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福岡高等裁判所 昭和48年(ネ)304号 判決 1974年3月12日

控訴人

田頭産業株式会社

右代表者代表取締役

職務代行者

西辻孝吉

右補助参加人

松吉毎門

園田幸夫

被控訴人

浅野郁朗

右訴訟代理人

庄司進一郎

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人補助参加人両名の負担とする。

事実

控訴会社代表者及び控訴会社補助参加人両名は適式の呼出を受けなが当審口頭弁論期日に出頭しないが、陳述したものと看做すべき控訴人補助参加人両名提出の控訴状には、「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求める旨の記載がある。被控訴人は、本案前の申立として、「本件控訴を却下する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求め、本案につき主文第一項と同旨並びに「控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。

当事者双方の主張および証拠の関係は、被控訴人が本案前の申立の理由として「原審被告(控訴人)がすでに控訴権を放棄しているので、その補助参加人らのなした本件控訴は民事訴訟法第六九条によりその効力を生じないものである。」と述べたほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。<以下省略>

理由

一控訴人補助参加人両名の控訴申立の適否について

1  本件記録によれば、昭和四八年四月一〇日言渡された原判決正本は即日控訴会社代表者(職務代行者)西辻孝吉に送達されたが、同職務代行者は同月一三日控訴権放棄書を原審裁判所に提出し、これが被控訴人に送達されたこと、一方控訴人補助参加人園田は同年五月五日、同松吉は同月二四日原判決正本の送達を受けたこと、控訴人補助参加人両名連名による控訴状は同月一九日原審裁判所に提出されたことを認めることができる。従つて、控訴人補助参加人両名の補助参加が通常のものであれば、被参加人たる控訴会社のために定められた控訴期間内に限つて控訴提起をなし得るものと解すべく、かつ被参加人の意思に反することは許されないものであるから、すでに被参加人たる控訴会社において控訴権放棄をなした後に提起された本件控訴は不適法なものといわなければならないところである。

2  しかしながら、本件訴訟が株主総会の決議の不存在確認を求めるものであることは、被控訴人の主張自体に徴し明らかである。そして、株主総会決議不存在確認の判決が対世的効力を有するものであるから、被控訴人と控訴会社間の訴訟であつても、控訴人補助参加人両名にもその効力が及ぶというべきである。従つて、このような訴訟において、控訴会社のためにする補助参加はいわゆる共同訴訟的補助参加であると見なければならない。

3  いわゆる共同訴訟的補助参加については、民事訴訟法第六九条第二項の適用はなく、同法第六二条の準用を見るべきものである。従つて、本件においては、たとえ控訴会社が控訴権を放棄した後であつても、控訴人補助参加人両名が原判決正本の送達を受けた後二週間以内になした本件控訴は、民事訴訟法第六二条の規定により控訴会社の利益に効力を有するものとして、適法なものというべきである。(なお、控訴人補助参加人松吉の本件控訴は同人に対する原判決正本の送達前になされているけれども、もとよりかかる控訴が有効なものであることは同法第三六六条第一項但書の定めるところである。)

二本案について

被控訴人主張事実はすべて当事者間に争いがない。(もつとも、控訴人補助参加人両名の明確な答弁はないけれども、同人らが殊更控訴会社を補助参加した趣旨を推し測つて、弁論の全趣旨によつて、同人らが被控訴人主張事実を争つているとしても、当裁判所は、原判決二枚目裏七行目から同三枚目裏三行目までに説示するところと同一の理由により被控訴人主張事実を肯認することができるものと判断するから、これを引用する。但し、原判決二枚目裏七行目冒頭から八行目の「甲第一号証」までを「成立に争いのない甲第一号証」と訂正する。なお、原審証人松吉毎門、同園田幸夫の各証言は、職権による証拠調が許されないのにもかかわらず、誤つて職権で取調べられたものであるが、この点については訴訟関係人が異議を唱えた形跡もなく、就中相手方たる被控訴人が当審において右証拠調の結果を原審口頭弁論の結果として陳述していることは記録上明らかであるから、これらの事実に鑑み、質問権を放棄したと見るべく、従つてこれを証拠に供し得るものと考えるのが相当である。)

三してみれば、被控訴人の本訴請求は理由があるので、これを認容すべきところ、これと結論を同じくする原判決は正当であつて、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九四条、第九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(池畑祐治 生田諫二 富田郁郎)

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