福島地方裁判所 平成19年(ワ)194号 判決 2007年11月22日
主文
1 平成19年6月28日、被告株主総会においてなされた「原告X1、原告X2及び原告X3が取締役を、Bが監査役を解任された」旨の決議、並びに「A、C及びDを取締役に、Eを監査役に選任した」旨の決議が、いずれも存在しないことを確認する。
2 平成19年6月28日、被告取締役会においてなされた「Aを代表取締役に選任した」旨の決議が存在しないことを確認する。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
主文1、2項と同じ
第2事案の概要
1 請求原因
(1) 被告は、旅館業、料理店業を目的として、昭和16年8月11日に設立された株式会社である。
(2) 平成19年6月28日当時における被告の全株式20万株の株主構成は、次のとおりである。
X2 9万2305株
X1 6万4910株
F 2万8500株
G 7285株
H 2275株
I 2050株
J 775株
B 700株
X3 700株
K 500株
(3) Aは、平成19年6月28日午後2時30分から、被告会社本店において臨時株主総会が開催され、
ア 代表取締役原告X1、取締役原告X1、取締役原告X2、取締役原告X3、監査役Bの解任
イ 取締役A、取締役C、取締役D、監査役Eの選任
の決議があった旨の臨時株主総会議事録を作成し、同月29日、福島地方法務局に対し、その旨の株式会社変更登記の申請をした。
(4) 福島地方法務局は、上記申請に応じ、(3)記載の変更登記をした。
(5) しかし、(2)記載の株主にはなんら株主総会の招集通知はされておらず、(3)記載の平成19年6月28日午後2時30分の臨時株主総会というのは、物理的に不存在である。
(6) また、同日、上記のとおり選任されたと称する取締役が集まって取締役会が開かれ、Aが代表取締役に選任されたとされているが、そもそも取締役会は開催されていないし、また、そのような(自称)取締役が集合していたとしても、法的には不存在である。
(7) よって、原告らは、上記株主総会決議及び取締役会決議がともに不存在であることの確認を求める。
2 請求原因に対する認否
(被告)
(1) 請求原因(1)、(2)は認める。
(2) 同(3)のうち、Aが、平成19年6月29日、福島地方法務局に対し株式会社変更登記の申請をしたことは認め、その余は不知。
(3) 同(4)は認める。
(4) 同(5)、(6)は不知。
(補助参加人)
(1) 請求原因(1)は認める。
(2) 同(2)は否認する。
(3) 同(3)のうち、Aが株式会社変更登記の申請をしたことは認め、その余は否認する。
(4) 同(4)は認める。
(5) 同(5)、(6)は否認する。
3 補助参加人の主張
(1) 平成19年6月28日当時の被告の株主構成は次のとおりである。
A 4万4200株
D 4万4200株
C 4万4200株
X1 2万9340株
F 2万8500株
G 7285株
H 2275株
本件臨時株主総会には、上記株主のうち、委任状を含め圧倒的多数の株主が出席して開催された。
(2) 原告らは、株主総会を開催することなく、総会議事録を偽造して前代表取締役Lらの退任登記手続をしており、本件訴訟において、補助参加人が行った株主総会について異議を申し立てることは信義則上許されない。
第3当裁判所の判断
1 請求原因(1)の事実は当事者間に争いがない。
2 請求原因(2)の事実は原・被告間に争いがない。
補助参加人の認否は、被告の訴訟行為に抵触するものであるから、効力を有しない。
3 請求原因(3)のうち、Aが、平成19年6月29日、福島地方法務局に対し株式会社変更登記の申請をしたことは当事者間に争いがなく、証拠(甲7)によれば、Aは、同月28日午後2時30分から、被告会社本店において臨時株主総会が開催され、請求原因(3)のア、イのとおりの決議があった旨の臨時株主総会議事録を作成したことが認められる。
4 請求原因(4)の事実は当事者間に争いがない。
5 証拠(甲1、14ないし20、34)によれば、平成19年6月28日当時被告の株主である原告X2、原告X1、G、H、I、J及び原告X3の7名(株式合計17万0300株)に対し、本件臨時株主総会の招集通知はされておらず、同人らは同株主総会に出席していないことが認められる。
そうすると、本件臨時株主総会は、株主の大多数に招集通知がされず、出席もされなかったものであって、その決議は存在しないというべきであり、これに基づいて選任された取締役による取締役会決議もまた不存在というべきである。
6 補助参加人の主張(1)の株主構成に関する部分は、被告の訴訟行為に抵触するものであるから、効力を有しない。
同(2)の、原告らが総会議事録を偽造して前代表取締役らの退任登記手続をしたとの事実については、これを認めるに足りる的確な証拠はなく、また、そのような事実をもって、原告らの本訴請求が許されないことになるものでもない。
7 以上によれば、原告らの請求は理由があるからこれを認容し、主文のとおり判決する。
(裁判官 森髙重久)