福島地方裁判所 昭和24年(行)118号 判決
原告 丹治亀吉
被告 木幡村議会
一、主 文
被告が昭和二十四年七月二十五日にした被告議会の議員である原告を除名する旨の決議はこれを取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
二、事 実
原告は、主文同旨の判決を求め、その請求の原因として、原告は、被告木幡村議会の議員で且つ議長であつたが、村議会は昭和二十四年七月二十五日の議会において、原告を懲罰に付するの緊急動議を取り上げ、原告を除名する旨の決議をした。
被告が原告を除名した理由としてあげているところは、次のとおりである。
(一) 原告が昭和二十四年一月二十八日の、被告木幡村議会(以下單に村議会という)定例会において、五番議員(安達智元)が議事の妨害をなすものとして退場を命じた事実に対して、木幡村議会懲罰委員会(以下單に懲罰委員会という)は、五番議員が発言を求めたのに対し、議長は村長よりの提出事項を審議してからにせよと言つて発言を許可しない。從つて同議員は服從した、然るに議事全部議了したにもかかわらず議長は指定に服從し命令を守つた同議員に対して発言の機会を與えずに不法に退場を命じた。これは議長の專檀で職権を乱用し議員の発言を禁止し退場を命じたまま閉会を宣したのは議長の越権行爲であり、議員の発言権を不法に封鎖されることは、議会の本旨並びに地方自治法(以下單に自治法という)の精神に反した違法行爲である。
(二) 昭和二十四年三月二十六日の村議会において、十五番議員(郷保清人)より行政監査に関する緊急動議がなされ、これが附議決定を見たため行政監査後でなければ審議し難きに至つた。それで当日村長提出議案である。木幡村昭和二十二年度歳入歳出決算報告案外数件の審議を延ばすに至り、散会した事実を捉えて、当日の会議において議長は村長より提出の議案を後にして、村財政の監査とか議員の行動等を批難し議長自ら議場を混乱せしめ、提出された案件を議に付さず本日は閉会すると述べたので、多数の議員が会期二日間なのであるから本日は充分調査討議したいと言い、再三要請するも議長は聞き入れず閉議した。二日間の会期なのに一日を空しく議に付さず残る一日で如何にして審議する意思なのか、議員の意思を尊重しないものであり閉議は全員の要請を無視し勝手独断の行爲であつて、自治法第百二條第六項、第百十條、会議規則第十四條の規定に違反するものである。
(三) 昭和二十四年三月二十八日の村議会において、行政監査に関する選挙管理委員の調査報告の内容になお疑義があつたので、更に調査を求めたため、選挙管理委員阿部賢明は報告書を取り下げ再調査のうえ報告することとなつたところ、一部議員は一般提出議案の附議を求めて止まず、議長の許可なき発言を繰り返して止まないため五番議員(安達智元)に対し退場を命ずるに至つたことに関して、十一番議員(佐藤昌治)は議長不信任の動議を提出するから議長は退場せよと迫り、他の数名の議員がこれに同調し議場甚しく混乱を極むるに至つたため、議長は已むなく休憩を宣するに至れるいきさつを目して、
(1) 昭和二十四年三月二十八日議長は第二日に至り、午前九時開議したが、選挙管理委員会に対し自ら解釈の違つた調査書を提出し、議案に関係ない問題に対し徒らに時間を空費し議案を議に付さず議員はただ傍観している状態で、全員より議案の審議に入り各種委員会において調査したいと議長に要請するも強張して許さず、議員も議長の監査はそのまま続行してよろしいから、我々委員会においても議案を調査したいから議に付してほしいと要求するも應じない。これは議員の意思を無視した行爲であり、議事の進行を他の目的によつて妨害しているものとしか解されず、議長として越権且つ不法な行爲である。
(2) また議長は五番議員(安達智元)が議案附議につき懇請するもこれに應ぜず、十三番議員(藍原久壽)発言を求めたが議長は五番と話中であるからとて発言を許さない。それで五番は発言せんとしたが議長は発言を許してないと述べる、十三番には五番と話中であるからと言つて許可しないから、五番は許可されているものと承知して発言したのであつて不都合とは思わないが惡ければ取り消すと述べる。議長は五番に対していつもそういうことを言うからよろしくない退場を命ずると述べる、右の事実により議長は議員の発言権を無視し不法にも退場を命じたのは、議長の越権行爲にして議事の公平を欠くものであつて発言権の侵害であり、議長の感情を以つてするものの如く法規違反である。なお議長が傍聽席におつた警官に向つて五番議員を退場させられたいと要請したのは、議員に侮辱を與えたものである。
(3) 議長の前後二回に亘る発言停止は不当であり、また不法にも退場を命じたので不信任の声が起り、議長を懲罰に付するから自治法第百十七條により退場と、十一番議員(佐藤昌治)が要求し、議員多数が退場を叫んでも議長は退場せず「自己一身上の議事に関する事件については、その議事に参與することができない」と言う法規に明文ある以上自ら退場すべきに、盛んに各議員から退場を強要されても退場しないのは明らかに法規違反である。なお議長は五番十一番十三番議員に対し、議長の職責を妨害したから告発すると議場で宣言したが、これは議長の職権濫用で威力を以て議員を威嚇し信用を毀損するものである。
(4) 議長に対する懲罰動議成立し、一定期間出席停止を宣言されたにもかかわらずこれに承服できぬと述べる。議長は一身上に関する議事につき退場を要求されても退場せず、また多数により決定された懲罰を承服できぬという言をはくは、自治法及び会議規則を無視するもので、議長として甚だ不適当である。
(5) 次ぎに、村長より提出された議案を満場一致で会期を延長し議決したが、議長は三議員と共に出縣し三議員は欠席した、これがため不当な決議であるとて副議長に異議を申し立て、且つ訴願状を法務廳に提出し「暴力主義的方法の是認である不法行爲により無効なる裁決」をと訴願した事実は、議長として自ら暴言をはきその行動を冷靜に反省せず、徒らに議会をして混乱に陷し入れ村政を顧みないものという外なく正当な議事を妨害するものである、訴願が返戻されたのも当然のことである。以上の事実によつて議長は自治法第百四條「議場の秩序を保持し、議事を整理し、議会の事務を統理し、議会を代表する」とあるいずれにも不適当である。
(四) 昭和二十三年十一月二十二日の村議会において、原告が議員の資格で村長に対して、既に議会が満場一致の決議をし中学校校舍新築のことになつていたにもかかわらず、更に工事が進捗しないことを質問したところ、村長は「おれは怠慢だ」と放言したので、原告が議長席から「議長として村長は不適任だ」といつたことを指摘して、当日議長は本会議において、議長席より議長として村長不信任案を動議提出した。すべて提案は自席からなすべきを不法にも議長席よりしたものである、かかる行爲は議会の秩序を紊し職責に反する行爲である。
(五) 昭和二十三年十一月二十二日の村議会において、原告が「村長は議事法などを無視している」といつたところ、村長は乱暴にも「法が何だ」と放言したゆえ退場を求めた事実を指摘して、当日本会議において、議長は参與に委嘱した村長に対し質問を発し、その村長の回答が惡いというので村長に対し退場を命じた。議員並びに傍聽人取締規定には、議長の職権において退場を命じ得る場合もあるが、参與であり議案の提出者であり、しかも何等議事上に不都合を認められない村長に対し、退場を命じ発言を停止したのは甚だ適当でない。かかる行爲は議長の個々的な意思によるもので、議会の代表とは考えられず議会の運営を混乱せしめる行爲であつて、自分の意思を以て議長の職権を濫用されたものである。
(六) 懲罰委員会は、昭和二十四年一月十八日原告が議長の名において、村選挙管理委員会に対し、「村長武藤利正の被選挙無効決定申請書」を提出した事実を指摘して職権濫用であると断じている。
被告は原告を除名した理由を以上のようにあげているが、
(一) 原告が五番議員に退場を命じたのは、議長の注意にもかかわらず濫りに発言し議長の命に從わなかつたためで、自治法第百二十九條及び木幡村会会議規則(以下單に会議規則という)第五十條によつたもので適法行爲である。
(二) 同日の村議会は会期二日と定めたのに、第一日の議会で十五番議員からの緊急動議が成立して、行政監査をすることの決議があつたため、行政監査の結果に重大な関係ある村長提出議案である、歳入出予算の審議は行政監査後に讓らねばならなくなつたためで、被告が指摘するように議長が勝手独断の処置をしたものでなく、閉議のことも議場に諮つた後のことであるから、議長として何等の失態も違法もない。
(三) (1)当日の議会において、一部議員の意思には反したかも知れないが、全議員の意思を無視した行爲をしたり、議事の進行を妨害した事実はない。
(2)原告は、議員の発言権を侵犯し或は越権の行爲をしたことは無い。
(3)議長たる原告に法規違反や職権濫用の事実がない。
(4)原告に会議規則無視の事実はない。
(5)原告が、徒らに議会を混乱に陷し入れ村政を顧みず、正当の議事を妨害した事実は無い。
(四) 原告が、動機提出を議長席からしたことはあるが、それが直に議会の秩序を紊した職責違反の行爲とはならない。
(五) 原告が、村長に対して退場を命じた事実は認めるが、それは議会が自治法第九十九條第百條等によつて関係人である村長に出頭を求め得る権限あり、自からその必要ない場合退場を求めることは何等違法不当ではなく、勿論職権濫用ともならない。
(六) 原告が村長武藤利正の被選挙権無き決定申請書を村選挙管理委員会に提出したことは認めるが、それは原告の一過失で職権を濫用したものではない。
以上これを要するに、原告は議長として自治法及び会議規則違反の事実は無い、被告村議会が原告懲罰の理由として指摘したものは、多くは抽象的な「越権行爲」とか「職権濫用」とか「議会代表として不適」等の字句を以つて原告を懲罰事犯ありと断じているが、果して自治法及び会議規則の如何なる條項に違反しているというのか、何故にその法令を一々具体的に明示して懲罰の理由を納得させる態度に出でなかつたか、若し原告が議員或は議長として不適当であるというならば、選挙権者にそれを知らしめて、選挙権者を動かし、それ等をして自治法第八十條による解職請求をなさしめればよいのである。議員間の感情によつて議会が常に紛糺しているような場合、議長を反目視していれば何人が議長となつても若干非難の材料を抽出されざるを得ないであろう。いやしくも議員の除名は、公選によつてその地位を得た議員に対する死刑にも等しい処分であるからその審議決定は最も愼重であるべきである。原告において議長として若干冷靜の態度を欠いた憾みはあつたとしても、被告村議会が原告を極刑である除名処分に付したことは断じて適法でない。
なお、被告のした懲罰決議は、自治法第百十九條違反である。同條には「会期中に議決に至らなかつた事件は、後会に継続しない」(国会法にも同趣旨の規定がある)という原則を認めた同法の根底に横わる條理と、懲罰事犯との特質に顧み、或る会期中の懲罰事犯について、その会期中それが取り上げられなかつた以上は、それは同法條の「会期中に議決に至らなかつた事件」と題すべきものと信ずるから、昭和二十三年十一月、同二十四年一月、三月の村議会で懲罰事犯があつたとして、昭和二十四年七月二十五日の村議会がそれを取り上げたことは、それ自体不法であるから、その議会での懲罰決議もまた当然失当である。よつて被告村議会が、昭和二十四年七月二十五日にした、原告を除名する旨の決議の取消を求めるため、本訴に及んだ次第であると述べた。
被告は、原告の請求はこれを棄却する、訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め、原告は会議規則第五十六條第一項第一号及び第四号、自治法第百二十九條その他の法條に違反した左記の各行爲をしたので、被告村議会が自治法第百三十五條第二項による決議を以つて、原告に対し除名の懲罰を科したのは正当である。
原告の違反行爲は、次のとおりである。
(一) 原告が昭和二十四年一月二十八日の村議会定例会において、議長として五番議員の緊急動議提出のための発言要求を不当に制限してこれを許可せず、右発言許可要求のための発言を不当だとして、同議員がその発言を取り消したのにかかわらずこれを退場せしめた行爲は、同議員に何等自治法第百二十九條又は会議規則違反の言動がないのに、却つて原告自身が同條並びに会議規則第二十條、第二十六條に違反し義務なき行爲を強いたもので、職権を濫用して議員の権限を侵犯した不法のものである。
(二) 原告は昭和二十四年三月二十六日の村議会において村長から昭和二十四年度歳入歳出予算案その他重要議案十三件の提出があり、しかも会期を二日間と決定し、提出議案だけでも会期内の審議完了は容易でないとの見透しがついていたのにかかわらず、前記(一)の議会では議員の緊急動議提出要求の発言を不当に制限しておりながら、この議会では議員中何人も動議提出許可の発言を求めたものがなかつたのに、原告自ら進んで奇怪にも緊急動議の提出を促し、十五番議員をして内容を示さない村の「行政監査」を行うべき旨の緊急動議なるものを提出せしめ、会議規則第二十條に基きこれを議場に諮り日程を変更追加するの手続もとらず、これを確定したと称し、動議提出者でない原告自ら右「行政監査」をなすべき事項であるとて、十二項に渉る事項記載の書面を朗読し、且つその権限なき木幡村選挙管理委員阿部賢明にその調査を命じ、多数議員の要求を無視して、右調査未定の間提出議案の審議をすることを拒否し、五番議員の発言を不当だと詰るので同議員が発言を取り消したのにかかわらず、理由なくこれに退場を命じ、十一番議員から議長不信任の意味で懲罰動議を提出するから、自治法第百十七條により原告の退場を求めたけれども退場せず、休議後副議長が議長席につき右懲罰動議を審議したが、原告はなお副議長と席を並べて議長席について退場しなかつたのを初め、自ら議場の混乱を招く言動に出で、同議会をして会期二日間に渉り全然村長提出諸議案の審議に入ることができず、遂に会期一日延長の決議をして辛うじてこれを議了し得た状況に陷れたことは、自治法第百二條第六項、第百四條、第百二十九條、第百十四條、第百十七條、会議規則第十四條、第二十條に違反した行爲である。
(三) 昭和二十四年三月二十六日の村議会第二日目(三月二十八日)の議案について、五番議員が発言を求めたことに関し、退場しないでいたところ、原告は当日傍聽席に來合わせていた同村駐在巡査に対し、議長席から同議員を退場せしめよと要求し、また同議員は議長の職責を妨害したから告発すると発言したことは、同議員を傍聽人の面前において侮辱し、職権を濫用して議員を威嚇したもので、自治法第百三十二條に違反した行爲である。
(四) 昭和二十四年三月二十六日の村議会第二日目の会議において、議長不信任の趣旨による原告の懲罰動議が成立したが、その際原告は、動議提出議員並びに多数議員より原告の一身上に関する動議であるから、自治法第百十七條に基き退場されたい旨の要求があつたのに、これに承服できないとて議長席を降らず、次いで再三の要求によりその席を去つたが退場せず、自席(四番)に着いてその討議をする議事に参與していたがかかる行爲は、自治法第百四條、第百六條第一、二項、第百十七條、会議規則第二十三條乃至第二十六條、第三十八條乃至第四十三條の適用を怠り、且つこれに違反したものである。
(五) 昭和二十三年十一月二十二日の村議会において、原告は議長席にありながら、梁取問題につき村長から侮辱を受けたとて、村長不信任の動議を提出し議員中一人の賛成者がなく議題とならず(会議規則第二十四條)、仮りに議題となつたとしても、これを会議に諮り議事日程の変更及び追加を決議したうえ附議しなければならない(会議規則第二十條)のに、一切この手続をとらず、恰も動議が成立したかのやうにこれを取り上げて云々し、「議会が村長不信任が議長不信任かを決定しないうちは、当日の村長提出議案の審議はできない」とて多数議員の議案附議の要求に應ぜず、更に自ら会議に参與を求めたために同会議に出席中の村長に対し、不当にも退場を命じ議場の秩序を乱したことは、自治法第百十六條第一項、第百二十九條、会議規則第二十條、第二十四條、第二十六條に違反した行爲である。
(六) 原告は昭和二十四年一月十八日附で木幡村選挙管理委員に対し、「村長武藤利正に公職被選挙権無き決定申請書なるものを、明らかに議長名を署しその名下に議長の職印を押して提出した、村議会の議長は自治法第百四條末段の規定により、当該議会を代表するものではあるが、議会を代表する場合は、法令による権限に基くかまたは当該議会の決議を経たときに限られ、議長個人の私意によつてなされるべきものではない。然るに村長の被選挙権の有無に関する問題などにつき村議会の選挙管理委員に対してかような申請をなすべき権限などは、法令によつて與えてもいないし、木幡村議会もそのような申請をすべきことを決議したこともない。ところが原告は恰も議長としてその権限でもあるかの如く、右申請書を公式に提出したことは、不法に議長名を濫用し、その職印を冒用したもので、自治法第九十六條を無視し、同法第百四條及び刑法の罰條に違反した行爲である。
(七) 昭和二十四年七月二十五日の村議会において、六番議員(伊藤眞事)から議員十名の賛成を得て、議長(原告)懲罰の緊急動議を予め書面を以つて提出してあつたので、十一番議員(佐藤昌治)より当日村長から提出の議案審議に先ち、右緊急動議を附議されたいと要求し、動議提出の理由は動議提出書に添附した理由書で説明してある旨発言した。緊急動議提出があつたときは、議長は会議規則第二十條によりこれを会議に諮り日程に追加又は変更したうえ、附議しなければならないのに、原告はその手続を採らなかつたばかりでなく、初めから当日の日程さえも告げず、書面による右緊急動議の提出があつたことも報告しなかつたし、緊急動議は理由がないとてこれを会議に附議しなかつた。また議員から右緊急動議は議長の一身上に関する事項だから、自治法第百十七條により退場されたい旨の要求があつたのにかかわらず、副議長が議長と交代して議長席に着くや、議長席からは一應退席したが自席である四番席について退場しなかつた。やがて右動議が成立し動議の可否につき審議に入るにあたり、副議長からの要求によりようやく退場したことは、自治法第百條、会議規則第十八條、第十九條、第二十條に違反した行爲である。
以上に挙示した原告の行爲は、自治法会議規則に違反した行爲であつて、自治法第百三十五條、会議規則第五十六條第一項第一号第四号に該当し、懲罰を科せられることがあつても致方のないものである。原告除名の懲罰を科した昭和二十五年七月二十五日の議会における、原告の議長としての言動のみでもこの懲罰を科せられるに充分なものである。從つて木幡村議会が成規の手続、すなわち自治法第百三十五條第二項の定員数の決議により、会議規則第五十六條に基き原告に対し除名の懲罰を科したことは、決して不当でない。況んや原告は昭和二十四年五月二十九日の定例議会において、原告を除く他の議員全員の連署で辞職の勧告を受け、昭和二十四年三月二十六日(会期三日間)の議会でも出席停止の懲罰を受けたことがあるのに、毫も改悛の情なく法規を無視し、右言動に出で議会の秩序を乱し、その後においてもなお議会の運営を誤り村政の進展を妨げて來たものである。從つて原告の本訴請求は理由がないので棄却せられるべきであると陳述した。(立証省略)
三、理 由
原告が被告村議会の議員で且つ議長であつたこと、昭和二十四年七月二十五日の村議会において原告を懲罰に付する緊急動議を取り上げ除名の議決をしたこと及び村議会において原告を懲罰に付した事由が、昭和二十三年十一月二十二日の村議会における被告挙示の前記(五)議長自ら村長不信任の動議を提出し且つ村長に対し退場を求めた行爲(原告挙示の前記(五)の事実に該当する)、昭和二十四年一月二十八日の村議会における被告挙示の(一)一議員に退場を命じた行爲(原告挙示の(一)の事実)、昭和二十四年三月二十六日の村議会第一、二日目における被告挙示の(二)村長提出議案の審議を延ばし散会した行爲(原告挙示の(二)の事実)、同(三)傍聽席にいた警官に対し一議員の退場方を求めた行爲(原告挙示の(三)中(2)の事実)、同(四)原告の一身上に関する議事につき退場しなかつた行爲(同(三)中(3)(4)の事実)。並びに村議会外における原告の行動、すなわち、被告挙示の(六)原告が議長の名を以つて木幡村選挙管理委員に対し「村長の公職被選挙権なき決定申請書」を提出した行爲(原告挙示の(六)の事実)に関するものであることは、当事者間に爭がない。
そうすると、被告は、昭和二十四年七月二十五日開会の被告議会で、第一、それより前の被告議会の会議中の原告の行爲((一)乃至(五))に対し、第二、会議外の原告の行爲((六))に対し、懲罰を科したことになるが、それは、いずれも違法といわなければならない。何となれば、自治法第百三十五條所定の懲罰は自治法及び会議規則の完全な運用を期するための必要に基き、会議の秩序保持のため必要ある限度において、市町村議会自身が自治的に行うもので、議員が会議に関し議場においてなした非行に対し懲罰を加うることを本体とし、從つて議員の違法行爲が会議の円滑なる執行を阻害する場合、これらの懲罰を科し得るは当該会議中に止まり、先きの会議中の非行に対し次の会期において懲罰を科するが如きは法の認容しないところであるからである。
この見解は、次のことからも理由づけられる。すなわち国会法第百二十一條第三項が、懲罰の動議は、事犯があつた日から三日以内にこれを提出しなければならないと規定しているのは、懲罰事犯を長く不確定の状態に置くことを避け、当該会議中の事犯に対しては、該会期中に限つて懲罰を科し得るものとした趣旨と考えられる。地方自治法には、国会法の右法條に該当する規定がないけれども、それは、国会の会期が百五十日の長期であるのに反し、普通地方公共団体の議会、ことに町村議会の会期は、多くは三日以内という実情であるから、地方自治法に右のような規定を設ける必要がないからであり、規定がなくとも、前の議会の会期中における事犯に対し後の会期において懲罰を科することのできないのは、国会の場合と同一に解すべきであるからである。
また地方自治法及び被告議会会議規則(乙第七号証)第五十二條乃至第五十五條、第五十六條第一項第一、二号、第四号の規定によれば被告議会は、会議中の議員の非行に対して議員に懲罰を科し得るのみであつて、(但し地方自治法第百三十七條及び前記会議規則第五十六條第一項第三号の場合を除く。)議会外における議員の行爲につき、議員に懲罰を科し得ないものであることが明らかである。
從つて、被告議会が、前記(一)乃至六の事由によつて、原告を除名する旨の議決をしたのは違法である。
被告は、答弁の(七)に記載した事実すなわち昭和二十四年七月二十五日の会議における原告の言動のみでも、充分懲罰に値するものであると主張するが、乙第六号証の三その他被告の全立証によるも、右事由によつて、本件懲罰を科したものと認めることはできない。
以上の理由により、被告村議会が原告を除名処分に付したのは違法であるから、被告の挙示する各懲罰事由につき、(但し(七)を除く。)一々その当否を判断するまでもなく、除名議決の取消を求める原告の請求を認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九條を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 斉藤規矩三 黒江清 福間佐昭)