大判例

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福岡高等裁判所宮崎支部 昭和29年(う)231号 判決

原判決は公訴事実に示された窃盜の訴因に対して訴因変更の手続を経ることなく横領の事実を認定したことは所論のとおりであるところ刑事訴訟法第三一二条の趣旨は主として被告人の利益を保護する点に存するから公訴事実の同一性が失われないかぎり又被告人の防禦権を侵害しない限度において訴因変更の手続をなすことなくとも裁判所は起訴状に記載せられた事実と異なる事実を認定しても差支えないが犯罪の構成要件を異にするような場合には被告人としては実質的に防禦の方法も異なる場合が多いのであるからかような場合にはたとえ法定刑の重い罪から軽い罪に認定する場合であつても訴因の変更をしなければ裁判所は公訴事実記載の事実と異なる事実の認定はできないものと解すべきである。原判決が窃盜の訴因を変更することなくして横領の事実として認定したことは前説示のとおりであつて右は被告人に防禦権を行使させるにつき十分の機会を与えることなくして行われた手続であり訴訟手続に法令の違反がありその違反は判決に影響を及ぼすことが明らかである。尤も原判示の事実は判示(三)の中古毛布の部分を除き窃盜と認定すべきであつて右は事実を誤認したことは前段説示のとおりであるが右(三)の中古毛布は被告人が金德佑から借用し保管中のものであつたか否か記録上明らかでないがこれが借用保管中のものであつたとすれば前説示の通りその訴因の変更をなさしめてこれを横領の罪として認定すべく、又借用した毛布以外の毛布であつたとすれば他の物品と同じくこれを処分したことは、窃盜罪として問擬すべきであつたに拘らず事ここにいでず漫然と横領の罪に認定したことは結局審理を尽さず事実を誤認したか又は訴訟手続が法令に違背したかいずれかの場合に該り論旨は理由あるに帰し原判決は破棄を免れない。

(後略)

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