福島地方裁判所 昭和63年(わ)115号 判決 1988年9月26日
本店所在地
福島県会津若松市一箕町大字鶴賀字船ケ森東四七〇番地
商号
株式会社 福島中央鶏卵市場
代表者
佐藤憲維
本籍
福島県会津若松市鶴賀町一八〇番地
住居
同市鶴賀町一〇番二号
会社役員
室野井紀二
昭和一五年六月六日生
右両名に対する各法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官北岡英男出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人株式会社福島中央鶏卵市場を罰金一、三〇〇万円に、被告人室野井紀二を懲役一年にそれぞれ処する。
被告人室野井紀二に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人株式会社福島中央鶏卵市場(以下、被告人会社という。)は、福島県会津若松市一箕町大字鶴賀字船ケ森東四七〇番地に本店を置き、鶏卵の集荷販売等の事業を営むもの、被告人室野井紀二は、昭和四三年七月一日から同六二年二月一一日までの間、被告人会社の代表取締役として被告人会社の業務全般を統括していたものであるが、被告人室野井は、被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空仕入れを計上するなどの方法により所得を秘匿したうえ、
第一 昭和五八年七月一日から同五九年六月三〇日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が七一〇四万二、五六一円であったのにかかわらず、同五九年八月三一日、同市城前一番八二号所在の所轄会津若松税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一、六六二万二、〇三四円でこれに対する法人税額が六〇九万九、三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により被告人会社の右事業年度における正規の法人税額二、九六四万四、〇〇〇円と右申告税額との差額二、三五四万四、七〇〇円を免れ、
第二 昭和五九年七月一日から同六〇年六月三〇日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が五、〇三七万〇、八〇八円であったのにかかわらず、同六〇年八月三一日、前記会津若松税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一、二四二万五、三三〇円でこれに対する法人税額が四二八万九、三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により被告人会社の右事業年度における正規の法人税額二、〇六九万四、二〇〇円と右申告税額との差額一、六四〇万四、九〇〇円を免れ、
第三 昭和六〇年七月一日から同六一年六月三〇日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が二、六三八万四、三九〇円であったのにかかわらず、同六一年九月一日、前記会津若松税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一、三二一万四、一九五円でこれに対する法人税額が四四一万二、七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により被告人会社の右事業年度における正規の法人税額一、〇〇九万九、六〇〇円と右申告税額との差額五六八万六、九〇〇円を免れ、
たものである。
(証拠の標目)
判示事実全部について
一 被告人室野井の当公判廷における供述
判示冒頭の事実について
一 被告人室野井に対する大蔵事務官の昭和六一年一二月一五日付(二通)及び同月一六日付(一)各質問てん末書
一 福島地方法務局若松支局登記官作成の商業登記簿謄本
判示第一ないし第三の事実について
一 被告人室野井の検察官に対する供述調書二通
一 被告人室野井に対する大蔵事務官の昭和六一年一一月二八日付、同年一二月一六日付(二)、昭和六二年一月二九日付、同年四月九日付、同年五月一三日付及び同月一四日付各質問てん末書
一 草刈孝次の検察官に対する供述調書
一 草刈孝次に対する大蔵事務官の質問てん末書
一 検察事務官作成の電話聴取書
一 大蔵事務官作成の脱税額計算説明資料と題する書面
一 大蔵事務官作成の架空仕入調査書
一 大蔵事務官作成の期末棚卸高調査書
一 大蔵事務官作成の旅費交通費調査書
一 大蔵事務官作成の交際費調査書
一 大蔵事務官作成の修繕費調査書
一 大蔵事務官作成の消耗品費調査書
一 大蔵事務官作成の簿外預金等調査書
一 大蔵事務官作成の租税公課調査書
一 大蔵事務官作成の支払手数料調査書
一 大蔵事務官作成の交際費損金不算入額調査書
一 大蔵事務官作成の減価償却超過額調査書
一 大蔵事務官作成の事業税認定損調査書
一 被告人室野井作成の「鶏卵、米穀等の期末棚卸高について」、「旅費交通費について」及び「簿外接待交際費について」と記載のある各上申書
一 草刈孝次作成の上申書
判示第一及び第二の事実について
一 被告人室野井に対する大蔵事務官の昭和六二年三月二七日付質問てん末書
判示第一及び第三の事実について
一 大蔵事務官作成の簿外売上等調査書
判示第一の事実について
一 被告人室野井に対する大蔵事務官の昭和六二年三月一〇日付質問てん末書(二通)
一 大蔵事務官作成の雑費調査書
一 大蔵事務官作成の固定資産売却益調査書
一 大蔵事務官作成の車輌費調査書(その他)
一 被告人会社作成の昭和五九年八月三一日付確定申告書謄本
判示第二及び第三の事実について
一 大蔵事務官作成の期首棚卸高調査書
判示第二の事実について
一 被告人室野井に対する大蔵事務官の昭和六二年四月七日付及び同月二三日付各質問てん末書
一 大蔵事務官作成の車輌費調査書
一 大蔵事務官作成の雑収入調査書
一 大蔵事務官作成の固定資産売却損調査書
一 被告人会社作成の昭和六〇年八月三一日付確定申告書謄本
判示第三の事実について
一 被告人室野井に対する大蔵事務官の昭和六二年三月二六日付(二通)及び同年四月八日付各質問てん末書
一 笹森勇吉の検察官に対する供述調書
一 笹森勇吉に対する大蔵事務官の質問てん末書
一 大蔵事務官作成の役員報酬調査書
一 大蔵事務官作成の給与手当調査書
一 大蔵事務官作成の役員賞与損金不算入額調査書
一 被告人会社作成の昭和六一年九月一日付確定申告書謄本
一 被告人室野井作成の「簿外売上について」と記載のある上申書
一 笹森勇吉作成の上申書
(法令の適用)
被告人室野井の判示各所為は、いずれも法人税法一五九条一項に該当するところ、各所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人室野井を懲役一年に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。
被告人室野井の判示各所為は、いずれも被告人会社の業務に関しなされたものであるから、被告人会社については法人税法一六四条一項により同法一五九条一項の罰金刑にそれぞれ処すべきところ、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告人会社を罰金一、三〇〇万円に処することとする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 芥川具正)