大判例

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福岡高等裁判所 昭和46年(ラ)49号 決定

〔主文〕原審判を取消す。

抗告人の氏を父の氏栗山に変更することを許可する。

〔理由〕抗告人は主文と同旨の裁判を求め、その抗告理由は別紙<略>のとおりである。

よつて審案するに<証拠略>を総合すると、

一 抗告人は栗山道男とその妻いくの間に昭和一八年三月一八日長男として出生したが、昭和二六年七月四日両親の協議離婚により同年八月三一日母の氏である峰尾を称する旨の届出がなされ、爾来同氏を称していること。

二 抗告人の父栗山道男は抗告人の母峰尾いくと離婚後しばらくして従前の住居地から立去つて、その後同人の親類縁者に対しても所在を通知することなく、今日にいたるまで抗告人らに対しても何ら音信なくその所在は判明しないが、父栗山道男の親類縁者は、抗告人およびその母らが、栗山道男と別居し戸籍上峰尾の氏を称するにいたつた後においても実生活上は抗告人らを栗山の呼称で交際を継続していたこと。

三 抗告人の父栗山道男の従前の住居地においても抗告人がその氏を栗山に変更することにより、特段の不都合を受けるおそれのある者は存在しないこと。

四 抗告人の母峰尾いくは抗告人がその氏を栗山に変更することに異議なく、抗告人の妻峰尾昭子においても、抗告人の改氏にともなつて同女の氏が栗山に変更されることに異存がないこと。

以上の事実が認められる。かかる場合、抗告人の改氏についての父栗山道男の意向を確認することなしにはこれを許可できないと解すべき理由はなく、抗告人がその氏を父の氏栗山に変更することが公の秩序または善良の風俗に反する結果になると推認すべき特段の事情が認められない以上、これを許可するのが相当であると解せられ、家族制度を廃止した現行民法の中における氏の性格は原審審判の説示するとおりであるが、だからといつて、子が父と同じ氏を称したいという心情を特段の理由なく圧殺することは許されない。

以上により原審家庭裁判所は本件氏の変更を許可する審判をなすべきであつたところ、その申立を却下した審判は失当であり、本件抗告は理由があるので、原審判を取消し、家事審判規則第一九条第二項により審判に代わる裁判をすることとし、主文のとおり決定する。

(彌富春吉 原政俊 境野剛)

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