福岡高等裁判所 昭和58年(ネ)686号 判決 1984年6月27日
主文
原判決を取り消す。
被控訴人の請求を棄却する。
訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
事実
第一、当事者の申立
一、控訴人ら
主文と同旨
二、被控訴人
1. 本件控訴を棄却する。
2. 控訴費用は控訴人の負担とする。
第二、当事者の主張
一、請求原因
次のとおり訂正するほかは、原判決事実摘示に記載のとおりであるから、これを引用する。
原判決一枚目裏一二行目及び二枚目表七行目に、「寝装のしらかわ」とあるのを、「有限会社寝装のしらかわ」と訂正する。
二、請求原因に対する認否
請求原因事実は認める。
三、抗弁
控訴人真弓百十彰は、昭和五八年五月三一日有限会社寝装のしらかわ(以下訴外会社という。)との間で、本件呉服の売買契約を合意解除した。
このような場合、割賦販売斡旋業者である被控訴人が控訴人らに対し、立替契約に基づく金員の支払を請求することは、信義則に反し許されないものというべきである。
四、抗弁に対する認否
抗弁事実は争う。
第三、証拠<略>
理由
被控訴人主張の請求原因事実は、当事者間に争いがない。
そこで控訴人ら主張の抗弁につき判断するに、控訴人ら名下の各印影部分の成立に争いがないから、控訴人ら作成部分は全部真正に成立したものと推定すべく、その余の部分は弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第一号証、当審における控訴人真弓百十彰本人尋問の結果及びこれにより真正に成立したものと認められる乙第一号証の一並びに弁論の全趣旨によれば、控訴人真弓百十彰は昭和五七年八月二五日訴外会社との間に呉服一式を買受ける契約を締結し、同日被控訴会社との間に加盟店契約を締結している訴外会社を通じて被控訴会社との間に本件立替契約を締結したこと、訴外会社は控訴人真弓百十彰の多数回にわたる催促にもかかわらず注文した呉服一式を納入せず、同年暮ころに至り、訴外会社と控訴人真弓百十彰は右売買契約を解除する旨を合意し、昭和五八年五月三一日右の合意を記載した商談解約書と題する書面を作成したこと、右書面には、右解約に伴う諸問題は訴外会社が責任をもって処理する旨の記載があること、右合意解除当時も訴外会社が被控訴会社の加盟店であったことが認められ、右認定に反する証拠はない。
右の事実に照らして考えると、訴外会社と控訴人真弓百十彰がなした右売買契約の合意解除により、本件立替契約の目的である同控訴人の売買代金債務は、本件立替契約締結当時に遡って消滅したこと、訴外会社は被控訴会社の加盟店であり、被控訴会社のために本件立替契約締結の衝にあたった者であり、かつ右合意解除当時も被控訴会社の加盟店であること、さらに訴外会社は同控訴人に対し、前記のような文言を記載した書面を交付していることに鑑み、被控訴会社においてなお控訴人らに対し本件立替契約に基づく履行の請求をすることは、信義則に反し許されないものと解するのが相当である。
そうすると控訴人らの抗弁は理由があるから、被控訴人の控訴人らに対する本件各請求はいずれも失当である。
よって本件控訴は理由があるから、原判決を取り消し、被控訴人の請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九六条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。