福岡高等裁判所宮崎支部 昭和25年(う)56号 判決
所論起訴状は、本被告事件につき公訴を提起し、略式命令を請求したものであるから、かような場合においては、検察官は、刑事訴訟規則第二八九条により、略式命令の請求と同時に、略式命令をするに必要があると思料する書類及び証拠物を差出さなければならないことになつているところからみれば、それと同時に、検察官が、同起訴状において科刑意見を表示するところは何等妨げとなるものではないといわざるを得ない。しかも、刑事訴訟法第二五六条第六項によれば、起訴状には裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添附し、またはその内容を引用してはならない。とあるから、同法条第四項の規定の趣旨に照らし合せてみても、検察官の求刑意見の表示まで禁止する趣意でないことは自ら諒解し得られるところである。もつとも、公訴を提起し、公判を請求する場合においては、事実及び証拠調の完了後検察官において意見を述べる機会があるため、起訴状に求刑意見の表示されることは殆んど絶無にして、本件は、たまたま略式手続から正式裁判手続に移行した事案にかかるため、所論のような求刑意見が起訴状に表示されたに過ぎないのであり、よしんば、その表示があつたとしても、前説示するところにより、その記載は起訴状を無効にするものではないと解するから、論旨は採用するに値しない。
(註。本件は量刑不当により破棄自判)