福岡高等裁判所宮崎支部 平成21年(行コ)9号 判決 2010年2月26日
主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 控訴人と被控訴人市長との間において,訴訟承継前被控訴人国分市長が,平成12年6月30日付国分市告示第○-○号をもってなしたα~β線の路線廃止処分のうち,別紙物件目録記載の各土地に係る路線廃止処分が無効であることを確認する。
3 被控訴人会社は,控訴人に対し,別紙物件目録記載1ないし3の各土地を控訴人及びその来場者が通行することを妨げてはならない。
4 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人らの負担とする。
第2事案の概要
以下,略称については,原判決のそれに従う。
1 請求,争点及び各審級における判断の各概要
本件(平成14年2月2日訴え提起)は,国分市長が行ったα~β線(原判決別紙図面1参照。本件旧市道)の路線廃止処分(本件処分)について,控訴人が,①本件処分は道路法10条1項前段の要件を満たさない,②本件処分に係る国分市議会の議決は無効である,③本件処分手続が適正手続を保障した憲法31条に反する,④本件処分が権限の濫用に当たる旨それぞれ主張して,被控訴人市長に対し,本件処分のうち,原判決別紙図面1記載の点aから点bを経由して点cに至る区間(本件東西区間)に係る部分の無効確認を求めるとともに,被控訴人会社に対し,本件処分のうち本件東西区間に係る部分が無効であることを前提として,人格権ないし不法行為に基づき,本件東西区間のうち被控訴人会社が閉鎖している部分(別紙物件目録記載1ないし3の各土地。本件閉鎖道路)の通行妨害排除を求めた事案である。
差戻し前の第1審判決(鹿児島地方裁判所平成▲年(行ウ)第▲号,平成16年3月26日言渡し)は,訴訟承継前被控訴人国分市長に対する訴えについて控訴人の当事者適格を否定して訴えを却下するとともに,被控訴人会社に対する各請求をいずれも棄却したが,これに対する控訴審判決(福岡高等裁判所宮崎支部平成▲年(行コ)第▲号,平成18年1月27日言渡し)は,訴訟承継前被控訴人国分市長に対する訴えについて控訴人の当事者適格を認めるとともに,被控訴人会社関係部分についても審理不尽の違法があるとして,差戻し前の第1審判決を全部取り消した上,本件を鹿児島地方裁判所に差し戻した。これに対し,上記控訴審口頭弁論終結後に国分市長の地位を承継した被控訴人市長及び被控訴人会社は上告受理を申し立てたが,平成20年4月11日,いずれも上告不受理決定がされた(最高裁判所平成▲年(行ヒ)第▲号,同▲号)。
本件の主たる争点は,被控訴人市長に対する請求については,①本件処分の違法性の有無であり,被控訴人会社に対する各請求については,②人格権ないし不法行為に基づく通行妨害排除請求の可否である。
差戻し後の第1審判決である原判決(平成21年9月15日言渡し)は,争点①につき,本件処分は,市議会の議決という手続的要件(道路法10条3項,同法8条2項)を充足していることはもとより,「一般交通の用に供する必要がなくなった」という路線廃止処分の実体的要件(同法10条1項前段)の判断においても,重大かつ明白な違法性は認められず,さらに,適正手続違反ないし権利濫用という一般的な法原則に照らしても,これを無効とする根拠はなく,本件東西区間の路線を廃止した点も含めて有効な行政処分である旨の,争点②につき,争点①についての上記判断を前提とすれば,本件東西区間の一部である本件閉鎖道路は当然に一般公衆の通行に供されるものではなく,また,外部との交通について本件閉鎖道路以外の代替手段を欠くような事情も認められないから,被控訴人会社に対して本件閉鎖道路を控訴人及びその来場者が通行することを妨害しないことを求める控訴人の請求には理由がない旨の各判断をして,控訴人の請求をいずれも棄却した。
これに対し,控訴人が本件控訴に及んだものであるが,本判決は,原判決と同旨の判断をしてこれを棄却するものである。
2 前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)
この点は,原判決3頁6行目の「一般公衆浴場等を」を「一般公衆浴場業等を」と,14行目の「平成14年10月8日」を「平成14年10月9日」と,23行目の「「終点」至る」を「「終点」に至る」とそれぞれ改めるほかは,原判決3頁5行目から6頁21行目までに記載のとおりであるから,これを,ここに引用する。
3 争点
この点は,原判決6頁24行目から7頁6行目までに記載のとおりであるから,これを,ここに引用する。
4 争点に関する当事者の主張
この点は,次のとおり付加・訂正するほかは,原判決7頁8行目から12頁14行目までに記載のとおりであるから,これを,ここに引用する。
(1) 原判決8頁26行目の「通行とが交錯が」を「通行との交錯が」と改める。
(2) 原判決10頁1行目の「事実主張」を「主張事実」と,15行目の「地域住民の利益」を「地域住民の正当な利益」と,24行目の「財源的原動力」を「財政的原動力」とそれぞれ改める。
(3) 原判決11頁7行目の「原告の主張」を「原告の主張事実」と改める。
(4) 原判決12頁2行目の「交通」を「通行」と,7行目の「公道交通」を「公道通行」とそれぞれ改め,14行目の末尾に「なお,本件処分の有効性については,被控訴人市長の主張を援用する。」を加える。
第3当裁判所の判断
この点は,次のとおり付加・訂正するほかは,原判決12頁16行目から23頁24行目までに記載のとおりであるから,これを,ここに引用する。
1 原判決12頁18行目の「または」を「又は」と改める。
2 原判決14頁26行目の「乙イ2,乙イ8」を「乙イ2,8,11」と改める。
3 原判決15頁10行目の「本件東西区間を」を削り,16行目の「工場間関係者」を「工場関係者」と改め,24行目の次に行を改め
「 この点,控訴人は,人や車が行き交う道路としての機能を果たしている道路で,交通が交錯していれば,常に交通事故発生の抽象的なおそれがあるのは当然であるから,交通事故発生の危険性を増大させる抽象的なおそれがあることを理由に,当該道路が客観的に一般交通の用に供するに適さない状況があると評価することはできない旨主張する。しかしながら,上記のとおり,本件東西区間においては一般の住民の交通と工場関係者の交通とが交錯するという特殊事情があり,一般の道路に比して少なくとも交通事故発生の危険性を増大させる抽象的なおそれがあることは否定できないから,控訴人の上記主張は採用できない。」を加える。
4 原判決16頁16行目の「もっとも」の後に「,前記(2)のとおり」を加え,21行目の「合理性的根拠」を「合理的根拠」と改める。
5 原判決19頁3行目の「同月6月20日」を「同月20日」と改める。
第4結論
よって,当裁判所の上記判断と同旨の原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 横山秀憲 裁判官 川崎聡子 裁判官 山口和宏)