福岡高等裁判所 昭和59年(う)597号 判決
所論は要するに,原判決は「女性従業員に不特定多数の男性客から対価を得て手淫,口淫などの性交類似の行為をさせる業務」をもって職業安定法63条2号にいう「公衆道徳上有害な業務」と認定している。しかし右条文にいう「公衆道徳上有害な業務とは,売春など他の法律上違法であることが明らかな行為に限定して解釈すべきものである。また,右条文は労働者保護の見地から人身売買類似行為とみうる職業紹介行為等を処罰する職旨であるから,業務行為の内容自体が不道徳であっても,それだけでは右条項違反に当らない。
所論にかんがみ原判決の法令の適用を検討すべきところ,関係証拠から明らかなように,被告人は男性クリニツク「ラブハウス」長崎店の店長をしていたものであるが,同店には客室(個室)が5あり,コンパニオンと称する女性従業員がその1室内で不特定多数の男性客と1対1でサービスに当たり,その対価(30分で7,000円という高額なものである)を取得するものであるが,業務内容は,男性客は全裸,女性従業員は全裸もしくはこれに近い姿となり,男性客の陰茎を手でこすったり(手淫),口に含んだり(口淫)して射精させるというものであって,右は公衆道徳上有害な業務と認めるのが相当である。もっとも,手淫や口淫は性交ではないから対価を得ても売春ではなく,法律によって直接禁止されたものでないことは所論指摘のとおりであるが,右は売春類似行為によって収益を図るものであり,社会一般の通常の倫理観念に抵触しその維持に支障を来し,社会共同生活に害を流すものであるから,公衆道徳上有害性は否定できないところである。そして,公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で労働者の募集を行えば,それが人身売買行為とはいえなくても,職業安定法63条2号に該当することは明らかであるから,所論は採用することができない。