福岡高等裁判所宮崎支部 昭和59年(う)123号 判決
原判決は,原判示第一の一ないし八のとおり,8回にわたる被告人の所謂選挙賭博の事実を認定し,右賭博は各別にそれぞれ刑法185条に該当するものとして併合罪の規定を適用,処断している。しかし,本件各犯行は,いずれも同一の選挙の得票結果を「偶然の輸えい」とするもので,かつ,犯行の日時も短期間に集中連続して行なわれたものであり,犯行場所も徳之島町亀津の限定した場所で行なわれており,連続的集合犯的犯行としての性格を有するものであるところ,右各賭博は,犯行の動機が単一で,犯行の形態,方法及び被害法益が同一であり,しかも,犯意が同一かつ継続的であるから,これらを全体的に包括して一罪として処断すべきである。従って,これを前記のように併合罪として処断した原判決には,罪数についての法令の適用を誤った違法がある,というものである。
しかしながら,単純賭博罪は,いわゆる単純行為犯ないしは行態犯と呼ばれるものに属し,偶然の輸えいに関し,当事者間において相互に財物の得喪についての合意が成立すれば足り,賭事又は博戯の開始があれば同時に既遂に達し,具体的な合意が成立するごとに,それぞれ別個の犯罪が成立する性質のものであることなどに照らすと,単純賭博罪において,同一人の数回にわたる賭博行為を全体的に包括して一個の犯罪に該当すると評価するのを相当とするのは,極めて例外的な場合に限られるというべきである。
被告人の本件8回に及ぶ各賭博は,いずれも保岡,徳田両候補の得票数の多寡を偶然の輸えいとし,賭けの条件を等しくする外,原判示第一の一,二,同三ないし五,同六ないし八ごとにこれをみると,その相手方,共犯者,仲介者,賭け金の保管方法,犯行の方法,形態等につき一定の共通性を有し,また賭博の日時,場所等もある程度近接しているものの,賭博の動機,機会は単一ではなく,被害法益が同一であるともいい難く,また,犯意が単一ないしは継続してなされたものとは認められず,これを単純賭博罪の罪質及び立法の趣旨にも照らして考えると,右8回の賭博行為を全体としてみるときはもとより,その相手方ごとに,即ち,原判示第一の一,二,同三ないし五,同六ないし八の3個に分けてみても,そのそれぞれを包括して1個の罪(全部で3個の罪)として評価するのが相当であるとも認められず,むしろ右8回の行為はそれぞれ別個の罪を構成するものと解するのが相当である。