大判例

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福島地方裁判所 昭和24年(ワ)132号・昭25年(ワ)5号 判決

原告 大川光則

被告 伊東喜三郎

一、主  文

被告は原告に対し金五十四万千九百五十円及びうち金二十七万円に対しては昭和二十四年十一月二日から、うち金二十七万千九百五十円に対しては昭和二十四年十二月一日から、いずれも完済まで年六分の割合による金員を支拂え。

訴訟費用は被告の負担とする。

この判決は原告が金十二万円の担保を供するどきは仮に執行することができる。

二、事  実

原告は昭和二十四年(ワ)第一三二号事件につき、被告は原告に対し金二十七万円及びこれに対する昭和二十四年十一月二日から完済まで年六分の割合による金員を支拂え。訴訟費用は被告の負担とするとの判決並びに担保を條件とする仮執行の宣言を、昭和二十五年(ワ)第五号事件につき被告は原告に対し金二十七万千九百五十円及びこれに対する昭和二十四年十二月一日から完済まで年六分の割合による金員を支拂え。訴訟費用は被告の負担とするとの判決並びに担保を條件とする仮執行の宣言を、それぞれ求めた。その請求の原因として述べたところは次のとおりである。

被告は、昭和二十四年十月二十二日原告にあて、(一)金額二十七万円、満期同年十一月一日、支拂地、振出地とも福島市、支拂場所株式会社東邦銀行本店と定めた約束手形一通、(二)金額二十七万千九百五十円、満期同年十一月三十日、その他の要件は前同様の約束手形一通を振り出した。右手形の所持人である原告は、(一)の手形を同年十一月二日、(二)の手形を同年同月三十日、いずれも支拂場所に呈示して支拂を求めたが、被告は、これを拒絶したので、原告は、各呈示の日、福島地方裁判所執行吏に拒絶証書を作成させた。よつて、右各手形金額及び(一)の金額については呈示の日から、(二)の金額については呈示の翌日から、いずれも完済まで年六分の割合による利息の支拂を求めると述べ、被告の主張に対し(一)の約束手形が、前に原告が他から讓り受けた約束手形を書きかえたものであることは、これを認めるが、前の約束手形の支拂が、被告主張の鉱業権の登録名義変更を條件としたかどうかは、原告のあずかり知らないところである。(二)の約束手形は、原告が被告からリンゴを買い受ける契約をして、代金の一部金二十万円を被告に前渡したが、後右賣買を合意解約し、被告は、右金額を返還することになつたので、その支拂のために振り出された約束手形が数次書きかえられたものである。その余の抗弁事実は、これを否認すると述べた。<立証省略>

被告は、原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め、原告主張事実は全部これを認めるが、次のような事由で、被告は、本件手形金を支拂う義務はない。

一、被告は、昭和二十二年十二月中訴外斎藤義正から同人所有の石炭鉱区福島縣採掘登録第四四八号及び同試掘権登録第八一一七号の鉱業権及び同鉱区採掘設備一切を金三十一万円で讓り受け、右代金のうち金十万円を支拂い、残額二十一万円については、前記鉱業権の登録名義が被告に書きかえられときに支拂う約束で、訴外佐川正にあて金額十万円と十一万円の約束手形各一通を振り出した。原告は、右事情を知りながら、昭和二十三年七月佐川正から右約束手形二通を讓り受け、被告に書替を求めたので、被告は数回手形を書きかえ、損害金を組みいれた結果、本件約束手形二通となつたものである。被告は、本件手形の支拂期日までには、前記鉱業権の登録名義が被告に変更されるものと見越して、これを振り出したものであるが、登録名義変更については、いまなお福島地方裁判所白河支部に訴訟係属中で、被告名義に変更されていないから、本件手形の支拂期は到來しない。

二、被告は、本件手形金のうちに、金三万、金四万、金七万及び金一万合計金十五万円の一部支拂をした。

三、原告は、被告に対し月一割の損害金を加算して、手形を切りかえるよう強要したので、被告は、その意に反してこれに應じたゝめ、かように多額の手形金額になつたのであるから、(一)の手形については金十万円、(二)の手形については金十一万円及び右各金額に対する利息制限法を超過しない利息の範囲内の請求ならともかく、それ以上の請求は失当である。

四、なお訴外三矢嘉一は、昭和二十四年六月三日、被告の債務一切について免責的引受をしたから、被告に本件手形金の支拂義務はない。

被告の抗弁事実は、以上に記載したとおりである。<立証省略>

三、理  由

原告主張事実は、全部被告の認めるところである。そして証人斎藤正義の証言及び原被告各本人尋問の結果を総合すると、被告は、昭和二十二年十二月中旬ごろ、斎藤正義及び佐川正から同人等共同名義の鉱業権を金八十万円で買い受け、右代金の一部支拂のために、金額十万円及び十一万円の約束手形各一通を斎藤正義宛に振り出したが、斎藤は佐川に、佐川は原告に、右各手形を順次裏書讓渡したので、被告は、その切替の際、原告宛の約束手形二通を振り出し、それがしばしば書きかえられて、本件の約束手形二通となつたものであることが認められる。(もつとも甲第三号証に原被告各本人尋問の結果を総合すると、(二)の約束手形は、單純に書きかえられてきたものではなく、原告は、昭和二十三年八月六日、被告からリンゴを買い受けることを約し、その代金の一部金二十万円を前渡したが、右二十万円は、(二)の手形の当時における金額に原告が不足部分を現金で被告に渡して、二十万円としたものであつたが、その後右賣買は合意解約され、被告は、原告に金二十万円を返還することになつたので、その支拂のために振り出された手形が数次書きかえられて、本件(二)の約束手形となつたものと推認される。)

被告は、右手形は、前示鉱業権の登録名義が被告に変更されたときに支拂う約束であつたのに、まだ変更されていないから、本件手形の支拂期は到來しないと抗弁するが、被告本人尋問の結果中、右抗弁事実にそう部分は信用しがたく、却つて証人斎藤正義及び三矢嘉一の各証言を総合すると、このような約束がなかつたばかりでなく、その後昭和二十四年六月三日被告は、右鉱業権を訴外三矢嘉一に讓渡し、既に三矢名義に登録されたことが認められるから、本抗弁は採用しない。

本件手形金中に金十五万円の一部支拂をしたとの抗弁事実は、これを認めしめるに足りる確証がない。

被告は、原告の強要により、意に反して、手形金額に月一割の損害金を加算した金額の手形に切りかえたため、本件手形金額になつたものであるが、このような高率の損害金は不法であると抗爭し、証人斎藤正義及び原告本人の各供述を総合すると、被告は手形金の支拂をすることができなかつたため、一月くらいごとにこれを書きかえてきたが、書替のつど、旧手形金額に百円につき一日金三十三銭くらいの割合による損害金を組み入れた金額の手形を振り出してきたものであることが認められる。ところが、手形債務につき、遅滞後の損害金として、利息制限法第二條の制限を経過する利率による補償をする旨の契約は、もとより有効であり、百円につき一日金三十三銭の損害金は、相当高率ではあるが、直ちにこれを公序良俗に反する無効のものともいいがたく、また旧手形金額に右割合による損害金を組み入れた金額の手形に切りかえても、これを無効とすべきいわれがないから、被告は、本件手形につきその支拂の責に任ずべきものといわなければならない。

更に、被告は、三矢嘉一において本件手形の免責的引受をしたと抗弁し、証人三矢嘉一の証言で眞正に成立したものと認められる乙第一号証に同証言を総合すると、三矢嘉一は、昭和二十四年六月三日被告から本件鑛業権の讓渡を受けた際、被告の債務を引き受け支拂うことを被告に約束したことが認められるが、免責的引受契約の成立したことは、これを証すべき証拠がなく、却つて被告本人尋問の結果によると、このような契約の成立していないことが明らかである。甲第一、二号証の本件手形が、昭和二十四年六月三日後である同年十月二十二日に振り出された事実も、右の認定を補強するものということができる。

以上のとおりで、被告の抗弁は、総べて採用することができないから、原告の本訴請求を正当と認め、民事訴訟法第八十九條、第百九十六條を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 斎藤規矩三)

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