福岡高等裁判所 昭和53年(ラ)29号 決定 1978年11月13日
抗告人 安田ヤス子
右代理人弁護士 渡辺彬迪
相手方 拓成土木株式会社
右代表者代表取締役 中島学
主文
本件抗告を棄却する。
抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
本件抗告の趣旨及びその理由は、別紙記載のとおりである。
よって判断するに、当裁判所も、抗告人の大分県国民健康保険団体連合会に対する診療報酬債権は民訴法第六〇四条所定の「継続収入ノ債権」に該当し、これに対する債権差押え並びに取立命令の発布が許されないいわれはない、と解釈するものであるが、その理由は左に付加するほか、原決定理由説示と同一であるから、これを引用する。
抗告人は、仮に、抗告人の大分県国民健康保険団体連合会に対する診療報酬債権が民訴法第六〇四条所定の「継続収入ノ債権」に該当するとしても、条理上、その差押えの範囲については、同法第六一八条の類推適用により、一定の範囲に制限されなければならない旨主張するが、医師の社会保険診療報酬債権は同法第六一八条第一項所定の差押禁止債権でないのみならず、該債権の性質上、同条項を類推適用して差押えの範囲を制限することも相当でないと解すべきであるから、抗告人の右主張も採用の限りでない。
してみれば、本件債権差押並びに転付命令に対する異議申立を却下した原決定は相当であり、本件抗告は理由がないからこれを棄却することとし、抗告費用の負担について民訴法第九五条、第八九条を適用して、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 高石博良 裁判官 鍋山健 原田和徳)
<以下省略>