大判例

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福岡高等裁判所宮崎支部 昭和28年(う)71号 判決

元来、詐欺罪は他人を欺罔し、これを錯誤に陥れ、よつて、財物を交付せしむれば成立するものである。それで、もし、数人に対し、各別に欺罔手段を施し、これをそれぞれ錯誤に陥れ、よつて、被欺罔者から各別に財物を交付せしむれば、その財物交付の日時が近接し、場所が同一であり、しかして、その実害が同一人に帰する場合でも、その犯意は単一でないから、数罪が成立するものと解するのが相当である。それで、今、所論に鑑み、原判決挙示の証拠を綜合考量すれば、被告人は原判示日時頃飲食店営業留奥みね方において、同人の他出不在中、同店女給三好幸子に対し、原判示欺罔手段を施し、同女を錯誤に陥れ、よつて、同女から原判示第一掲記の物品の交付を受け、次いで、その直後、外出先から帰宅した右留奥みねに対し、原判示第二掲記のような虚構の事実を告げ、同女を錯誤に陥れ、よつて、更に同女から原判示第二掲記の物品の交付を受けたいきさつが窺い得られるので、右被告人の所為が、所論のように、時間の近接した、同一飲食店内における階下、階上の一連の行為であり、その請求された代金が、右前後に亘る計算を一緒にしたものであつたとしても、前説示するところにより、被告人の右所為は、併合罪の関係にある二個の詐欺罪が成立するものといわざるを得ない。さすれば、原判決の認定には何等間然するところはなく、従つて、原判決には所論のような事実の錯誤は存在しない。それ故、論旨は採用しがたい。

(中略)

被告人の控訴趣意について。

しかし、原判決挙示の証拠を綜合すれば、被告人は原判示各事実摘示のとおり、所持金もなかつたので、その支払能力は勿論のこと、支払の意思もなかつたのに、留奥みね及び三好幸子に対し、各別に欺罔手段を施し、同女等をそれぞれ錯誤に陥れ、よつて、原判示各物品の交付を受けたいきさつが認められること、前説示のとおりであり、その間反経験則等の違法はないから、被告人の右各所為は詐欺罪が成立し、被告人はその刑責を負担すべきこと多言を要しないところである。さすれば、原判決には、何事の事実の誤認もなく、論旨は採用し得ない。

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