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福岡高等裁判所宮崎支部 平成3年(ネ)120号 判決 1992年4月15日

鹿児島市下福元町六一六九番地

控訴人

竹之内宏

右訴訟代理人弁護士

亀田徳一郎

東京都千代田区霞が関一丁目一番一号

被控訴人

右代表者法務大臣

田原隆

右指定代理人

福田孝昭

坂井正生

呉屋栄夫

吉武一郎

崎村和洋

二羽泰昌

木庭忠義

尾沢安治郎

福田道博

鈴木譲

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  訴訟費用は、控訴人の負担とする。

事実

一  控訴人は、「原判決を取り消す。控訴人が昭和五六年八月四日付けで控訴人の昭和五五年分の所得税についてした修正申告のうち分離課税の長期譲渡所得金額一二二三万五一五〇円に相当する税額二四四万七〇〇〇円、及び被控訴人が同月一二日付けで控訴人の昭和五五年分の所得税についてした過少申告加算税の賦課決定処分による税額一二万二三〇〇円の各租税債務が存在しないことを確認する。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、主文同旨の判決を求めた。

二  当事者の主張は、次のとおり双方の主張を付加し、原判決四枚目裏七行目の「6項」を「前記一争いのない事実6項」に改め、同五枚目裏六行目の「譲渡された所有名義人の所有権ないし持分権」を「所有権(一部)移転登記を経由した所有名義人への所得権ないし持分権の帰属」に改め、同七行目の「原告において、」の次に「坂元に対し、」を加えるほかは、原判決の「事案の概要」記載のとおりであるからこれを引用する。

(被控訴人の主張)

1  控訴人は、本件修正申告の本件譲渡所得に関する部分については、法律に無知な控訴人が鹿児島税務署長に指摘されて真実申告すべき義務があると誤信してしたものであって無効であり、また、無効な修正申告に基づく過少申告加算税の賦課決定分も無効である旨主張している。

2  しかし、修正申告書の記載内容に過誤がある場合は法定の手続である更正の請求によって是正すべきであり、特段の事情が存しない限り、右手続によらないで記載内容の過誤を理由として納税者が修正申告の効力を争うことは許されないと解されている。

すなわち、最高裁判所は、確定申告に関する錯誤の主張について、「確定申告書の記載内容の過誤の是正については、その錯誤が客観的に明白且つ重大であって、前記所得税法の定めた方法以外にその是正を許さないならば、納税義務者の利益を著しく害すると認められる特段の事情がある場合でなければ、所論のように法定の方法によらないで記載内容の過誤を主張することは、許されないものといわなければならない。」と判示しており(最高裁昭和三九年一〇月二二日判決・民集一八巻八号一七六二ページ)、この理は、修正申告についても当然に適用されるものである(東京地裁昭和五七年一二月二〇日判決・税務訴訟資料一二八号六七七ページ、東京高裁昭和五八年四月二五日判決・税務訴訟資料一三〇号一九九ページ、浦和地裁昭和六一年六月三〇日判決・税務訴訟資料一五二号五七五ページ)。

これを本件についてみると、本件修正申告当時、修正申告の内容について控訴人に錯誤があるとの事実は客観的に明白でなく、また、控訴人は右修正申告について、昭和五五年分所得税の法定申告期限である昭和五六年三月一五日から一年以内の間に更正の請求をすることが十分可能であったのにこれをしていないのである。

したがって、控訴人は、右期間経過後に更正の請求の方法によらないで本件修正申告の無効を主張することはできないのであるから、本件和解が追認に当たるか否かに関わりなく、控訴人の本訴請求が理由がないことは明らかである。

(控訴人の主張)

本件修正申告は、控訴人の意思に基づかず義廣が勝手にしたものであって、無効なものである。

三  証拠の関係は、原・当審における書証目録及び承認等目録記載のとおりであるからこれを引用する。

四  当裁判所の判断は、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決の「争点に対する判断」(原判決六枚目表一行目から同九枚目裏六行目まで)記載のとおりであるからこれを引用する。

1  原判決七枚目裏三行目の「かかる」を「係る」に改める。

2  同八枚目表一行目の「原告は」を「控訴人は、坂元に対し、」に改める。

3  同八枚目表四行目の「第三者の所有権ないし持分権」を「控訴人が坂元に対し、坂元から所有権(一部)移転登記を経由した登記名義人への所有権ないし持分権の帰属」に改める。

4  同八枚目表五行目の「のであるから、」の次に「控訴人は、坂元に対し、」を加える。

5  同八枚目表八行目、同九行目の各「効力が遡る」をいずれも「遡って効力が生ずる」に改める。

6  同八枚目裏六行目の「義廣による非権利者」を「非権利者である義廣」に改める。

7  同九枚目表四行目、同七行目の各「所有権」をいずれも「所有権ないし持分権の帰属」に改める。

8  控訴人の当審主張は、本件修正申告が控訴人の意思に基づかないものであるとの事実について証拠が全くないので、採用できない。

五  よって、控訴人の請求を棄却した原判決は相当で、本件控訴は理由がないのでこれを棄却し、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 鐘尾彰文 裁判官 中路義彦 裁判官 郷俊介)

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