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福岡高等裁判所宮崎支部 平成12年(ネ)158号 判決 2001年3月02日

控訴人

株式会社宮崎日日新聞社

同代表者代表取締役

長友貫太郎

同訴訟代理人弁護士

冨永正一

被控訴人

河野誠

同訴訟代理人弁護士

松尾慎祐

荒竹純一

町田弘香

木下直樹

松井清隆

泊昌之

松村昌人

蓮見和也

上田直樹

久保健一郎

望月賢司

主文

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1  控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人の請求をいずれも棄却する。

3  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

第2  本件事案の概要及び当裁判所の判断は、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決事実及び理由の「第二 事案の概要」及び「第三 当裁判所の判断」の記載のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決九頁一〇行目から一〇頁二行目までを次に改める。

「控訴人は、「株式会社の貸借対照表、損益計算書、営業報告書及び附属明細書に関する規則」を意識して附属明細書を作成していないが、これに代わるべきものとして(監査役の監査も経る)税務申告用に作成した明細書(以下「会計明細書」という。)がある。株主が控訴人に対し計算書類等の閲覧請求をすれば、控訴人は附属明細書として会計明細書から必要なものを選別して閲覧させることになる。」

2  原判決一〇頁九行目を「なお、仮に取締役が株主の閲覧用に附属明細書を備え置かなかったと評価されるとしても、」に改める。

3  原判決一二頁三行目の「原告が」の前に「本件各決議の存在及び」を加え、九行目の「附属明細書については」から一〇行目末尾までを次に改める。

「この義務は、計算書類等を株主らの請求があれば容易に閲覧させ又は謄本等を交付することが可能な状態で保管することを意味すると解するのが相当である。

しかるに、控訴人は「株式会社の貸借対照表、損益計算書、営業報告書及び附属明細書に関する規則」を意識した附属明細書は作成しておらず、税務申告用に作成した明細書(会計明細書)は本店に保管していたものの、これには、附属明細書としては不要なものが多数含まれており、短時間で選別することができない(控訴人と被控訴人間の宮崎地方裁判所平成11年(ヨ)第105号書類閲覧謄写仮処分申立事件において、平成一一年六月一四日午後五時半ころ和解が成立し、控訴人は被控訴人に対し、翌日昼ころまでに計算書類等をファックス送信することになったが、会計明細書には株主に知らせる必要のないものが多量に含まれていたため、翌日昼ころまでに附属明細書を送付できなかった。)ほか、同規則四七条一項一号、四号、六号所定の記載がないことが認められる(甲12、14、15、16の1ないし7、乙1ないし6の各1ないし5、7、弁論の全趣旨)。

以上によれば、控訴人が附属明細書の備置義務を懈怠したことは明らかである。

なお、仮に、会計明細書の保管をもって附属明細書の備置義務を履行したとしても、控訴人には後記のとおり謄本交付義務違反(商法二八二条二項)が存することになる。」

4  原判決一三頁一一行目の「趣旨」の次に「(計算書類は株主総会招集通知に添付して送付する必要がある(商法二八三条二項、監査特例法二五条)から、備置義務は附属明細書等を備え置くことに実質的意義があるのであって、両者が相俟って株主に対する情報開示の機能を果たすことになる。)」を加える。

5  原判決一四頁一〇行目の「また、」の次に次を加える。

「前記のとおり、備置義務の懈怠は違法の程度が重大ではないとはいえず、かつ、被控訴人は、控訴人の発行済み株式総数の二パーセントの株式を有していた(争いがない。甲12)のところ、控訴人に対し本件附属明細書等の謄本の交付を書面で請求し、この書面は平成一一年五月二四日控訴人本店に到着したにもかかわらず、結局、本件附属明細書の謄本の交付はなされず、被控訴人は事前にその内容を知ることができなかった。(甲2の1、2、甲9の1ないし3、弁論の全趣旨)のであるから、備置義務違反が実質的に被控訴人の準備を妨げることがなく、決議に影響を及ぼさなかったとも認められないから、」

第3  よって、原判決は相当で、本件控訴は理由がないからこれを棄却する。

(裁判長裁判官・馬渕勉、裁判官・多見谷寿郎、裁判官・岡田健)

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