福岡高等裁判所 昭和59年(行コ)9号 判決 1985年2月28日
熊本市坪井二丁目二番四二号ニュー広町ビル二階三号室
控訴人
破産者内村健一訴訟承継人破産管財人
福田政雄
同
同
下光軍二
同
同
稲村五男
熊本市二の丸一番四号
被控訴人
熊本西税務署長
田中光則
右指定代理人
岡光民雄
同
辻井治
同
亀谷和男
同
田邊安夫
同
公文勝武
同
小城雄宏
同
永田康昌
同
谷口利夫
同
小佐井秀秋
右当事者間の所得税更正処分取消請求控訴事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。
主文
本件控訴をいずれも棄却する。
控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 控訴の趣旨
1 原判決中、左記2記載の請求部分を棄却した部分を取り消す。
2 被控訴人が、破産者内村健一に対し、
(一) 昭和四五年分の所得税について同四六年一一月三〇日付でした更正処分のうち、総所得金額につき二、六四三、一四四、二八九円を超える部分、
(二) 昭和四六年分の所得税について同四七年六月二一日付でした更正処分(ただし、同年一一月三〇日付の再更正により減額された部分を除くその余の処分)のうち、総所得金額につき一、五九四、七二四、〇四八円を超える部分、
をいずれも取り消す。
3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 控訴の趣旨に対する答弁
主文と同旨
第二当事者の主張
当事者双方の主張の関係は、控訴人らにおいて、「控訴審においては、被控訴人がなした控訴の趣旨第2項掲記の各処分のうち、昭和四五、四六年分の入会金に関し確定した破産債権額(昭和四五年分につき三一一万円、同四六年分につき五、八〇五万円)相当額を破産者内村健一の所得とした部分についてのみ取消しを求めるものである。」と述べたほかは、原判決事実摘示と同じであるからこれを引用する。
第三証拠
証拠の関係は、本件記録中の各書証目録、証人等目録に記載のとおりであるからこれを引用する。
理由
当裁判所も、控訴人らの本訴請求を失当として棄却すべきであると判断するもので、その理由は、原判決一〇枚目表三行目の次に「なお控訴人らは、内村健一が本件ネズミ講の運営によって収受した金員はそのすべてが返還を免れないものであるかのように主張するが、弁論の全趣旨からすると、本件ネズミ講に加入した会員の中には、その仕組みに従って、出捐した金額全部ないしそれ以上を回収し得た者も相当数存在することが肯定でき、少くともかゝる会員との関係においては、内村健一が当然に収受した金員の返還ないし賠償義務ありとは解しがたい。」を挿入し、且つ、左記かっこ内の判断を付加するほかは原判決の説示するところと同じであるからこれを引用する。当審で提出された、成立に争いのない甲第九号証によっても右判断を左右するには足りない。
「一般に、行政処分の取消訴訟においては、当該処分がなされた時を基準にしてその処分の適否を判断すべきものであり、処分がなされた後に生じた事由を参酌してその処分の違法性の有無を判断することは許されないものである。しかるところ、控訴人らが予備的主張において主張するところは、本件各処分がなされた後に発生した破産債権確定の事実を根拠にして、本件各処分の取消しを求めるものと解されるから、かかる事由をもって本件各処分の取消しを求めることは許されないというべく、この点よりしても控訴人らの予備的主張は理由がない (なお、もし控訴人ら主張のように、本件において、国税通則法二三条二項一号に該当する事由があるというのであれば、同条項所定の手続に従って救済を求めるべきで、かかる手続を踏まずに直ちに本訴により是正を求めるのは法の予定しないところである。)。」
よって、これと同旨の原判決(ただし不服申立てのない部分を除く。)は相当で、本件控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 蓑田速夫 裁判官 柴田和夫 裁判官 宮良允通)