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福岡高等裁判所 昭和58年(ネ)731号 判決 1984年6月19日

控訴人

甲野花子

控訴人

乙山一郎

右法定代理人後見人

甲野花子

控訴人

乙山二郎

控訴人

乙山春子

右控訴人ら四名訴訟代理人

鈴木忠一

高木茂

被控訴人

丙原秋子

右訴訟代理人

原口酉男

竹之下義弘

松尾紀男

被控訴人

福岡高等検察庁検事長

石原一彦

主文

1  原判決中、福岡地方裁判所が同裁判所昭和五五年(タ)第七〇号親子関係不存在確認等請求事件につき昭和五六年二月二六日に言渡した判決(確定判決)のうち被控訴人丙原秋子が本籍地福岡県○○市大字○○町六一九番地亡乙山勇の子であることを認知する旨の部分に関する控訴人ら敗訴の部分を取消し、右部分を福岡地方裁判所に差戻す。

2  原判決中、右確定判決のうち被控訴人丙原秋子と本籍福岡県○○市大字○○○町一六四番地亡丁野正一及び同亡丁野マサとの間に親子関係が存在しないことを確認する旨の部分に関する控訴人らの控訴をいずれも棄却する。

3  控訴費用中前項に関する部分は控訴人らの負担とする。

事実

控訴人らは「原判決を取消す。本件を福岡地方裁判所に差戻す。」との判決を求め、被控訴人丙原秋子は「本件控訴をいずれも棄却する。控訴費用は控訴人らの負担とする。」との判決を求めた。被控訴人福岡高等検察庁検事長は、適式の呼出しを受けながら当審において最初になすべき昭和五九年二月二三日午前一〇時の口頭弁論期日に出頭しなかつたが、陳述したものとみなした答弁書には「本件控訴をいずれも棄却する。控訴費用は控訴人らの負担とする。」との判決を求める旨の記載がある。

当事者双方の事実上の陳述及び証拠の関係は、次のとおり付加訂正するほか、原判決事実摘示及び本件記録中原審証拠目録に記載のとおりであるからこれを引用する。

一  原判決三枚目表一一行目の冒頭から一二行目末尾までを「亡乙山勇と法律上の親子関係を生じ、控訴人らとも兄弟姉妹の身分関係を生ずると共に被相続人亡乙山勇の相続人となつて、控訴人らの身分関係及び相続権が侵害されることになる。」と改める。

二  原判決四枚目表一二行目の『「何人にも、』から同裏一二行目の末尾までを次のとおり改める。

「第三者所有物の没収に関する最高裁判所昭和三七年一一月二八日大法廷判決(刑集一六巻一一号一五三九頁)は、いわゆる法律上の審問請求権(西ドイツ基本法一〇三条一項参照)の本質を明らかにすると共に、この権利は当該手続の当事者のみならず、当該手続に基く裁判の効力を法律上直接に受ける第三者にも保障されなければならない場合のあることを明確に宣言した。この根本思想は、刑事、民事をとわず、また弁論主義による場合か職権探知による場合かにも関係なく適用されるのであつて、右大法廷判決の後に公布施行されるに至つた刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法(昭三八法一三八)は勿論のこと、行政事件訴訟法(昭和三七法一三九)二二条、三四条の諸規定も右根本思想の表明にほかならない。

もともと憲法三二条は、裁判所における手続が憲法の規定及び精神に合致した適正公平なものでなければならないことをも保障するもので、この規定と前記最高裁大法廷判決の趣旨及び右判決の援用する憲法三一条、二九条の規定をあわせて考えると、憲法は単に手続の当事者のみならず、当該手続による裁判の効力を直接に受ける第三者に対しても、当事者に準じて当該手続において審問を請求する権利を保障していることが明らかである。そうして右の大法廷判決は、第三者が告知、弁解、防禦の機会を与えられることなく裁判により権利を奪われるときは、当該手続を定める法律に第三者審問についての規定がない場合でも憲法の保障する適正公平な手続による裁判とはなり得ない場合があることを明示している。

ちなみに控訴人らは本件確定判決により、第三者として最も直接に身分上、財産上の不利益を被るもので、本件確定判決に関する限り、審問の機会を与えられるべき第三者中の最先頭に位置するものである。」

三  原判決四枚目裏一三行目の「人事訴訟手続法は、」から同五枚目表一三行目の末尾までを次のとおり改める。

「 人事訴訟手続法二九条の二は、昭和一七年法律七号によつて追加された条文でこの関連により同法三二条二項が新設されて父又は母死亡後の認知の訴は検察官を以て相手方とすることが認められ、この場合の認知の判決についても同法三二条一項により同法一八条(判決の効力の拡張)が準用されることとなり現在に至つている。

従つて、検察官を相手方とする認知の場合に限定して言えば認知の確定判決の効力が当事者以外の第三者にも及ぶことは、人事訴訟手続法の規定上明らかであるのに、その判決の効力をうける第三者に審問の機会を与えることを定めた規定がなく、控訴人らは告知、弁解、防禦の機会を全く与えられないまま突如として確定判決を突きつけられ、被控訴人丙原秋子と控訴人らの間に兄弟姉妹の関係があり、亡乙山勇の遺産に関しても被控訴人丙原秋子と共同相続人の関係に立つことを強制されることとなつたが、これは適正な法律手続によらないで身分関係を強制され相続権を害されることにほかならず、第三者所有物の没収について大法廷判決の説示したところと軌を一にするものである。

即ち、本件に則していえば、被控訴人丙原秋子が認知を求める父乙山勇の嫡出子たる控訴人らに対し何ら審問の機会を与えることなく右被控訴人の請求を認容した本件確定判決は、控訴人らの有する審問請求権を無視した点で憲法三一条、三二条、一一条等に違背した違法があつて、憲法上その効力を認めることができない。」

四  原判決五枚目裏五行目から同六枚目裏一行目の末尾までを次のとおり改める。

「 民事の確定判決が法により与えられている効力を完全に具備するためには、原則として当事者双方がその手続で審問の機会を与えられたことを不可欠の要件とする。従つて当事者が故なく審問の機会を奪われた場合は、前述の如く判決の当然無効を認めない建前からみて再審による救済がなされてしかるべきであり、救済されなければならないのである。

民事訴訟法四二〇条一項三号は、法定代理権、訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をなすに必要なる授権の欠缺ありたるときを再審事由とし、その場合は同法四二四条(再審期間)の適用がないとしている(同法四二五条)。そうして右の再審事由はまた絶対的上告事由でもある(同法三九五条一項四号)。更に右の再審事由は、訴訟追行上代理人によるべき場合にこれがなかつた場合(無能力者の本人訴訟等)を含む。その理由は、当該当事者がその立場を正確に裁判所及び相手方に表明する機会を持つたと確証されない故に、その弁論は無価値であり、審問の機会が与えられていないに等しいとみたからにほかならない。

しかして、事件当事者が審問請求権を持つことは当然の理であるが、法律の規定上その確定判決の効力が直接第三者に及び、第三者が不利益を蒙るおそれがあるときは、その第三者に対しても審問の機会が与えられなければならないことも、前示最高裁大法廷判決、第三者所有物没収手続応急措置法、行政事件訴訟法等の例によつて明らかである。

本件認知事件においては、亡乙山勇に控訴人ら嫡出子があることは戸籍上明らかであり、その住所も戸籍を手掛りとすれば容易に知り得たのである。従つて右認知事件の受訴裁判所は控訴人らがその判決の効力を受ける地位にあり、不利益を被るおそれがあることを考慮し、審問の機会を与えるため当該訴訟の係属、進行状態、次回期日、参加の可能性、不参加の場合の効果等を控訴人らに告知すべき責務があつた。人事訴訟手続法にかかる告知規定がないとしても、これは受訴裁判所が認知請求を適正・公平に審判するための不可欠の措置であり、憲法三二条、三一条、一一条、一二条によつて告知を義務づけられているのである。

もともと控訴人らは民法七八六条により被控訴人丙原秋子の主張を争う固有の権利を有しており、右事件の受訴裁判所が控訴人らに右の告知を行つていたとすれば、検察官に対する共同訴訟的補助参加をもつて右訴訟に参加することができた筈であつた。

人事訴訟手続法三二条一項、五条、一〇条、三一条(職権探知主義)等は、本件において控訴人らが再審を求めることを排斥する理由とはならない。もともと右認知請求事件の受訴裁判所が職権探知主義の趣旨を正当に理解し、公益の代表者たる検察官の協力を得て事案の解明につとめる態度で訴訟指揮を行つていたとすれば、当然控訴人らは証人、参考人等として尋問あるいは事情の聴取をうけた筈で、控訴人らはその機会に右訴訟の係属を知り、前述の訴訟参加をすることもでき、控訴人らが本件で問題としているようなかたちでの第三者審問請求権の問題は生じなかつたものである。しかるに右認知請求事件では、受訴裁判所も、検察官も、形式的審理をしているにすぎないのであつて、単に職権探知主義の原則があるからこれによつて控訴人らの権利が手続上保障されているなどと論ずるのは失当である。

控訴人らは、認知の確定判決が第三者にも効力を及ぼすのに、法律上これに審問の機会を与える規定がないのは憲法の保障する正当な手続とはいえないから、当該手続が憲法に適合する正当な手続であるためには、判決の効力をうける第三者に審問の機会が与えられなければならないと主張しているのである。

そうして本件認知請求の確定判決の効力を直接かつ最も重大にうける第三者たる控訴人らは、右事件で弁論の機会(審問の機会)が全く与えられず、自己の責に帰することができない事由で右認知訴訟に関与しないままその判決が確定したのであるから、当事者に対し弁論の機会を与えずに判決を確定させた場合と全く同じで民事訴訟法四二〇条一項三号、四二五条の類推適用により、再審事由があるといわざるを得ないのである(行政事件訴訟法三四条参照。なお、第三者審問権の保障については前述の行政事件訴訟法二二条一項のほか、民事執行法一五七条一、三項、商法一〇五条四項、四一六条一項、二四七条二項、二八〇条の一六等参照。)。」

理由

一<証拠>に弁論の全趣旨をあわせると、

(イ)  被控訴人丙原秋子(昭和一四年一月一六日生)は、本籍福岡県○○市大字○○○町一六四番地(亡)丁野正一、同(亡)丁野マサの長女として戸籍に記載されているところ、昭和五五年一〇月一五日、福岡地方検察庁検事正を被告とし、被控訴人秋子と右丁野正一、同マサ間に親子関係が存在しないことの確認と、同被控訴人が本籍福岡県○○市大字○○町六一九番地亡乙山勇(明治三六年八月一日生、昭和五五年四月六日死亡)の子であることを認知する旨の判決を求め、福岡地方裁判所に訴えを提起したこと(同庁昭和五五年(タ)第七〇号事件)、

(ロ)  右事件において被告たる福岡地方検察庁検事正は、答弁書をもつて被控訴人秋子の生年月日、同人についての戸籍記載事項等は認めたが、被控訴人秋子と右丁野正一、同マサとの間の親子関係の存否、被控訴人秋子と亡乙山勇との間の親子関係(父子関係)の存在等は不知と述べただけで、証拠調の申立はせず、口頭弁論期日にも出頭しなかつたこと、

(ハ)  右受訴裁判所は被控訴人丙原秋子の申請により、各戸籍謄本のほか証人○○○○(亡乙山勇の友人)、同○○○(右丁野正一の弟)を取り調べた上、昭和五六年二月二六日、被控訴人丙原秋子の請求を全部認容する判決を言渡し、右判決は昭和五六年三月一六日の経過をもつて確定したこと(本件確定判決)、

(ニ)  控訴人甲野花子は、右乙山勇とその妻シズエ(昭和五一年死亡)間の長女、控訴人乙山一郎、同乙山二郎は右乙山夫婦の各養子、控訴人乙山春子は右乙山夫婦の二女であつて、いずれも右乙山勇の相続人であること、

(ホ)  被控訴人秋子の戸籍上の父正一は、右乙山シズエの兄であつたこと、

(ヘ)  控訴人らは、右認知等請求事件について訴訟告知をうけていないことは勿論、証人として取調べをうけたこともあるいは検察官から利害関係人として事情を聴取されたこともなく、右訴訟の係属も右判決が確定するまで知らなかつたこと

の諸事実関係を認めることができる。そうして、これらの事実関係にてらすと、控訴人らはいずれも身分関係、相続関係(被相続人乙山勇)について、本件確定判決(認知認容部分)の効力を直接にうける第三者の地位にあり(人事訴訟手続法三二条、一八条一項)、かつ右訴訟係属を知らなかつたことについて控訴人らの責めに帰すべき事由はなかつたと認めることができる。

以上の認定を左右するに足る証拠はなく、この事実関係にてらすと、控訴人らは、右認知の訴えについて独立に当事者となる適格はないが、なおその判決の効力が及ぶ第三者として共同訴訟的補助参加をなし得る場合であつたと認めることができる。

二人事訴訟における身分判決の効力をうける第三者の利益の保護については、一般的には人事訴訟手続法における職権探知主義の運用にまつほかない。即ち、検察官は公益の代表者として常に訴訟手続に関与することができ(人事訴訟手続法五条、二六条、三二条一項、六条、二六条、三一条一項)、裁判所も職権をもつて証拠調をなし訴訟当事者の提出しない事実を斟酌して事容の認定をすることができる(同法一四条、二六条、三一条二項)、当事者の処分権を前提とする認諾、裁判上の自白は排除され、民事訴訟法一三九条、一四〇条一項、三一六条、三一七条の適用もない(人事訴訟手続法一〇条、二六条、三二条一項)。

人事訴訟手続法は、以上の職権探知主義の運用をもつて裁判所が実体的真実を把握し、適正な判決をすることによつて身分判決の効力をうける第三者の正当な利益も保護されることを期待しているものと解される。

三憲法三二条は裁判を受ける権利を国民に保障するが、人事訴訟の場合、多くは各訴えの類型に応じて当事者適格者が法定されていて、当該判決の効力を受ける者が常にその訴訟の当事者適格を有するとは限らない。本件の認知訴訟についていえば、原告は認知を求める子(被控訴人秋子)であり、被告は生存中は父として認知を求められる乙山勇である(民法七八七条)。そうしてその父死亡後は三年内に限つて検察官が被告となる(人事訴訟法三二条二項、二条三項)。これは、右の訴えが直接には法律上の親子関係の創設という身分関係の形成を目的とするからにほかならない。しかし、確定判決によつて被控訴人秋子と乙山勇との間に法律上の親子関係が形成されると、身分関係の画一的確定の要請により、被控訴人秋子と乙山勇の嫡出子である控訴人らとの間にも兄弟姉妹関係を生じ、扶養義務が発生し、相続分が変動するなど右事件の当事者適格を有しない控訴人らが不利益を被ることがある。ただ右認知の確定判決が真実に合致しているものであれば、控訴人らはその不利益を甘受すべきものであるから受訴裁判所は前記の職権探知主義に則つた適切な訴訟指揮をもつて、事案の実体的真実を把握するよう審理を尽すべき責務があるということになる。

以上のようにみて来ると、本件認知判決が確定した以上、控訴人らはこれを争い得ないようにみえる。しかしながら、控訴人らは右の如く本件認知訴訟の当事者適格を有しないがその確定判決の効力を受ける第三者であるから、責に帰すべき事由もなく不知の間に戸籍上は「いとこ」にすぎなかつた被控訴人秋子と亡父との間の認知判決が確定し、兄弟姉妹の身分関係を生じ、扶養義務や相続分の変動等の効果を受けるようなことになつたとすれば、憲法三二条が国民に裁判を受ける権利を保障している(前述の如く控訴人らは右訴訟の係属を何らかのかたちで告知されておれば、共同訴訟的補助参加をもつて右訴訟に関与することもできた)趣旨にてらしても、不合理は免れない。更に認知を求められた父の死後に検察官を被告として提起追行された認知訴訟の場合は、直接の利害関係人でもなく、事情にも通じない検察官に必らずしも十分な訴訟活動を期待できず、職権探知主義とはいいながら受訴裁判所も当事者が提出する証拠資料以外の証拠を十分に蒐集するのは困難であるから控訴人らに参加の機会を与えて訴訟活動を行わせることは、実体的な真実を把握する点でも人事訴訟の目的にそうところである。

これらの事情を勘案すれば、本件においては控訴人らの救済を考えるべき十分な理由がある。

四最高裁判所昭和二八年六月二六日第二小法廷判決(民集七巻六号七八七頁)は、甲が乙の夫丙の死後、検察官を相手方として認知の訴を提起し、認容の確定判決を得た後、乙が甲は丙の子ではなく事実に反する認知であることを理由に、右認知の無効の宣言を求めた事案について、認知の判決が正当な当事者間に確定している以上、該判決は第三者たる乙に対しても効力を有するから、反対の事実を主張して認知無効の訴を提起することはできない旨判示したが、なお乙が右判決を再審の手続で争う余地を認めている。

人事訴訟とは規定の内容を異にするが職権審理が行われ、処分又は裁決の取消判決に対世効を認める行政訴訟においては、処分又は裁決を取り消す判決により権利を害された第三者で、自己の責めに帰することができない理由により訴訟に参加することができなかつた者は、一定の条件の下に再審の訴えができるとされている(行政事件訴訟法三四条)。この規定の同法二二条(第三者の訴訟参加)の規定をあわせて考えると、右の第三者再審の規定は憲法三一条、三二条の精神に則つたものであることが明らかである。

次に本件認知の確定判決が控訴人らに及ぼす効力は、単に財産権の範囲にとどまらない。即ち、本件確定判決により被相続人乙山勇の遺産に関して控訴人らの相続分に変動を生ずることは前述のとおりであるが、被控訴人秋子と控訴人らの間に兄弟姉妹の身分関係が生じ、その法律上の身分関係に基く扶養関係その他の法律上の効果も生じることになる。

そうだとすれば、本件においても右行政事件訴訟法三四条の趣旨を類推し、責めに帰すべき事由なくして本件認知訴訟の係属を知らず、参加その他の方法で右事件の審理に関与する機会を与えられなかつた控訴人らについては、民事訴訟法四二〇条に定める再審事由が容認される限り再審をもつて被控訴人らに対し右確定の認知判決を争うことを認めるのが相当である。

五そうして前記の事実関係にてらすと、控訴人らは本件認知訴訟に参加して訴訟活動をなし得たのに責めに帰すべき事由なくその機会を奪われ、自己に効力の及ぶ確定判決をうけてしまつたのであるから、実質的に裁判を受ける権利を奪われたという意味で民事訴訟法四二〇条一項三号、四二五条の類推適用による再審事由があると認めるのが相当である。

六但し本件確定判決中被控訴人秋子と亡丁野正一、同マサ間の親子関係不存在確認部分は、認知認容部分において説示したような意味での法律上の効果を控訴人らに及ぼすものではないから、この点についての控訴人らの再審事由は認められない。

七してみると、控訴人らの本件再審の請求のうち、本件確定判決中認知認容部分については再審事由があるので、この限度で本件控訴は理由があり、右と異る原判決部分を取消し、本案につきなお原裁判所で審理させるのが相当であるからこれを福岡地方裁判所に差戻し、本件確定判決中被控訴人秋子と亡丁野正一、同マサ間の親子関係不存在確認部分は、再審事由がなく棄却を免れないから同旨の原判決は相当でこの点に関する本件控訴はいずれも棄却を免れない。

よつて、右控訴棄却部分につき民事訴訟法九五条、九二条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(西岡德壽 岡野重信 松島茂敏)

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