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福島地方裁判所 平成5年(行ウ)1号 判決

原告

三瓶清隆

西山晃夫

秋元酉治

右三名訴訟代理人弁護士

安田純治

被告

(川内村長) 渡辺尊之(Y)

事実及び理由

第三 争点に対する判断

一  〔証拠略〕によれば、以下の事実が認められる。

1  川内村は、村の過疎化対策のために「村おこし」事業を構想し、昭和六二年五月の企業誘致等特別委員会設置決議を始めとして、右委員会の先進事例現地調査報告、協議等を経た後、昭和六三年五月に「村開発に係る企業誘致等特別委員会協議結果」の提出による長期総合的な開発の基本事項として、<1>村は、財産を守ると共にそれを活用すること、<2>右活用に当たっては、すべてを企業に委ねるのではなく、村が主体の第三セクターが中心となって活用にあたることなどの事項を確認した。その結果、「村おこし」を目的とした官民共同の第三セクターである会社の設立が要請され、同年九月二〇日、資本金五〇〇万円の開発公社が設立された。

開発公社は、川内村が資本金の五〇パーセント、同村議会が二パーセント、山貴が四〇パーセントを出資して設立された第三セクターであり、その事業目的には、<1>川内村の宅地及び農地造成、土地利用権の斡旋、管理、<2>宿泊施設、娯楽施設及びスポーツ施設の経営、企画、設計、<3>ゴルフ、テニス等会員制スポーツクラブの会員権の売買等が定められている。

2  開発公社は、村の開発事業遂行のために、昭和六三年一〇月三一日、山貴と川内村村有地開発事業委託基本契約を締結したが、まもなく山貴代表取締役山口寛の人物像や契約内容に不当な点があるのではないかと村内で問題視されたことから、同年一二月一四日、開発事業の着手に至る前に同契約を合意解約した。そして、同月二六日、新たに訴外ミサワホーム株式会社(以下「ミサワホーム」という。)を誘致企業とする村の決定に従い、平成三年二月二一日、ミサワホームと基本協定を締結し、第一期計画としてゴルフ場開発及び分譲別荘地開発事業を行うこととしたが、ミサワホームの方針に従い、開発事業は、同社の現地法人であるミサワリゾートが行うこととなり、同年九月三〇日、同社と山林都市「川内高原」開発にかかる事業取組等に関する契約を締結した。これにより、ようやく開発事業計画が進展を始め、また、同年一〇月には、右開発事業に賛同する者で組織される民間団体山林都市開発推進協議会が結成された。

しかし、開発事業が始められたものの、その後ゴルフ場開発事業は途中で凍結され、別荘分譲事業も三区画を造成し、モデル棟一棟を建築販売したにとどまり、開発公社は解散するに至った。

3  開発公社の庁舎使用の状況について

開発公社は、昭和六三年九月二八日、川内村に対し、村役場庁舎内一階第一会議室の使用許可を申請し、同日、無償で使用することの許可を得、これにより、同日から昭和六八年(平成五年)九月二七日まで無償で同会議室を使用し得ることとなった。

開発公社の職員は山貴から派遣される予定であったが実行されず、専従の職員がおらなかったため、昭和六三年から平成二年三月三一日までの間は、総務課企画調整係が併せて公社の業務を執行し、当時係長であった松本が右業務に従事した。そして、開発公社について予想される事務量の増加に備え、また、総務課の使用していた事務室が手狭になっていたことから、同係は会議室に移動して執務することとなり、会議室入り口扉には「総務課企画調整係」「(株)川内高原開発公社」と表示された。会議室には、松本と同係所属の渡辺某との二人が入って総務課企画調整係の事務を処理し、時折開発公社の業務に従事していたが、開発事業が進展しなかったため、殆ど仕事らしい仕事などない状態であった。また、開発公社独自の動産等はなく、同社が使用許可を得ていた机やいす等の動産も同係との共用であり、むしろ、ロッカーには総務課の書類が保管されているだけであった。

平成二年四月一日、川内村課設置条例、川内村行政組織規則の改正で新規に企画課が設置され、総合開発に関すること及び村開発公社に関することが企画課開発係の事務分掌となり、それ以降は、企画課課長石井及び企画課開発係長となった松本が公社の業務を担当した。そして、企画課の設置に伴い、企画課の事務室が庁舎一階中央部に設けられ、旧企画調整係の管理する物品は開発公社の資料をも含めて本件会議室から移動し、爾後、本件会議室には、開発公社の所蔵する資料や物品が置かれることもなくなり、開発公社は全く占有も使用もしない状態となったのであるが、入り口扉の表示はそのまま残されていた。

その後、平成三年一〇月一日、開発公社は、ミサワリゾートと賃貸借契約を締結して事務所を設け、平成四年一二月一日、川内村に行政財産返還届を提出した。

4  超過勤務手当等の支給について

右のとおり、開発公社設立時から同社の業務を執行していた者は松本であり、平成二年四月一日から、石井と松本であるところ、川内村長は、松本に対し、平成四年四月二三日、同年六月一九日、同年九月二一日の各山林都市開発推進協議会の役員会及び同年四月二九日の同協議会総会に出席することを命じこれに伴う超過勤務手当合計九六一〇円、並びに、同年五月一五日の開発公社確定申告相談及び同月二九日同公社株主総会出席者送迎のための出張を命じこれに伴う出張旅費合計六二〇〇円を各支給した。

二  そこで、開発公社の庁舎使用について判断する。

前示のとおり、川内村が開発公社について庁舎内一階第一会議室の無償使用を許可したところ、同社の現実の使用、占有状況というのは、入り口扉には確かに同社名が掲げられているものの、本件会議室は、平成二年四月一日までは企画調整係において執務に供用していたこと、開発公社には専従の職員はおらず、固有の資料、物品等もなかったこと、企画開発係長の松本が開発公社の業務に携わる時間も極僅かであったこと、また、同日以降は、本件会議室は使用許可がなされる以前の状態に戻ったこと、なお右使用許可がなされる先後を通じて、村役場当局において必要に応じて本件会議室を使用していた状況にあったこと、さらに、開発公社の事務所を本件会議室に設置した主な目的が、同社に専従職員がおらず役場職員がその事務を兼務することになったからであることに鑑みると、本件使用許可がなされた後にあっても、現実には村役場の総務課企画調整係が同所で執務しているだけで、開発公社における独自の排他的な使用、占有はなく、村当局の使用が制限されていた状況も窺われない。

してみると、本件使用許可の有効無効を問うまでもなく、川内村は本件使用許可により損害をこうむっておらなかったと認めるのが相当である。

よって、この点についての原告らの主張には理由がない。

三  次に、松本に対する超過勤務手当、出張旅費の支給について判断する。

いわゆる第三セクターは、地方公共団体といった公共部門と民間部門とが共同して組織した事業体で、公共団体と民間企業との共同出資によって設立された地域開発等のための会社であるところ、確かに、前示のとおり開発公社が、村の活性化のための開発事業を目的とし、資本金の五二パーセントを村の予算から支出して設立された第三セクターであり、この限りにおいては同社の事業が反射的に村や村民の利益に関わるもので、そこに公益性が認められないわけではない。しかしながら、開発公社は、本質的には営利を目的とする商法上の株式会社組織をとる私企業の一つであって、その営利目的の一つとされるゴルフ場開発や分譲別荘地の造成等の業務及び会社の内部事務等は、地方公共の秩序を維持し、住民の安全、健康及び福祉を保持すること等を目的とする地方公共団体の事務と同視することはできない。特に、本件公金支出の対象となっている業務は、村とは直接関係のない民間団体である山林都市開発推進協議会の役員会、総会への出席及び開発公社の確定申告相談、株主総会出席者の送迎に伴う出張であり、地方公共団体の事務とは性質を異にするものであることは明らかである。

ところで、本件で、松本が業務命令により開発公社の業務を行ったことは、川内村課設置条例、川内村行政組織規則により「村開発公社に関すること」が企画課開発係の事務に規定されていることに基づいたものであるが、開発公社の設立の経緯、目的に照らせば、前示のとおり開発公社には公益性が認められ、その業務を村が指導、監督する必要のあることは否定できないのであって、その限度において「開発公社に関すること」、例えば村が開発公社の会計監査を行うことなどを村の事務とすることは、地方自治法二条二、三項の規定に違反するものではない。しかしながら、右の限度を超え、開発公社を経営するための業務あるいは純然たる公社の経常事務そのものを村の事務とすることまでは同規定に違反し、強行法規に反するものとして許されないものといわざるをえない。

そうすると、被告は川内村長として、職員に対し、本来は村の事務に属するとはいえない業務に従事することを命じ、その違法な業務執行の対価として前示諸手当を支給したものであり、地方公務員法二五条一項、二項、地方自治法二〇四条の二に違反した違法な公金支出と認められる。

したがって、被告が川内村長として、松本に支給した超過勤務手当九六一〇円及び出張旅費六二〇〇円については、川内村は右金額相当の損害をこうむったのであるから、被告は川内村に対しこれを賠償する義務がある。

四  よって、原告らの請求は、被告に一万五八一〇円の支払いを求める限度において理由があるからこれを認容し、その余については理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九二条本文、九三条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 木原幹郎 裁判官 林美穂 野口佳子)

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