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福岡高等裁判所宮崎支部 昭和40年(ラ)1号 決定 1965年5月26日

抗告人 實田照

主文

原決定を取消す。

理由

本件抗告の趣旨並びに理由は別紙(一)記載のとおりである。

右抗告の理由は鹿児島地方裁判所昭和三八年(レ)第一〇号土地所有権確認請求控訴事件の判決に対する違法不当を主張するもので、原決定の違法不当を主張するものでないことは明らかであるから、主張自体理由がないというべきである。

職権を以て案ずるに、記録(鹿児島地方裁判所昭和三八年(レ)第一〇号、同昭和三九年(レツ)第一九号各事件記録)によると、鹿児島地方裁判所昭和三八年(レ)第一〇号土地所有権確認請求控訴事件の判決が、昭和三九年九月三〇日言渡され、該判決正本が同年一〇月八日被控訴人たる抗告人に送達されたこと、そこで抗告人は同年一〇月一五日原裁判所に上告状を提出したが右上告状には上告理由の記載がなかつたこと、同年一〇月二〇日右上告状受理通知が抗告人に送達されたので、抗告人は同年一二月七日別紙(二)記載どおりの上告理由を記載した上告理由書を原裁判所に提出したこと、しかるに原裁判所は同年一二月一一日付決定を以て抗告人に対し民事訴訟規則(以下単に規則と略称する。)第五三条第一項による補正を命じ、該決定正本は同年同月二一日抗告人送達されたこと、よつて抗告人は「記」と題する書面を同年同月三一日原裁判所に提出したが、原裁判所は右決定所定の期間内に右補正がなかつたとして、民事訴訟法(以下法と略称する。)第三九九条第一項第二号後段、第三九八条第二項、規則第五三条第二項により昭和四〇年一月一三日抗告人の上告を却下したことがそれぞれ認められる。上告人が原判決に影響を及ぼすこと明らかな法令の違背あることを理由として上告するためには、上告状あるいは上告理由書に、当該法令の条項又は内容を掲記すると共にその事由を示さなければならないし(規則第四六条)、又法第三九五条第一項各号に該当することを理由として上告する場合にも上告状あるいは上告理由書に同条のいずれの号に該当するか、およびその具体的事実を記載しなければならないが(規則第四七条)、いやしくも形式上右各記載がなされている以上、原裁判所は、たとえ上告人の主張が実質上法令(上告人指摘の法令であると否とを問わず)違背を理由とするものでないこと、あるいは法令違背を理由としてもそれが判決に影響を及ぼさないことが主張自体極めて明らかであると判断した場合でも、原裁判所は法第三九九条第一項により上告を却下すべきではない。けだし法第三九九条の法意は原裁判所に上告状あるいは上告理由書に対する形式的審査権のみ付与し上告が内容的に理由があるかどうかについては原裁判所に判断させず、必ず上告裁判所に判断させようとするものであると解するからである。

ところで前記認定により抗告人が適法な上告理由書提出期間内に提出したものであること明らかな前記昭和三九年一二月七日原裁判所受付の上告理由書には別紙(二)のとおり、上告理由第一点として、原判決には判断遺脱、理由齟齬の違法ありと記載し、法第三九五条第一項第六号の条項こそ掲記していないが右条項に該当することを理由とする上告であることは明らかであるし、かつ(イ)項以下においてその具体的事実を掲げているから(その内容が実質上理由があるかどうかは、原裁判所による上告審査において問題とすべきでないことはさきに述べたとおりである。)、右上告理由書には規則第四七条所定の記載があるということができる。もつとも、上告理由第一点(ハ)の終りの行に「原審判決は民事訴訟法三七九条に違反しているから破棄されるべきであると信ずる」との記載があるが上告人が該条項を記載したのは前記法第三九五条第一項第六号の内容の一事由として掲げたものと解する。そこで上告人の上告理由第一点については原裁判所が規則第五三条第一項の補正命令を発しなければならぬ法律上の必要性はなかつたものといわざるを得ない。もつとも右上告理由書の上告理由第二点には、違背法令の記載がなく、規則第四六条、第四七条の所定要件を欠除していることは明らかであるから、この点について原裁判所が右補正命令を発したことは、あながち無用の措置ということはできない。しかしながら抗告人が右補正命令にしたがわなかつたとしても、これを理由に、原裁判所は、法第三九九条第一項第二号後段、規則第五三条第二項を適用して上告を却下すべきではない。けだし前記上告理由書の上告理由第一点に適法な上告理由の記載があることさきに認定したとおりであるからである。しかるに原裁判所は昭和三九年一二月一一日付決定を以て抗告人に対し補正命令を発し、昭和四〇年一月一三日右命令所定の期間内に補正がなかつたとして前記法および規則の各条項を適用して、本件上告を却下したのであるから、原決定は明らかに違法であるというべく、取消しを免れない。

よつて民事訴訟法第四一四条、第三八六条により主文のとおり決定する。

(裁判官 原田一隆 野田栄一 宮瀬洋一)

別紙(一)

抗告の趣旨

一、原決定を取消し、本件上告は理由ありとの御裁判を求めます。

抗告の理由

上告人(抗告人)が提出した上告理由書掲記事実のとおり本件係争土地は右控訴人、和田義が請求主張の境界は隣接していない事実明かであるに対し、境界なき本件係争土地に対して、同裁判所は、当事者間には境界の件については争いなしと判決し、

尚又、被控訴人(抗告人)が提出の証拠書類は必要なしと同人に返付し、

右控訴人、和田義範の虚偽な請求主張事実に確定し、

尚又、判決正本、付属図面に地番記入してない、

係る判決は、判断を遺脱し理由を齟齬した公正を妨げる不当な判決で影響を及ぼし、右控訴人と共に本件に関与している同裁判所の控訴人岩崎産業株式会社、被控訴人實田照間の昭和三六年(レ)第六二号請求控訴事件の同控訴人岩崎産業株式会社にも取得なさしめる為であると思料し、

右決定は失当であるが故に茲に抗告に及びし次第です。

別紙(二)

上告理由

第一点、原判決は判断、遺脱理由齟齬の違法がある。

(イ) 甲壱号証字図表示の八三四番の上告人所有土地と八三三番ノロ、被告人所有土地、両所有土地の境界は従前より、

(甲三号証乃至五、及び八号証、図面表示の(ニ)(ホ)(ヘ)(ト)(チ)(リ)(ヌ)(ル)(ヲ)甲一〇号証図面表のイの6乃至9、ロの20乃至12、)

各地点を順次結んだ線である事実に対し、被上告人は認め、尚甲弐号証「内容証明書」にも認知していた者が(甲弐号証は被上告人が勝手に(ツ)(ネ)(ナ)(ラ)(ム)線を境界となぎはらつた事実に対する通告書)

(各証に赤色で×の線は同証記載の線ではありません)

(ロ)一、昭和三一年一一月末日頃、被上告人が神戸から帰省して甲壱号証、字図表示の八三三番ノイ、土地所有者岩崎産業株式会社と共に、被上告人所有の右八三三番ノロ、土地と、同会社所有の同土地との境界は、

(前記甲三、四、五、八号証図面表示の(ヨ)(カ)(ワ)(ヲ)(ム)

甲一〇号証図面表示のハの1乃至5ロの12ハの7イの26)

各地点を順次結んだ線であると共に主張し、同会社も、甲八号証図面表示の五区「甲一〇号証図面表の(E)地域」に仮処分決定求め、土地所有権確認並びに損害賠償請求の訴を提起し請求したが第一、二審共に請求は棄却されて現在

昭和三九年(レ)(ヲ)第一五号福岡高等裁判所に、

(上告人 石崎産業株式会社

被上告人 實田照)

上告提起しています。

〃二、尚又、被上告人(和田義範)は、同人の同所有の八三三番ノロ、土地と、与島坊所有の、甲壱号証、字図表示の八三三番ノ一乃至六の土地との境界は(同甲三、四、五、八号証図面表示の(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(ホ)(ヘ)(ツ)甲一〇号証図面表示の、イの1乃至14)各地点を順次結んだ線であると主張し、

(甲八号証図面表示の四区の土地

甲一〇号証図面表示の不明りような(D)地域)

〃三、被上告人は同人の同所有の八三三番ノロ、土地と、上告人所有の同八三四番土地との境界は

(同甲三、四、五、八、号証図面表示の(ツ)(ネ)(ナ)(ラ)(ム)

甲一〇号証図面表示のイの14乃至26)

各地点を順次結んだ線であつて、

(甲三、四、五、八、号証図面表示の(ヘ)(ツ)(ネ)(ナ)(ラ)(ム)(ヲ)(ル)(ヌ)(リ)(チ)(ト)(ヘ)、甲一〇号証図面表示の、イの9乃至26ハの6ロの12乃至20イの9)

各地点に図続された(本件係争地)実測面積九反七畝二四歩四合六勺の土地は、被上告人の所有土地であると、仮処分決定求め、訴状請求している事実は甲三号証乃至七号証「御参照」

(ハ) 然るところ、原審は上告人の答弁事実を変造し、被上告人の、請求事実の境界もない虚偽な本件請求の係争土地に対し、しかも整然たる、所有土地に鑑定人村田隆範の不正な鑑定に基ずき、

被上告人の請求実測面積九反七畝二四歩四合六勺の面積に対し原審は実測面積一町一反五畝二〇歩広大な面積に判決している、原審判決は民事訴訟三七九条に違反しているから破棄されるべきものと信ずる。

(上告人は同鑑定人を告訴なしています、甲一一号証、御参照)

上告理由

第二点、原審は適法でない証拠に事実を認定した違反がある。

(イ) 自然現象を対象とし五、六〇年に遡反し、虚実な証拠もない供述の証人、栄福太郎、同渡兵太郎、同森茂次郎、等の証言、尚又、証人亀井米蔵の都度異なる証言、同椿山直の死人を対象とする証言、等を認定し判決なしている、(甲八、七、号証、御参照)

(ロ) 原審判決図面と、甲壱号証、字図と対象すると、曲直あまりにも甚だしい、

(ハ) 原審の係る判決は影響及ぼす事当然であり破棄され公正な判決求め得るを信じて上告に及びし次第です。

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