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福岡高等裁判所那覇支部 平成15年(行タ)2号 決定 2003年10月30日

主文

1  本件参加申立を却下する。

2  申立費用は申立人の負担とする。

理由

1  参加申立ての趣旨及び理由

参加申立ての趣旨は,別紙「訴訟参加申立書」のとおりである。参加申立ての理由は,別紙「訴訟参加申立書」及び「訴訟参加申立書訂正申立書」記載のとおりであるが,要するに,本訴が提起された平成8年当時,保安林の指定の解除の事務は農林水産大臣の権限であり,また立木の伐採等に係る事務は国の機関委任事務として農林水産大臣の指揮監督を受けていた沖縄県知事が実施したものであるから,申立人が当該事務に係る関係資料を有するので,申立人を訴訟に参加させることにより,適正な審理裁判を実現することができるというのである。

2  当事者の意見

控訴人の意見は別紙「意見書」記載のとおりであり,被控訴人らの意見は別紙「訴訟参加申立に係る意見書」記載のとおりである。

3  当裁判所の判断

本件記録によれば,本件訴訟は,前沖縄県知事であった控訴人A及び現職の沖縄県知事が広域基幹林道α線事業(以下「本件事業」という。)に関して公金を支出したことが違法であると主張して,沖縄県住民である被控訴人らが,控訴人沖縄県知事Bに対しては,平成14年法律弟4号による改正前の地方自治法(以下,単に「地方自治法」という。)242条の2第1項に基づく公金支出等の差止等を求め,控訴人Aに対しては同条項4号に基づく代位請求として損害賠償金の支払を求めて提起した住民訴訟であること,原判決は,控訴人Aが本件事業に際し,保安林の指定の解除の手続をしないまま立木伐採等の行為を行ったことは違法であると判断したことが認められる。

ところで,地方自治法242条の2第6項,行政事件訴訟法43条3項及び41条1項によって準用される同法23条の規定(行政庁の訴訟参加)は,他の行政庁が係争となっている処分等に関与したり,これについての資料等を保有している場合が少なくないため,このような行政庁を訴訟関係に引き入れてその有する訴訟資料等を法廷に顕出させ,訴訟資料を豊富にすることによって適正な審理裁判を実現しようとするものである。このような見地から,本件において申立人を訴訟参加させることの必要性の有無について検討するに,申立人は,保安林の指定の解除,立木伐採等の事務処理について関係資料を有すると主張するのであるが,その趣旨は,保安林の指定の解除の要否等について原判決の判断に法令解釈上の誤りがあることを主張するものに過ぎず,その有する「関係資料」も一般的な通達その他の法令解釈の指針となるものにとどまり,申立人が本件で係争となっている保安林の指定の解除の要否についての判断又は立木伐採等の手続に現実に関与してその経緯を把握しているとか,これらに関する内部資料を保有しているというわけではない。

そうすると,申立人の参加により審理の充実を期しうる訴訟資料が法廷に顕出されると認めることは困難であって,本件訴訟参加の必要性を認めることはできないというべきである。

3  よって,本件参加申立ては理由がないから,これを却下することとし,主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 渡邉等 裁判官 永井秀明 裁判官 増森珠美)

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