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福岡高等裁判所 昭和55年(ネ)136号 判決 1981年2月26日

長崎市八千代町一番一八-一〇一号

控訴人

株式会社丸善商会

右代表者代表取締役

小原勝雄

右訴訟代理人弁護士

木幡尊

東京都千代田区霞が関一丁目一番一号

被控訴人

右代表者法務大臣

奥野誠亮

右訴訟代理人弁護士

山口英尚

右指定代理人

草野幸信

上野茂興

荒牧敬有

岡正克

島内米雄

柳瀬清泉

中村程寧

右当事者間の損害賠償請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人は、控訴人に対し、金一億円及びこれに対する昭和四六年一〇月一八日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。

当事者の主張及び証拠関係は、次のとおり付加するほか、原判決事実摘示と同一であるからこれを引用する。但し、原判決九枚目表一行目の末尾に「但し、原処分の理由中、原処分庁が本件契約による収入金額を原告に帰属すると認定した事由は、右契約が原告名義で締結されていたことのみではない。」を加え、同一一枚目表一行目から二行目にかけて「解答なさず、」とあるのを、「解答をなさず、」と改める。

一  控訴人の補足的主張

原処分庁が本件公有水面埋立権等の譲渡等による収益の帰属主体を誤認したのは、控訴人代表者小原勝雄において、税務調査の当初から右帰属主体が小原個人であることを主張し、呈示した書類上の記載とは符合しない理由等を説明したにも拘らず税務調査官において、誤った先入感により右帰属主体が控訴人であると決めてかかって右主張を無視し、本来なすべき調査を怠ったことに起因するものであるから、原処分庁に過失があったことは明らかである。

二  右主張に対する被控訴人の答弁

争う。

三  新たな証拠

控訴代理人は、当審における控訴人代表者尋問の結果を援用した。

理由

一  当裁判所も、控訴人の本訴請求は失当としてこれを棄却すべきものと判断すべきものであるが、その理由は、次のとおり付加し、改めるほか、原判決説示の理由と同一であるからこれを引用する。

1  原判決理由二枚目表一行目の「及び」の次並びに同三行目の冒頭にそれぞれ「原審及び当審における」を加え、同三枚目裏九行目に「誤りはないと述べるのみで、」とあるのを「誤りはないとか、小原個人において本件埋立権を丸善石油株式会社から譲受けたものであって、本件契約による収入金額が小原個人に帰属する旨述べるのみで、」と改め、同一一行目の「反面調査により」の次に「本件埋立権の帰属主体が誰であったかとの点を含めて」を加える。

2  同五枚目裏一一行目に「積極的に主張したこともない。」とあるのを「積極的に説明したこともなく、その裏付けとなる資料等の提出も行わなかった。」と、同六枚目裏一二行目の「かかる事実」以下同七枚目表一〇行目までを「前記認定のように、小原及び原告関係者において、長崎税務署職員の質問に対する回答として本件契約による収入金額が小原個人に帰属する旨を述べたにとどまり、これを裏付ける資料の提出をしなかったばかりか、特に裏金の授受につき指摘を受けてからは、調査に協力しない態度を表明したため、原処分庁は、本件契約に基づく収益の帰属主体が誰であるか、その額はいかほどであるかについて反面調査等をし、その結果、右裏金を含めて本件契約による収入金額が原告の所得に属すると合理的に判断できるだけの資料を得たのであるから、かかる状況下で、原処分庁がそれ以上に右収入金額の帰属主体につき調査を進めなかったとしても、無理からぬものというべく、そのことについて原処分庁に調査不備等の過失があったとすることはできない。」と各改める。

二  そうすると、原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 松村利智 裁判官 原政俊 裁判官 寒竹剛)

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