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福岡高等裁判所宮崎支部 昭和51年(行コ)3号 判決 1977年4月27日

鹿児島市南新町七番一五号

控訴人

有限会社久保商店

右代表者代表取締役

久保祐吉

同市易居町一番六号

被控訴人

鹿児島税務署長

石川敏彦

右指定代理人

古田泰己

黒木幸敏

田川修

村上久夫

西山俊三

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一、控訴人は、「原判決を取り消す。被控訴人が昭和四〇年一一月三〇日付でした(一)控訴人の昭和三六年四月一日から昭和三七年三月三一日までの事業年度分法人税の更正処分および重加算税の賦課決定処分、(二)昭和三九年四月一日から昭和四〇年三月三一日までの事業年度分法人税の決定処分および重加算税の賦課決定処分(ただし、両事業年度分とも裁決によつて一部取り消された後のもの)を取り消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求めた。

被控訴人は、主文と同旨の判決を求めた。

二、当事者双方の主張ならびに証拠関係は、控訴人が別紙記載のとおり主張したほかは原判決の事実摘示欄に記載のとおりであるからこれを引用する。

理由

一、当裁判所も、原審と同様に、控訴人の本訴請求を失当として棄却すべきものと判断する。その理由は、原判決一一枚目表六行目の「前記甲第一三号証」を「前記乙第一三号証」に、同七行目、八行目の「共済組合専務理事」を「鹿児島県教職員互助組合専務理事」にそれぞれ改めるほか、原判決の理由と同じであるからこれを引用する。

二、控訴人は別紙記載のとおり主張するけれども、その実質は原判決の事実認定を非難するに帰するものであつて、採用できない。

三、そうすると原判決は相当であつて本件控訴は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山忍 裁判官 松信尚章 裁判官 川端敬治)

別紙

一、請求の趣旨第一項については、訴外今吉覚次から土地代金を受取つたことは全くない。原審において被控訴人の主張にそう証言等は全部偽証である。

同第二項については、土地売買の事実及び土地代金を訴外互助組合から、売主を久保祐吉、買主を互助組合とし久保祐吉個人が受取つた事実はあるが、控訴会社は全く無関係である。

右第二項に関し、乙第二七号証の一乃至同第四三号証の二、普通預金通帳等に関する被控訴人の原審における主張、立証は事実に反するものである。(昭和五一年四月五日付準備書面)

二、控訴人は原審において、昭和三六年四月一日から同三七年三月三一日までの事業年度分について、被控訴人のなした法人税額等の決定通知書および加算税の賦課通知書をもつて、法人税額を決定しおよび重加算税を賦課した。

その原因たる土地(鹿児島市山之口町九二番九)を、訴外今吉覚次(以下今吉と称す)に対し売買契約をなした事実もなく、且つ該土地代金を受取つた事実は全くないことの主張をなし、これにそう書証等を証拠として提出したが、原審は右事実は全くいれず而して判決理由に右事実がいれられなかつたことは明白である。

被控訴人は原審における主張立証のため、公信力のない登記簿謄本(乙第一号証)を提出し、控訴人より訴外今吉覚次名義に移転登記がなされた事項を援用した。

右移転登記事項甲区順位壱弐番附の壱によれば昭和参六年拾月拾七日受付第弐壱四四参号原因昭和参六年拾月拾七日の売買、取得者鹿児島市加治屋町百番地今吉覚次となつている。

さて、右登記事項にそう売買契約書並に売買代金に関する領収証等何一つありはしない。

原審は判決の理由に被控訴人の主張立証を全面的に認容し

三、判決理由土地売却金について

成立に争いのない甲第一五号証、同第一六号証、同第二三号証、乙第一号証、証人今吉覚次の証言(第一、二回)により真正に成立したものと認められる乙第二ないし第四号証、証人江頭毅の証言により真正に成立したものと認められる、乙第五ないし第一一号証人今吉覚次(第一、二回)同江頭毅の各証言によれば次の事実が認められる。

1において前述の土地売買の事実を認容しているが、右は前述の土地売却金についての事項で述べた如くその殆んどは右今吉の言分である。しかれども右今吉は売買契約書はつくらなかつたと言つたり、売買契約書はつくつたとか、手付金は払つたとか、払わなかつたとか、売買金額についての言分等誠に支離滅裂である。

控訴人が原審において右今吉の証言調書等証拠として提出した立証趣旨は右今吉の土地売買に関する言分が支離滅裂であり、且つ虚偽のものであることを立証するためであり、控訴人は原審においてその旨述べているのである。

(尚右支離滅裂の点は、右今吉の言分を各対照して証拠説明書で詳しく述べることにする。)

而して、原審が判決理由二、(一)以下において、控訴人と右今吉間の土地売買の事実があつたことを前提とし、被控訴人の原審における主張立証について認容した理由は誠に失当であるから、当審において全部争うものである。

四、昭和三九事業年度の法人税に関する本件決定処分および重加算税賦課決定処分の有無につき検討する。

(一) 土地売却金について

1 原告は山下町二〇四番の土地に以下理由中(該土地の共有持分権者等から久保祐吉(以下久保と称す)が、訴外池之上義明外数人の共有持分権者から買受け、その後訴外松崎俊外数人から共有持分権全部を買受け、該土地に賃借権を有していた瀬脇仲市外数人に対し、賃借権に代る金額を支払い、右久保を売主とし鹿児島県教職員互助組合を買主とし不動産売買契約証書を作成し、該土地の売買代金を受領し、そのほとんどは右久保個人が第三者から借入れていた借用金を返済したものである)さて原審において控訴人は甲第一号証乃至同第二六号証を提出し、本件土地の売買は久保個人の行為であつた旨主張と立証をなしたが、原審は被控訴人の事実に反する虚偽の主張を全面的に認容した。

右認容は誠に失当である。而して当審において全部争うものである。

(1)(2)(3)以下の判決理由は全部虚偽の主張立証により認容されたものであるから、原審において控訴人提出の書証について証拠説明書をもつて、被控訴人の主張が虚偽であることを明白にする。

尚甲第一号証の売買契約書と乙第一三号証(甲と誤記されている)によれば登記日付と契約書の日付の相違点を言つているが、これは桑原一喜個人に対し同人が互助組合の資金調達のため便宜を計つてやつたことであり、この点については甲第一号証に関係した全員が知るところである。そして証人谷川勇の証言等と対照しているが、右谷川は甲第一号証の契約に関係ない。

右の他、原告は右買受当時の原告の資産を明らかにする証拠を何も提出しておらず等誠に失当な認容をなしているが、右は本件の争点ではない。その余については本件土地の売買行為が控訴人会社でないから論ずる必要はないと思料するが、相手のあることだから当審において、原審において提出した証拠の説明をなし、更に新たな証拠を提出し争うことにする。

(二) 同第四三号の一、二、証人江頭毅の証言によれば、原告が互助組合から代金の一部の支払として受領した前記額面八五〇万円の小切手一通は昭和三九年九月五日右金額のうち八〇〇万円が額面五〇〇万円および三〇〇万円の鹿児島銀行振出の小切手二通に振替えられ、以下については右久保の個人の借用金を相手方に対し返済した事実、又は全く別件土地の売買代金等相手方に支払い、相手方がそれぞれ預金通帳に振込んだ事実であるにかかわらず、原審は原審における被控訴人の虚偽の主張と立証について全面的認容したことは誠に失当であるから当審において争うものである。その余の土地売却原価について、営業費、支払利息等の認容は、本件土地の売買行為が控訴会社の行為でないから論ずる必要はないと思料するが、これも相手のあることだから当審において争うものである。(昭和五一年七月一四日付準備書面)

五、控訴会社代表取締役久保祐吉(以下久保と称す)は、右会社とは何等のかかりあいなく久保個人名義をもつて、訴外今和泉スミ(以下今和泉と称す)から五〇〇万円を借用していたところ、鹿児島銀行振出の小切手をもつて昭和三九年九月頃、右借用金の弁済に当てたものである。その後再度右今和泉から二〇〇万円を一時的に借用した事実はあるが、同三九年一二月頃までには右二〇〇万円の借用金は全額返済したのである。

右今和泉は同人の長女孫久保誠一(以下誠一と称す)外数人に対し右久保が長年借用していた五〇〇万円を返済した全額を贈与した事実がある。右今和泉は三〇才位の頃女子三人をかかえ、未亡人となりその後戦前は農業を営んでいたが、戦後は鹿児島市内で不動産業者のベテランであつた大園権四郎、入佐某その他数人の不動産業者に対し土地おもわくの出資をなし、昭和四〇年頃までの間多額の現金等を持つていたが、その額は生計が別であつたからわからない。

控訴会社代表取締役右久保個人名義をもつて、訴外寺岡ヒロ(以下寺岡と称す)から三〇〇万円を借用していたところ、鹿児島銀行振出の小切手をもつて昭和三九年九月頃、右借用金の弁済に当てたものである。

右寺岡は右小切手を日本勧業銀行鹿児島支店に同人の子供である寺岡たつ子名義の普通預金に振込んだ事実はある。右寺岡は当時鹿児島市東千石町で鹿児島荘と云う旅館を経営していたが、同旅館に出入していた不動産業者数人の世話で土地の思惑売買をしていた事実がある。その後右日本勧業銀行支店の普通預金通帳から同勧銀振出の小切手一七〇万円に振替られ、これを原審証人浜田金之助(以下浜田と称す)(当時鹿児島信用金庫勤務)に対し、同人が右寺岡に対し世話をした土地代金に支払つたのである。

右浜田と土地の所有者と相計つて右一七〇万円をどのように処理したか、土地代金として支払つた支払側には何等の関係ないのである。

しかれども原審は、右浜田の真実の証言は全くいれられず不当な判断をなしている。

右寺岡から右久保が借用した資金は甲第一七号証土地登記簿謄本、同第一八号証建物登記簿謄本の土地、建物を右寺岡が訴外川上栄に対し昭和三六年五月頃売却した内の三〇〇万円を借用したものである(土地については甲区順位六番参照)(建物については甲区順位五番参照)。右寺岡が右川上に売却した建物は旅館業を営む建物であり、右寺岡は右建物を売却し相手方に引渡すまでは旅館(ひめ旅館)を経営していたのである。尚右寺岡は当時前述の鹿児島荘と二ケ所の旅館を経営していたのである。

右一、二項で述べた如く金銭の貸借は不特定多数のものは法律の禁ずるとはいえ、特定の者同志の一時貸借は法律の禁ずるものでなく、又各人の財産は現行法律の保証するところである事は今更説明するまでもなく、原審は各人の金銭の貸借を全く同一視した判断をなしている。これは誠に失当である。

控訴会社は昭和三五年頃久保祐吉から約二五、〇〇〇、〇〇〇円位の借入をし、右借入額に相当する不動産を所有していたのである。

右金額のほとんどは第三者から借用していた事実がある。

控訴会社の資本金は二〇万円で、しかも同族会社で第三者が金を貸す人はいなかつた。従つて久保祐吉個人名をもつて借用し、これを右会社が借用したものである。

当時の二五、〇〇〇、〇〇〇円に相当する不動産は現在に換価すれば、その二〇倍位はある。

(昭和五一年九月二七日付準備書面)

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