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福岡高等裁判所宮崎支部 昭和52年(う)13号 判決 1977年6月24日

主文

原判決を破棄する。

被告人を懲役三月及び罰金二〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは金五、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

理由

(控訴の趣意)

本件控訴の趣意は鹿児島地方検察庁検察官高〓英明作成名義の控訴趣意書に、これに対する答弁は弁護人〓高学作成名義の答弁書に各記載のとおりであるから、これらを引用する。

(当裁判所の判断)

所論は、本件公訴事実は包括一罪を構成するものとして公訴を提起したところ、原判決は公訴事実と同一の事実を認定したうえ右の各事実は刑法四五条前段の併合罪にあたるとして所定刑中いずれも罰金刑を選択して被告人を罰金一五〇万円に処したが、本件に適用さるべき出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律第五条違反の罪の公訴時効は三年であるから、原判決のいうようにこれを併合罪とみるならば本件公訴事実中昭和五一年四月二七日付起訴状添付別表一覧表記載1ないし3の各訴因は右起訴当時において、また同年五月二二日付訴因変更請求書添付別表一覧表記載1ないし23の各訴因は右訴因変更の請求当時いずれも公訴時効が完成していたことが明らかであるから右各訴因については刑事訴訟法第三三七条第四号に該当するものとして免訴の言渡をすべきであるのに原判決がその言渡をせずすべて有罪としたのは、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあるというものである。

よつて所論に鑑み検討すると、原判決は罪となるべき事実として本件公訴事実と同一の事実を認定したうえ被告人の判示各所為はいずれも出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律第五条に該当し、かつ刑法第四五条前段の併合罪の関係にあるとして所定刑中いずれも罰金刑を選択したうえ被告人を罰金一五〇万円に処したことが認められる。

しかしながら原判示の各所為は犯行の目的及び態様からみて所謂営業行為であり、包括して前記法条に該当する一個の犯罪と評価すべきものであるからこれを併合罪として刑法第四五条前段、第四八条第二項を適用処断した原判決には所論の公訴時効の点につき論ずるまでもなく、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあるといわなければならない。更に職権により調査すると、原判示の事実中原判決添付別紙一覧表(一)の1および2、同じく別紙一覧表(二)の1ないし15の各事実は、昭和四八年二月一五日から同年四月五日までの間に行なわれた犯行であり、原判決の掲げる証拠のうち上村薫(昭和五一年四月二六日付)、重畠トミエ、(同年同月一七日付)村山敏雄(同年同月二八日付)、竹中邦夫、富永節子、古城逸見、鮫島大吉、横山清英、大野鈴子、高倉政人、福崎藤之丞、森勇一郎、近藤十志夫の各司法警察員に対する供述調書には右認定にそう部分があるけれども、他方原審で取調べられた被告人の前科調書によると、被告人は暴力行為等処罰ニ関スル法律違反の罪により昭和四七年一〇月四日鹿児島地方裁判所において懲役八月に処せられ、同年一〇月一九日から昭和四八年四月一四日まで服役していたことが認められ、右期間中に被告人が前記上村薫らに対し原判示のような利息契約をしたうえ即時その利息を受領することはありえないことであるから、右の事実に徴すると、前掲各供述調書中原判決の前記認定にそう部分は直ちに採用しがたく、他に右事実を認定できる適確な証拠はない。原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認があるといわなければならない。

よつて刑事訴訟法第三九七条により原判決を破棄し、同法第四〇〇条但書により更に次のとおり判決する。

罪となるべき事実

被告人は鹿児島市易居町二番二五号において有限会社日光商事の名称で金融業を営むものであるが、原判決添付別紙一覧表(一)(番号1、2及び合計の欄を除く)、(二)(番号1ないし15及び計の欄を除く)記載のとおり昭和四八年四月一六日から昭和五一年二月二六日までの間四四八回にわたり右日光商事の事務所において富永節子ほか三二名に対し一〇〇日の貸付期間で金銭を貸付するにあたり一日当り〇、三パーセントを超える一日当り約〇、三三パーセントの割合による利息契約をしたうえ即日これを受領したものである。

証拠の標目(省略)

累犯前科

被告人は(一)昭和四六年七月一二日鹿児島地方裁判所において暴力行為等処罰ニ関スル法律違反の罪で懲役六月に処せられ同年一一月一二日右刑の執行を受け終り、(二)その後犯した暴力行為等処罰ニ関スル法律違反の罪により昭和四七年一〇月四日同裁判所で懲役八月に処せられ昭和四八年四月一四日右刑の執行を受け終つたものであつて、右事実は前科調書によつてこれを認める。

法令の適用

被告人の判示所為は包括して出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律第五条第一項に該当するので懲役及び罰金を併科することとし、被告人には前示(一)、(二)の前科があるので刑法第五九条、第五六条第一項、第五七条により右懲役刑につき三犯の加重をした刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役三月及び罰金二〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは同法第一八条により金五、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

一部無罪の理由

本件公訴事実中起訴状添付別紙一覧表記載1、2の事実及び訴因変更請求書添付犯罪一覧表記載1ないし15の各事実についてはいずれも前述のとおり犯罪の証明がないが、右はいずれも判示事実と包括して起訴されたものと認められるので主文において無罪の言渡をしない。よつて主文のとおり判決する。

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