福島地方裁判所 昭和49年(行ウ)15号 判決 1977年9月26日
原告 株式会社横田商店
被告 郡山税務署長
訴訟代理人 山田巌 小川誠 鈴木光幸 山田昇 ほか三名
主文
本件訴えを却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告が原告に対し昭和四二年一〇月二六日付でなした原告の昭和三七年四月一日から昭和三八年三月三一日までの事業年度以降の青色申告書提出承認の取消処分を取消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二 被告の申立
主文と同旨。
第二当事者の主張
一 請求原因
1 被告は原告に対し昭和四二年一〇月二六日付で昭和三七年四月一日から昭和三八年三月三一日までの事業年度(以上昭和三七事業年度という。)以降の青色申告書提出承認を取消す旨の決定(以下本件取消処分という。)をし、その通知書は翌二七日原告に到達した。
2 しかしながら本件取消処分には次の違法がある。即ち、
(一) 本件取消処分の通知書には取消理由として「法人税法一二七条一項三号に掲げる事実に該当すること」との記載があるにすぎず、右記載は法人税法一二七条二項の法意に適合しない。
(二) 原告には法人税法一二七条一項三号所定の事由がない。
よつて原告は本件取消処分の取消を求める。
二1 本案前の申立の理由
本件訴えは次のとおり不適法であつて却下を免れない。
(一) 原告の本訴請求は昭和四五年法律第八号による改正前の国税通則法(以下単に国税通則法という。)七六条一項所定の異議申立及び同法七九条三項所定の審査請求を経由していないから同法八七条一項に違反する。
(二) 本件訴えは四九年一二月一九日提起されたもので、すでに行政事件訴訟法一四条一項所定の出訴期間を徒過していることが明らかである。
(三) 原告主張の後記三の2の(一)の事実は認めるが、同(二)の主張は争う。
2 請求原因に対する認否
(一) 請求原因1の事実は認める。
(二) 同2のうち(一)の事実は認め、その余の事実は争う。
三 本案前の申立に対する原告の主張
1 被告主張の事実のうち原告が本件取消処分につき異議申立及び審査請求をしなかったこと、本件訴えが本件取消処分の日から三箇月を経過した後提起されたことは認める。
2 しかしながら本件訴えは以下の理由により適法である。即ち、
(一) 被告は本件取消処分後原告に対し、所得を隠ぺいしたとして所得を推計し、別表記載のとおり法人税更正決定、重加算税賦課決定等(以下単に更正処分という)をなしたが、原告は更正処分を不服として別表記載のとおり異議申立、審査請求を経た後その取消を求めて訴訟を提起した(当庁昭和四五年(行ウ)第四号法人税更正処分取消等請求事件)。
(二) ところで更正処分は本件取消処分を前提としてなされ、その理由も実質的に両者同一であつて密接な関連を有するから、前者について適法に訴えが提起されている以上、後者について不服申立の手続を経ていなくともこれを経ないことにつき正当な事由があるというべく、また出訴期間の尊守は不要に帰すると解すべきである。
よつて本件訴えにはなんらの違法はない。
第三証拠<省略>
理由
一 本案前の申立について
1 被告が昭和四二年一〇月二六日本件取消処分をなしたこと、被告が本件取消処分後原告に対し、その所得を隠ぺいしたとして所得を推計し、別表記載のとおり法人税更正決定、重加算税賦課決定等の更正処分をしたところ、更正処分に対してのみ原告から同表記載のとおり不服の申立がなされたこと、原告が昭和四五年二月二六日更正処分の取消を求めて当裁判所に訴訟を提起したこと、以上の各事実はいずれも当事者間に争いがなく、そして、原告が昭和四九年一二月一九日本件取消処分の取消請求の訴を提起したことは訴訟上明らかである。
2 ところで原告は本件取消処分と密接に関連する更正処分につき適法に訴えが提起されている以上、本件訴えについて不服申立前置及び出訴期間の遵守に欠けるところがない旨主張する。
なるほど更正処分は被告も自認するとおり本件取消処分を前提とし課税標準を構成する原告の所得を推計してなされており、また本件取消処分の要件である「当該法人の備え付ける帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装して記載する」事実の有無と更正処分における課税標準を構成する所得の有無とは内容的に重複する点がないわけではなく、両処分が関連していることは原告主張のとおりである。
しかしながら本件取消処分と更正処分とはそれぞれその目的、要件、効果を異にし、両者ともそれ自体で完結的な効果を発生する別個独立の処分であるから、その個々の行為について独立の不服申立ての手続を経るべく、たまたま法人税法一二七条一項三号の場合において両者が内容的に相関連することの故をもつて後者に対する不服申立前置の遵守が同時に当然前者に対する不服申立不経由についての正当事由になるものとは到底解し得ず、これと見解を異にする原告の主張は採用できない。
3 そうすると、他に不服申立不経由を正当とする事由の認められない本件訴えは国税通則法八七条一項に反するといわざるを得ない。
二 よつて本件訴えを不適法として却下することとし、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 佐藤貞二 石井義明 金野俊男)
別表
事業年度
経過
年月日
所得金額(円)
法人税額(円)
重加算税(円)
昭和37事業年度
更正等
昭38、11、25付
0
―
―
再更正等
昭42、10、26付
10,204,145
4,135,700
1,436,700
異議申立
昭42、11、25
0
―
―
右同決定
昭43、6、1付
7,495,291
3,015,300
1,044,400
審査請求
昭43、7、18
0
―
―
右同裁決
昭44、10、31
棄却
7,495,291
3,015,300
1,044,400
右裁決通知
昭44、11、20付
昭和38事業年度
更正等
昭43、6、20付
5,368,203
2,088,200
730,800
異議申立
昭43、7、18
0
―
―
みなす
審査請求
昭43、9、27
右同裁決
昭44、10、31付
棄却
5,368,203
2,088,200
730,800
右裁決通知
昭44、11、20付
昭和39事業年度
更正等
昭42、10、26付
37,594,848
15,044,600
5,256,600
異議申立
昭42、11、25
0
―
―
右同決定
昭43、6、1付
17,177,176
6,804,000
2,381,400
審査請求
昭43、7、18
0
―
―
右同裁決
昭44、10、31
棄却
17,177,176
6,804,000
2,381,400
右裁決通知
昭44、11、20付
昭和40事業年度
更正等
昭42、10、26付
825,379
255,700
89,200
異議申立
昭42、11、25
△164,430
―
―
右同決定
昭43、6、1付
棄却
825,379
255,700
89,200
再更正等
昭43、6、20付
3,275,878
1,031,700
360,800
右異議申立
昭43、7、18
―
―
―
審査請求
43、6、1付
対する
昭43、7、18
―
―
―
みなす
審査請求
43、7、18に
対する
昭43、9、28
―
―
―
審査裁決
昭44、10、31
棄却
3,275,878
1,031,700
360,800
右裁決通知
昭44、11、20
昭和41事業年度
更正等
昭42、10、26付
1,537,265
430,300
150,500
異議申立
昭42、11、25
△719,133
―
―
右同決定
昭43、6、1付
棄却
1,537,265
430,300
150,500
再更正等
昭43、6、20
3,328,678
1,025,200
358,400
右異議申立
昭43、7、18
―
―
―
審査請求
43、6、1付
に対する
昭43、7、18
―
―
―
みなす
審査請求
43、7、18に
対する
昭43、9、28
―
―
―
審査裁決
昭44、10、31
棄却
3,328,678
1,025,200
358,400
右裁決通知
昭44、11、20付