円をもつて相当と認めるものであるがその理由は、原判決の理由五の(二)説示と同一であるからこれをここに引用する。

(三)  被控訴人らの慰藉料

当裁判所も、被控訴人らに対する慰藉料として、同幸峰人につき金八〇万円、その余の被控訴人らにつき各金四〇万円をもつて相当と認めるものであるが、その理由は、原判決の理由五の(三)説示と同一であるからこれをここに引用する。

四  当裁判所も、控訴人の過失相殺の抗弁は理由がなく、共済の抗弁は、控訴人主張の(イ)および(ハ)の計金七〇万八七〇二円については理由があるが、その余は理由がないものと判断するものであるが、その理由は、原判決九枚目裏一行目の「主張するけれども、」のつぎに「当審における控訴人代表者本人尋問の結果によると」を加えるほかは、原判決の理由説示(同八枚目裏九行目より同九枚目裏四行目末まで)と同一であるから、これをここに引用する。

五  したがつて、前記三の(一)および(二)の亡幸君子の損害額合計金一九四万三一四七円から右弁済金七〇万八七〇二円を控除した残額金一二三万四四四五円が亡幸君子の損害額となる。

六  ところで、被控訴人幸峰人は亡幸君子の夫であり、その余の被控訴人らはいずれもその子であることは当事者間に争いがないところであるから、前記幸君子の損害賠償請求権を、同人の死亡により、被控訴人幸峰人においてその三分の一である金四一万一四八二円、その余の被控訴人らにおいて各九分の二である金二七万四三二一円の割合で相続したものというべきである。

七  弁護士費用について、

当審における被控訴人幸峰人本人尋問の結果によると、被控訴人らは、本件事件につき、大分県弁護士会所属弁護士河野浩に対し、本件第一審および第二審の訴訟を委任したが、その際、その報酬として、第一、二審毎、各別に、大分県弁護士会報酬等規程の定めるところに従い、その最低の手数料および謝金を、被控訴人幸峰人が責任をもつて支払う旨の約束をしたことが認められるところ、成立に争いのない甲第四号証(大分県弁護士会報酬等規程)によると、手数料は係争利益に従い事件の依頼を受けたとき、謝金は得た利益に従い判決言渡のときに、それぞれ一〇〇万円以下のものについては一〇〇分の一〇以上一〇〇分の三〇以下、一〇〇万円を超える部分については一〇〇分の七以上一〇〇分の二〇以下、五〇〇万円を超える部分については一〇〇分の六以上一〇〇分の一五以下の額となつていることが認められる。

しかして、本件事件の審理経過、事件の難易、その認容額等をも併せ考えるとき、右大分県弁護士会報酬等規程の最低の率に従い算出した本件第一、二審の前記弁護士に対する報酬額(手数料および謝金)中、金五〇万円をもつて、本件事故と相当因果関係に立つ損害(弁護士費用)と認めるのが相当であり、右は被控訴人幸峰人に生じた損害ということができるので、控訴人をしてこれが賠償をなさしめるのを相当とする。

八  以上のとおりであるので、控訴人は被控訴人幸峰人に対し金一七一万一四八二円、その余の被控訴人に対し各金六七万四三二一円および右各金員に対する本件事故の翌日である昭和四三年一月二二日から各完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払う義務があるものというべく、よつて、被控訴人らの本訴請求は、右の限度において正当としてこれを認容し、その余は理由がないので棄却すべきである。

九  そうすると、控訴人の本件控訴は理由がないのでこれを棄却すべきであるが、被控訴人らの附帯控訴は一部理由があるので、附帯控訴に基き原判決を前記の如く変更することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第九六条、第九二条本文、第九三条第八九条を、仮執行の宣言につき同法第一九六条第一項を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 弥富春吉 原政俊 境野剛)

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