福岡高等裁判所 昭和53年(く)29号 決定 1978年4月17日
少年 R・H(昭三四・一・一九生)
主文
原決定を取り消す。
本件を佐賀家庭裁判所に差し戻す。
理由
本件抗告の趣意は、附添人弁護士○○○○が差し出した抗告申立書に記載されたとおりであるから、これを引用する。
所論は要するに、原決定は審判期日に附添人を呼び出すことなく、附添人に審判の席において意見を述べる機会を与えないままで保護処分を決定したものであるから、少年審判規則二五条二項、三〇条に違反し、右違反は原決定に影響を及ぼす法令の違反であることが明らかであるから、原決定を取り消したうえ佐賀家庭裁判所に差し戻されたいというのである。
そこで本件保護事件記録を検討してみると、原審は昭和五二年一〇月三日の第一回審判期日には少年の保護者である両親と附添人である○○弁護士の在席のうえで少年を試験観察に付する決定をしたが、昭和五三年三月二七日の第二回審判期日には少年の両親は在席したが、○○弁護士は在席しない席上で少年を中等少年院に送致する旨の保護処分を決定していることが明らかである。しかし○○弁護士に対し、右審判期日に期日の呼出手続をした形跡は記録上認められない。そうだとすると、原審は少年審判規則二五条二項に違反し、附添人を呼び出さないで、その出頭のないままで審判し、少年を中等少年院に送致する旨の保護処分を決定したものというほかはなく、少年保護事件における附添人の地位、役割にかんがみるときは、右法条に違反してなされた原審の本件決定は決定に影響を及ぼす法令の違反があるといわざるを得ない。論旨は理由がある。
よつて本件抗告は理由があるから、少年法三三条二項に則り原決定を取り消したうえ、本件を原裁判所に差し戻すこととして、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 桑原宗朝 裁判官 緒方誠哉 井野三郎)
参考 抗告申立書
申立の理由
原決定は付添人に対し審判期日を通知することなくなされたものであり、付添人に対し意見を述べる機会を与えなかつた点において、少年審判規則第二五条第二項、第三〇条に違反し、右違反は原決定に影響を及ぼすことが明らかであるのみならず、憲法三七条第三項の趣旨を没却するものであります。よつて、本申立に及ぶ次第であります。
編注 受差戻審決定(佐賀家 昭五三(少)二一八号・同三七二八号 昭五三・六・二二保護観察決定)