福岡高等裁判所宮崎支部 平成23年(行コ)13号 判決 2012年4月25日
主文
1 本件各控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 宮崎県知事が平成17年10月25日付けでした訴訟参加人に対する産業廃棄物処分業許可処分及び同年11月30日付けでした特別管理産業廃棄物処分業許可処分がいずれも無効であることを確認する。
3 宮崎県知事は、訴訟参加人に対する前項の各処分をいずれも取り消せ。
4 宮崎県知事が平成22年10月25日付けでした訴訟参加人に対する産業廃棄物処分業許可の更新許可処分及び同年11月30日付けでした特別管理産業廃棄物処分業許可の更新許可処分をいずれも取り消す。
5 訴訟費用は第1、2審とも被控訴人の負担とする。
第2事案の概要等
以下、略称については当裁判所で新たに定めるほか、原判決のそれに従う。
1 請求、争点及び各審級における判断の概要
訴訟参加人は、平成15年6月10日、産業廃棄物処理施設設置許可申請を行い、同年11月5日、宮崎県知事から当該許可を受けて、平成17年8月23日、宮崎県都城市<以下省略>周辺土地に管理型最終処分場(本件処分場)を設置した。
訴訟参加人は、事業の用に供する施設を本件処分場として、平成17年10月25日付けで産業廃棄物処分業の許可(本件許可処分1)を、同年11月30日付けで特別管理産業廃棄物処分業の許可(本件許可処分2)を受けたほか、平成22年10月25日に産業廃棄物処分業の許可更新(本件更新許可処分1)を、同年11月30日に特別管理産業廃棄物処分業の許可更新(本件更新許可処分2)を受け、現在も本件処分場において各処分業を行っている。
本件は、宮崎県都城市<以下省略>に現住し、又は同地を所有している控訴人ら13名が、宮崎県知事の訴訟関係人に対する本件許可処分1及び2(本件各許可処分)には重大かつ明白な瑕疵があるとしてそれぞれ無効確認を求め、宮崎県知事が本件各許可処分を取り消さないことによって控訴人らが重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるために他に適当な方法がないとして、宮崎県知事に本件各許可処分の取消処分をすることの義務付けを求めたほか(第1事件、平成22年6月9日訴え提起)、控訴人X4を除く控訴人ら12名(以下「第2事件原告ら」という。)が、訴訟関係人に対する本件更新許可処分1及び2(本件各更新許可処分)がいずれも更新許可要件を欠くか、更新不許可事由がある違法なものであるとして、それぞれ処分取消しを求めた(第2事件、平成23年7月8日訴え提起)事案である。
2 本件の争点は、
(1) 本件各訴えにつき控訴人らに当事者適格が認められるか、
(2) 第1事件の義務付けの訴えにつき、行政事件訴訟法37条の2第1項にいう「一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がない」といえるか、
(3) 本件各訴えが訴権の濫用に当たるか、
(4) 本件各許可処分に無効事由又は取消事由が認められるか、
(5) 本件各更新許可処分に取消事由が認められるかの5点である。
原判決(平成23年10月21日言渡し)は、争点(1)について、本件においては、控訴人らにつき、本件処分場から大気中に有害物質が飛散等しているかどうかやその程度が全く不明であり、本件各許可処分及び本件各更新許可処分の取消し、本件各許可処分の無効確認等を求めるについて法律上保護された利益を有するとはいえず、原告適格が認められないほか、本件処分場の設置場所に含まれる原判決別紙物件目録2の土地を所有すると主張する控訴人X1についても、同人の主張する土地はその存否が明らかでない土地として扱われており、本件処分場の設置場所に含まれているとは認められないから同人が原告適格を有するとはいえない旨の各判断をして、本件各訴えをいずれも却下した。
これに対し、控訴人らが本件各控訴に及んだものであるが、当裁判所も原判決と同旨の判断をして、本件各控訴をいずれも棄却するものである。
3 前提事実、当事者の本案前及び本案の主張
この点は、以下のとおり付加、訂正するほかは、原判決3頁5行目から11頁13行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 原判決3頁10行目の「(以下「原告X1」という。)は」の後に「本件処分場から離れた宮崎県都城市花繰町に居住しているが」を加え、13行目の「(甲4、29)」を「甲4」に改める。
(2) 原判決6頁1行目と2行目の間に「なお、控訴人の主張する基準値の前提とされる書面のうち、訴訟参加人の作成にかかる「産業廃棄物搬入に係る成分分析項目」と題する書面(甲13)は、産業廃棄物の埋立処分に係る判定基準について定められた省令が定める基準等をそのまま記載したものであるところ、控訴人らがこれと比較して引用する環境省の平成3年環境庁告示第46号の別表(甲14)は、土壌の汚染に係る環境基準にかかるものであって、廃棄物の埋立地に適用されるものでないことは前記告示第1の3の記載によって明らかであるから(乙12)、失当である。」を加える。
(3) 原判決8頁25行目から26行目にかけての「その私法上の効力には」を「当該補助金交付決定の取消し等による補助事業者からの補助金返還の問題となるだけのことであって、当該財産処分の私法上の効力には」に改める。
(4) 原判決9頁2行目から3行目にかけての「譲渡したものであるから」を「譲渡した当事者本人なのであるから(甲20)」に、15行目の「警部員を」を「本件処分場入口ほか3か所に警備員を」にそれぞれ改める。
(5) 原判決10頁20行目の「警部員を」を「本件処分場入口ほか3か所に警備員を」に改める。
第3当裁判所の判断
この点は、以下のとおり付加、訂正するほかは、原判決11頁15行目から14頁24行目までに記載のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決12頁22行目の「14条10項2号」を「14条10項1号」に改める。
2 原判決14頁9行目と10行目の間に「控訴人らは当審において、訴訟参加人の作成にかかる生活環境影響調査報告書等(甲29の2、30の2)を新たに提出するが、これによっても、控訴人らのうち控訴人X1を除く控訴人らが環境アセスメントの調査対象地域内に居住していることが確認できるに留まり、本件全証拠を検討しても、本件処分場が設置、運営されたことによって、控訴人らの日常生活に何らかの権利侵害が生じたか、生じるおそれがあるかといった具体的な事情を確認することはできず、上記の結論を左右しない。」を加える。
第4結論
よって、上記判断と同旨の原判決は相当であるから、本件各控訴をいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 横山秀憲 裁判官 川﨑聡子 空閑直樹)