福島地方裁判所 昭和25年(行)5号 判決
原告 原理左衛門
被告 太田村農業委員会・福島県農業委員会
一、主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
二、事 実
原告訴訟代理人は、被告等は、被告太田村農業委員会が昭和二十三年十一月一日別紙物件目録記載の農地につき樹立公告した買収計画の無効であることを確認せよ。訴訟費用は被告等の負担とする。との判決を求め、その請求の原因として、別紙物件目録記載の農地は原告所有の小作地であつたが、被告太田村農業委員会(以下村農委と略称する。)は原告の弟義男所有の農地を原告所有の農地とみなした結果、自作農創設特別措置法(以下措置法と略称する。)第三条第一項第三号に規定する法定の保有面積を超過するとの理由で、これにつき買収計画を樹立公告した。そこで原告は昭和二十三年十一月十日被告村農委に対し異議の申立をしたが同月二十日棄却されたので、同年十二月九日被告福島県農業委員会(以下県農委と略称する。)に対し訴願したところ、翌二十四年八月十日棄却の裁決を受けた。しかし義男は原告の同居の親族ではないから、義男所有の農地を原告所有の農地とみなすべきではなく、従つて原告の所有農地は法定の保有面積を超過しないから、被告村農委の樹立公告した買収計画は取消をまつまでもなく当然無効である。また被告村農委が、原告の異議申立の審議に際し、委員の意見が一致していなかつたのにかゝわらず、投票によらないで全員異議ないものとして異議申立を棄却したこと、被告県農委が、措置法第七条第五項の規定に違背し、原告の訴願を受理して八箇月後に裁決したことはいずれも違法であり、右の違法もまた買収計画を無効にするものである。よつて被告等に対し本件買収計画の無効確認を求めるため本訴に及んだとのべた。(証拠省略)
被告等指定代理人及び訴訟代理人は主文同旨の判決を求め、答弁として被告村農委が本件農地につき、原告主張の事由に基き買収計画を樹立公告したこと、原告がその主張の日に異議訴願の手続をとつたが、いずれもその主張の日に棄却されたことは認めるがその余の事実は否認する。原告の弟義男は原告と同居していたから、義男所有の農地は原告所有の農地とみなすべきであり、そうすると原告所有の農地は本件農地の面積だけ、太田村における法定の保有面積を超過することになる。従つて被告村農委が本件農地につき樹立公告した買収計画は正当であり、仮に義男が原告の同居の親族でないとしても、取り消し得べきかしがあるにすぎない。また措置法第七条第五項の規定は訓示規定にすぎないからこれに違背しても裁決に影響はない。よつて原告の請求は失当であるとのべた。(証拠省略)
三、理 由
別紙物件目録記載の農地が原告所有の小作地であつたところ、被告村農委が原告の弟義男所有の農地を原告所有の農地とみなした結果、原告所有の農地が、措置法第三条第一項第三号に規定する法定の保有面積を超過するとの理由で、右農地につき買収計画を樹立公告したこと、原告が右計画につき昭和二十三年十一月十日被告村農委に対し異議の申立をしたが同月二十日棄却され、同年十二月九日被告県農委に訴願したところ、昭和二十四年八月十日棄却の裁決を受けたことは当事者間に争いがなく、甲第五、六号証によれば買収計画は昭和二十年十一月二十三日現在の事実に基き定められたものと認められる。原告は、義男は原告の同居の親族ではないと主張し、甲第九、十号証及び証人原義男の証言によると、義男は昭和十七年三月から昭和二十一年三月三十一日まで伊達郡柱沢村の青年学校に教員として勤務し、その間柱沢村の宮口俊之助方に居住していたことが認められる。乙第一、第二号証の記載は右認定を妨げるものではなく他に右認定を覆すに足りる証拠はない。従つて昭和二十年十一月二十三日当時義男と原告は措置法第四条の規定にいう同居の親族の関係にはなかつたものというべきであるから、義男所有の農地を原告所有の農地とみなして定められた買収計画は違法を免れない。しかし他方乙第二号証及び前記証言によると、義男は主要食糧の配給を受けず、原告において、義男を同一世帯に属するものとして保有していた保有米を分けて貰つており、配給物資についても原告と同一世帯として扱われていたことが認められるから、このような事情の下では被告村農委が原告と義男を同居の親族とみて樹立公告した買収計画は取り消し得べきかしがあるに止まり、当然無効のものではないというべきである。
次に、原告は、被告村農委が原告の異議申立を審議した際、委員の意見が分れていたのに、全員異議ないものとして、原告の異議申立を棄却したと主張するが、委員の意見が分れていたことを認めるに足りる証拠はなく、仮に、原告主張のような事実があつたとしても、右事実は、本件買収計画を無効ならしめるものではない。また措置法第七条第五項の規定は訓示規定で、必ずその期間内に裁決すべきことを命じたものではないと解すべきである。従つて原告の主張はいずれも理由がないから、被告等に対し本件買収計画の無効確認を求める原告の請求は失当として棄却すべきものとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 斎藤規矩三 菅家要 福間佐昭)
(目録省略)