福岡高等裁判所那覇支部 平成11年(う)9号 判決
所論は,被告人らが,前述のとおり,差押えを受けた賃料につき,第三債務者である賃借人らから維持管理費ないし賃料名下の金員を取り立てたとしても,右取立てによって債権の所在が変動するものではないから,これをもって,債権の存在の「発見」を「不能ないし困難」にさせるものとはいえず,したがって,被告人らの行為は,刑法96条の2の「財産を隠匿」したという構成要件に該当しない,というものである。
そこで検討するに,本件は,被告人両名の経営する有限会社の所有に係る本件マンションにつき,同社の賃借人らに対する賃料が抵当権の物上代位により差し押さえられたにもかかわらず,その強制執行を免れる目的で,賃借人らを欺き,賃料額の4割の維持管理費が必要であるかのように装って,従前の賃料額の6割を賃料,4割を維持管理費とする旨の契約更改をさせた上,さらに,右賃料を賃借人らに代わって差押債権者に送金するかのように装い,よって,第三債務者である賃借人らから,維持管理費及び賃料預り金名下に金員を受け取ったものであるが,債権差押えの場合,債権者において,差押債権の有無及びその金額を正確に把握することは困難であり,第三債務者による陳述等が正確になされない場合には(本件においても,差押債権の有無等を裁判所に回答していない賃借人が多数いることが認められる。),債権者が実際に第三債務者から取立てをしてみて,初めてその差押債権の有無やその金額が判明するということが多々あるのである。そして,被告人らの前記行為は,一般的に,第三債務者をして,差押えに係る賃料額は従前の賃料額の6割にあたる金額であり,その余の4割は被告人らに支払えば足りるものと思わせ,あるいは,右差押えに係る賃料についても被告人らに預けたことにより既に支払ったものと思わせることにより,債権者による差押債権の取立てに応じないようにさせるものというべきである。したがって,被告人らの前記行為は,債権者が差押債権の有無及びその金額の把握をすることを妨げ,差押債権の取立てを困難にするものに他ならないから,刑法96条の2の「財産を隠匿」したという構成要件に該当するということができる。