大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡高等裁判所 昭和23(上)165 高裁判例

主 文

本件上告は之を棄却する。

理 由

右被告會社及被告人A兩名辯護人松下宏の上告趣意書

第一點 右判決は委託加工品に一般公定販賣價格を適用した違法があると思料致

します。被告會社は註文によつて加工品も之を製造する定款の目的になつて居り、

B商事會社C出張所が商品でなく社員の厚生用に配給するからとて調味料その他特

に指定し協定價格で夫れだけを特定限定量だけ製したのであります。各種商品の最

高價格を定め検査製品を販賣せしめる趣旨は一般市場性のある商品の販賣價格の統

制でありまして右の様な委託加工品は此統制外であると思料仕ります。然るに原判

決は之亦價格違反と即斷せられたのは違法であると思料致しますと謂い。

第二點 被告人は違法の認識なく事實の錯誤により故意を阻却していると考えま

す。原判決は此點に於て法の適用を誤つた違法があると思料致します。右委託加工

品は統制價格以外の取引であると信じ右被告人の意思は故意を阻却する錯誤による

ものと思料致しますから此點を看過した原判決は理由不備、審理不盡の違法がある

と思料致しますと謂うにある。

<要旨>そこで按ずるに委託加工とは、一般に消費者又は物品販賣業者が製造加工

業者に對し原材料を提供して之にあ</要旨>る種物品の製出加工を依頼しその加工料

を支拂い、その出來上り品を受取る場合を謂い、原材料は一切自己手持ちのものを

使用し之に自己の有する設備に依り一定の技術勞力を加えてある種の物品の製造販

賣を業とするものがその同種物品に付たまたま註文者の特別の依頼に依り品質にお

いてのみ上等の自己從來の普通製品を製造して該註文者に之を販賣する場合を包含

しないものと解すべきところ、被告人Aが佃煮の製造加工販賣等を業とする被告會

社の業務に關しB商事株式會社C出張所に販賣した本件判示佃煮コウナゴは、之が

製出の過程において多少工夫したに止まり、之が原材料設備、勞力、燃料等一切は

賣主で負擔し之等所要經費に相當の利潤を加算して貫當り百七十圓にて販賣したも

ので、右説示中の後の場合に該當し、説示中の前の場合に所謂委託加工に依る製品

でないことは、原判決引用の原審公廷に於ける被告人Aの供述に徴して明かであ

る。果してそうだとすれば斯る場合の製品の販賣に付ても之が統制額以上の販賣に

付行政官廳の例外許可を受けない限り一般普通の佃煮製品に付その規格業態別及數

量に應じ公定された統制額に從うことを要し之を超えて販賣し得ないものといわね

ばならぬ。從つて原判決が被告人等の佃煮の販賣を法定の除外事由なき統制額超過

販賣として物債統制令違反罪に問擬したのは相當であつて所論の如き違法はない。

若し被告人AがB商事會社に對する本件佃煮の販賣は委託加工販賣であるから一般

普通佃煮の販賣の場合に於けるような価格統制以外の取引であつて統制額以上の價

格販賣も法律上許容されるものだと信じたとすれば、法律の錯誤に陷つたものとい

うべく而かも被告人一個の獨斷に基く重大過失に依るものだから、之が爲に犯意を

阻却するものではない。だから、原判決には所論のような理由不備、審理不盡の違

法は認められない。

以上のような次第で、辯護人の論旨は何れも理由がないから、刑事訴訟法第四百

四十六條に則つて主文の如く判決する。

(裁判長判事 石橋鞆太郎 判事 筒井義彦 判事 後藤師郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!