福岡高等裁判所 昭和48年(ネ)608号 判決 1974年12月23日
控訴人
西島ミツエ
右訴訟代理人
吉野高幸
被控訴人
国
右代表者法務大臣
稲葉修
右指定代理人
岡崎真喜次
外二名
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実《省略》
理由
控訴人主張の請求原因によると、控訴人が所有権の確認を求める別紙目録記載の土地(以下本件土地という)<省略>は、控訴人が訴外の香正寺より買受けその所有権を取得した土地であるところ、本件土地登記簿の表題部所有者欄に記載された延本日輝は、数代前の香正寺の住職で明治二二年一二月二五日に死亡しその相続人は不存在であるというのである。
そうだとすれば、控訴人が本件土地につき所有権保存登記手続をなすために、所有権の確認ないし所有権移転登記手続請求の被告とすべき適格者は亡延本日輝の相続財産というべきであるから、民法九五二条によつて家庭裁判所から相続財産管理人の選任を得るか、または、急を要し遅滞のため損害を受くる虞ある場合は、民訴法五六条により右相続財産のため特別代理人の選任を得たうえ、亡延本日輝相続財産を被告として訴を提起すべきものといわねばならない。控訴人主張のように、無主の不動産は国庫の所有に属し、被控訴人が本件土地の登記簿上の名義人たる地位をも延本日輝より承継している旨の主張は、本件土地が控訴人所有の土地である旨の控訴人の前記の主張と矛盾撞着するものであつて、被控訴人国が本訴請求の被告としての正当な当事者適格を有する事由となし難い。
よつて、原判決は結論において相当であつて 本件控訴は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用し主文のとおり判決する。
(原田一隆 鍬守正一 松島茂敏)