福岡高等裁判所宮崎支部 昭和24年(つ)388号 判決 1949年11月28日
被告人
有村政行
主文
本件控訴を棄却する。
当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
記録を調査すれば、被告人は昭和五年六月一一日生であるから、本件犯行当時の昭和二三年三月一八日頃はまだ八歳に満たない少年であつたこと所論のとおりである。
しかるに、昭和二三年法律第一六八号少年法を改正する法律第五一條、第五二條、第六二條、第六八條第一項の規定を照し合せて考えると、判決宣告当時満一八歳に達したものについては、右少年法第五二條の適用のないことは明白である。それで被告人は、本件犯行時一八歳に満たない少年であつたとしても、原審が昭和二四年八月二日本件につき判決を宣告する際には、既に満一八歳に達していたことまことに明瞭であるから、右少年法第五二條の規定を適用せず被告人に対し確定期刑を言い渡した原判決は相当で、何等法令の適用を誤つた不法は存在しない。論旨は独自の見解の下に原判決を非難するもので、採用するを得ない。
第二点について。
刑法第九八條にある通謀は、犯人各自を相互に逃亡する意思あることを認識し、その結果を惹起するをもつて足るものと解すべきであり、從つて、特に犯人間において、必ずしも、予め謀議の事実あることを要するものではない。なお、その意思の連絡ある以上、犯人のすべてが、自らの手で直接犯罪の遂行に必要な準備工作をすることも必要としない。今本件につき、原判決の挙示した証拠を綜合すれば、原判決認定のとおり、被告人は昭和二三年三月九日川内簡易裁判所裁判官の発布した勾留状により、薩摩地区警察署留置場に勾留されたところ、既に同監房に勾留されていた山元実雄外二名のすすめに應じ、同人等と通謀の上同月一八日同監房から逃走したことが優に認められる。さすれば、よし、所論のように、被告人が右共犯者等の監房に移されたときには、既に共犯者等の手で床板が取り外され、逃走に必要な準備工作は完了しておつて被告人はこの点について全く関係がなかつたとしても被告人の罪責には少しも影響のないことであるから、論旨の主張するように單純逃走罪をもつて問擬すべき筋合ではない。
以下省略