大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡高等裁判所 昭和46年(ラ)121号 決定

〔主文〕原審判を取消す。

抗告人の氏「竈」を「早瀬」に変更することを許可する。

〔理由〕本件抗告の要旨は、別紙のとおりである。

よつて、判断するに、抗告人が抗告人の氏である竈(かまど)は難解でありかつ珍奇であつて、社会生活上著しい支障があるので、その氏を「早瀬」に改氏することの許可を求めたのに対し、原裁判所は、抗告人の氏「竈」は難解でもなく、珍奇でもないとして、抗告人の改氏許可の申立を却下する旨の審判をなしたことが明らかである。

ところで、「竈」の字が中学高校用国語辞典に収載されているとしても、同字は当用漢字および人名漢字の中にはなく、「竈」の字は土、石、コンクリート等で築き、鍋、釜をかけて煮たきする火熱、炊飯設備を意味する文字であるが、現在の都会においては、竈自体極めてなじみの少ないものとなつているため、それを意味する字自体も難解の部類に属するものになつているものということができ、「竈」は「へつつい」「くど」ともいい、人の氏としては珍奇な部類に属するものということができ、抗告人がいうが如く、田舎者として侮蔑されるおそれがないとはいえないし、本件記録によると、抗告人およびその同籍者である清雄(昭和二三年一月二六日生)において、そのために社会生活上種々なる支障を来していることが認められる。

そうすると、抗告人の氏「竈」を「早瀬」と改氏するにつき、やむを得ない事由があるものというべく、抗告人の本件改氏許可の申立は、相当としてこれを許可すべきである。

よつて、抗告人の本件申立を却下した原審判は失当であつて、本件抗告は理由があるのでこれを取消すことし、主文のとおり決定する。

(彌富春吉 原政俊 境野剛)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!