福岡高等裁判所 昭和53年(行コ)25号 判決 1979年8月30日
控訴人(被告) 熊本県公安委員会
被控訴人(原告) 株式会社ホテルエヤポート
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
控訴人は、「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は主文同旨の判決を求めた。
当事者双方の主張及び証拠関係は、次のとおり付加するほか、原判決事実摘示と同一であるからこれを引用する。
1 控訴人の補足的主張
法四条の六第一項にいう「個室に自動車の車庫が個々に接続する施設」とは、文理及び立法趣旨に即して解釈すれば、個室ごとにそれに対応する車庫が物理的に接続している施設であれば足り、特定の個室と特定の車庫の利用上の一体性、具体的な人の行動の秘匿性までは問わないが、秘匿性については、人の行動の秘匿性のみでなく、自動車の秘匿性をも確保し得る施設であると解すべきである。
また、法四条の六第一項は、総理府令とあいまつてモーテル営業を規制しているものであり、法規制の対象となる人の行動の秘匿性及び自動車の秘匿性が高い施設は、同条同項にいう施設であつて、かつ、総理府令に該当するものなのである。同条同項は専ら右の秘匿性を確保し得る施設に着目して規定し、右の秘匿性の程度は総理府令に委任しているのである。
2 被控訴人の補足的主張
法四条の六第一項にいう「個室に自動車の車庫が個々に接続する施設」とは警察庁がモーテル規制のために出した通達によつても「個室ごとに専用の車庫が物理的に接着していること」と明記されており、控訴人は被控訴人に対し、本件規制すべきでないのに拘らず、右通達に反して本件規制をしているのである。
3 新たな証拠<省略>
理由
一 当裁判所も、被控訴人の本訴請求は、正当として認容すべきものと判断するものであるが、その理由は、次のとおり付加し、改めるほか、原判決説示の理由と同一であるからこれを引用する。
1 原判決一一枚目表五行目に「のうち旅館営業の許可年月日を除き」とあるのを、同八行目から九行目にかけて「および原告代表者尋問の結果」とあるのを、同九行目から一〇行目にかけて「原告に対する旅館営業の許可年月日は昭和四八年七月一八日」とあるのをいずれも削除し、同一三枚目裏六行目に「証人谷本彰の証言」とあるのを「同第一二、第一三号証、原審における証人谷本彰、当審における浜田栄次の各証言」と改め、同一一行目の「構造上」の次に「これを利用する客及びその者の利用する自動車の」を加える。
2 同一四枚目裏五行目から六行目にかけて「構造設備であつて、利用客の行動の秘匿性の高いもの」とあるのを「構造設備のもの、換言すれば、特定の個室と特定の車庫との間に「車庫付個室」というべき利用上の一体性のある施設」と改める。
3 同一四枚目裏七行目以下同一五枚目表二行目までを次のとおり改める。
「本件建物についてこれをみるに、前記認定のとおり、一階の車庫の数と二階の個室の数とは一致しないばかりか、個室と車庫の重なり方は不整形であり、しかも一階の車庫に入つた利用客は、一階二階の各共同通路を使用したうえ、二階個室の空室のものを選んで任意に入室することができる構造になつているのであるから、特定の車庫と特定の個室が接着もしくは接続しているとはいえず、このような施設は、法四条の六第一項にいう「個室に自動車の車庫が個々に接続する施設」には該当しないものというほかはない。」
二 そうだとすると、原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 斎藤次郎 原政俊 寒竹剛)