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福島地方裁判所いわき支部 昭和49年(ヨ)52号 決定 1975年3月07日

申請人 吉田通

右訴訟代理人弁護士 折原俊克

被申請人 常磐生コン株式会社

右代表者代表取締役 根本明

右訴訟代理人弁護士 市井茂

右同 市井勝昭

主文

一、申請人が被申請人に対し労働契約上の権利を有する地位にあることを仮に定める。

一、被申請人は、申請人に対し、金二七万〇、一六八円および昭和五〇年三月以降一ヶ月金六万七、五四二円を本案判決確定に至るまで毎月二八日限りで、仮に支払え。

理由

(本件申請の趣旨および申請の理由)

第一、申請の趣旨

主文同旨

第二、申請の理由

一、(一)、被申請人(以下、会社という。)は生コンクリートの製造並びに販売、セメント二次製品の製造並びに販売を業とする会社で資本金三、〇〇〇万円(発行済)、従業員約八〇名を擁し、常磐湯本および郡山市に工場をそれぞれ有し、申請人の勤務する本社工場は約四六名で構成されている。

(二)、申請人は会社従業員として昭和四九年七月一日試用期間三ヶ月の試用採用をされ、採用時から会社本社工場試験係(申請人は勿来工業高校機械科卒)として勤務しており、会社の賃金支給日は毎月二八日であるが、解雇当時の平均賃金は月額六万七、五四二円である。

(三)、会社は申請人に対し、昭和四九年九月一六日、本社工場次長坂本某を通じて同日付文書により昭和四九年一〇月一七日付を仏って解雇する旨の意思表示(以下、本件解雇という。)をした。

二、しかし、申請人に対する本件解雇は次の理由によって無効である。

(一)、(解雇権の濫用)

会社の申請人に対する本件解雇は以下に述べる如く解雇権の濫用であるから無効である。

会社は本件解雇後、解雇事由として勤務成績不良で就業規則四三条(4)号に該当し人員整理(会社の合理化)の必要性からいっても当然であるとする。しかし、勤務成績不良の点についてであるが、まず遅刻について述べるに、一二回のうち七月二日のものは実際は遅刻したものではなく、その余の一一回の遅刻も極めて軽微で天候、交通事情で思わぬくるいが生じた結果のものであり止むを得ない事由による遅刻であり、それらについて申請人は何等会社の上司から注意を受けておらず、又、欠勤も会社の承認を受けた代休(日曜出勤の振替)四日であり真面目に会社の職務をしており、勤務成績不良として解雇を受けるいわれはなく本件解雇は解雇権の濫用により無効である。なお、人員整理(会社の合理化)の点についてであるが、労働者に重大な脅威を与える人員整理は試用期間中の従業員であると否とに拘らず、一定の合理的基準によりなされるのが通常であり、会社が何等合理的基準を示さず又会社が切迫した状況にないのに申請人を指名解雇したのは人員整理(会社の合理化)に単に藉口したものであり、本件解雇はこの点からいっても解雇権の濫用により無効である。

(二)、(不当労働行為)

仮に、本件解雇が解雇権の濫用により無効でないにしても、会社には同社従業員で組織された常磐生コン労働組合(以下、労働組合という。)があり、労働組合と会社との間にはユニオン・ショップ協定があり、申請人は採用の日より三ヶ月(昭和四九年一〇月一日)を経過すると労働組合の組合員に当然なり得る資格と期待を有していたところ、本件解雇は会社が申請人の昭和四九年七月七日施行の参議院選挙に関する発言、核実験禁止の署名活動、日本共産党発行の機関紙「赤旗」の購読等その他日頃の言動を会社にとって好ましくないと嫌悪して申請人の労働組合への加入を嫌いなされたものであるから、本件解雇は労働組合法七条一号に該当し不当労働行為であり無効である。

(三)、(公序良俗違反)

仮に、本件解雇が不当労働行為でないにしても、前記の如く本件解雇は会社が申請人の思想信条を嫌悪してなしたものであるから労働基準法第三条、民法九〇条に違背し公序良俗違反により無効である。

(四)、(就業規則に定める解雇基準違反)

仮に、本件解雇が公序良俗に違反せず無効でないとしても、会社は本件解雇の際何等具体的解雇事由を示さず、単に「従業員として不適格だから」と述べたのみであるから、解雇の正当な理由を明示したものとはいえず、会社の就業規則四三条、労働基準法施行規則五条に違反し、本件解雇は無効である。

三、(保全の必要性および結語)

よって、申請人は本訴提起の準備中であるが、申請人は賃金を唯一の生活の資とする労働者で、本件解雇により唯一の収入を奪われ、その生活が困難となり破綻に瀕しているので、申請の趣旨のとおりの裁判を求めるため本申請に及んだ。

(当裁判所の判断)

第一、会社が生コンクリートの製造並びに販売を業とし、資本金三、〇〇〇万円(発行済)で常磐湯本および郡山市に工場を有すること、申請の理由一、(二)および(三)の各事実、申請人に遅刻が一二回あること、申請人が公休一日を中に代休四日を連続してとったことおよび当該ユニオン・ショップ協定が存在することは当事者間に争いがない。

第二、通常解雇事由を定めた就業規則四三条が存在し、会社が当該四三条(4)号に基づき申請人を解雇したことは当事者間に争いがないが、申請人は会社が当該条号を適用して申請人を解雇することは、まず第一に、解雇権の濫用に当り無効であると主張するので、まず解雇権の濫用について検討する。

一、(試用期間中の申請人の法的地位)

申請人は正規の従業員でなく試用期間中の労働者であるので、まずその法的地位につき考察するに、いわゆる試用期間とは試用者として雇用された従業員の作業能力・職業能力を現場で試し、その正規の従業員としての適格性を判断するためにもうけられた実験期間であるが、ここに試用とは試用期間中に従業員として適格性を有しないと判定され本採用を拒否されることを解除条件とする期間の定めのない雇用契約であると解するのが相当であり、よって、試用期間中の労働関係は正規の従業員のそれの如く確定的でないにしても、実質は正規の従業員と同じく取り扱われなくてはならない。労働基準法が二一条本文において、原則として使用者が労働者を解雇しようとする場合は少くとも三〇日前に解雇の予告をしなくてはならなぬとする同法二〇条一項の規定を「左の各号の一に該当する労働者については適用しない」と定め、四号において試用期間中の者を掲げているものの、同法二一条但書において、一四日を超えて引き続き使用されている試用期間中の者を除外し、一四日以内であれば認められる使用者からの一方的解雇を許容していないことは前記解釈を裏付けるものである。つまり、それは同法が雇用関係安定の理念に立脚し試用従業員をその労働関係の安易な解消から保護すべきく試用期間が一四日を超えた場合は解雇に関する限り試用従業員も正規の従業員と評価していることを物語るものである。

ただ、契約自由の原則は試用契約にも適用があり一概に直ちにその旨断定できないので、本件におけるその法的性質について検討するに、≪証拠省略≫を綜合すると、本採用前後を通じその賃金作業等差異ないことが一応認められ、かかる事実からすると、本件試用契約も前記の如く申請人が従業員として不適格と判定されることを解除条件とする雇用契約であると解するが相当であり、申請人は会社の正規の従業員と同じ法的地位にあるものといわなくてはならなず、試用期間中の従業員である故をもって安易な解雇を許すものではなく、申請人の従業員としての適格性を疑わしめる合理的根拠がなくてはならない。

二、≪証拠省略≫を綜合すると一応次の事実が認められる。

(一)、申請人の一二回の遅刻のうち、一分のもの七回、二分のもの一回、四分のもの二回、五分のもの一回であり、雇刻時間不明なもの一回(九月二日であるが、出勤表が押されていないことから出勤表からはどの程度遅刻しかわからないものの、≪証拠省略≫によれば最大限でも五分位であると一応認められる。又、各疎明資料から一応認められる申請人の出勤状況からすればその遅刻は五分以内であろうことが推認される。)であること、七月二日は出勤表によれば五分の遅刻となっているが、これは当日申請人が会社から出勤表を押すよう事前に知らされておらず、入社後はじめて職場において同僚から出勤表を押さなくてはならないことを知らされ、実際は八時前に出社していたにも拘らず、出勤表を押すべく該所にいったため記録上は五分の遅刻となったものであること、又、その他の遅刻は決して故意になされたものではなく、申請人の通勤道路である国道六号線が偶々その時交通が普段より渋滞していたため、通勤用のバイクの速度も出せず、又迂回路を通って遠回りしたことと、日によっては雨に降られたため通勤時間が普段よりかかってしまったことに原因すること、会社は申請人の遅刻に関して一度も注意を与えておらず、賃金カットもせず、又、始末書等の提出を求め申請人に自戒を求めていないこと。

(二)、欠勤は八月二三日、二四日、二六日、二七日と四日あるものの、いずれも会社に従来同社でなされているように口頭で申出をなし会社の承認を受けて代休(日曜出勤の振替)として休暇をとつており、その休暇については同僚達からも休んでは困る旨の何等の抗議も受けていないこと、無断欠勤は一日もないこと。

(三)、会社の生コン需要等業務成績は一般経済界の金融引締め総需要抑制の影響で必ずしもかんばしくないこと、会社は出荷量増大を計るべく苦慮していること。

三、そこで、前記認定各事実を基礎として、申請人が就業規則四三条(4)号に該当するか否かを検討する。

前記認定の如く、申請人の一二回の遅刻のうち、一回は実質遅刻といえず、他の一一回の遅刻に関しても遅刻時間は最大限で五分(一回)であり、その原因も交通事情、天候等にあり、その遅刻の態様、情状は重大悪質とはいえず、それらが申請人の怠惰に基因するものとはいえないものであり、又、欠勤も無断欠勤は一度もなく、代休の四日も事前に会社の承認を受けているものであり、かかる遅刻代休が有機的組織体たる会社の他の従業員に直截的影響を与え職場の秩序を乱したとは評価できないものであること等を綜合して判断すると、申請人は解雇契約の本旨に従った十分な労務の提供がなされておらない勤務成績不良者であるとは判定しえない。

労働者が会社からの収入によりその生計を維持している場合に解雇されその職場から放逐されることはその生活の資金源を奪われ、労働者に生活の危機をもたらすものであるから、労働者の生存権への不必要な侵害を避けるべく労働者の解雇は特に慎重を極めねばならず、勤務成績不良の態様、情状が重大且悪質であり、解雇以外に処分が考えられず、その生活の資を奪い失わしめても止むを得ないと社会通念上是認される客観的な妥当性を有していなくてはならず、就業規則適用のうえでは当然かかる点を考慮し慎重になされるべきであり、そこに客観的に是認される妥当性を欠く時は解雇権の濫用というべきであるところ、本件申請人について考察するに、確かに申請人には交通渋滞、天候等も考慮し少し早く家を出れば遅刻は免れえたものであり、それは現今の経済事情下において甘い人事管理をなくそうとする会社に責任感欠如と映ずるは当然であり、各疎明資料によれば他の従業員に比較して遅刻が多く、労働者として申請人には反省すべき点が存在するものの、前記の如くその態様、情状、他に与えた影響等は重大且悪質とはいえず、又、各疎明資料を検討するも、申請人に対し解雇以外の軽い処分(例えば、始末書提出。なお、前記認定の如く始末書提出の請求はおろか注意さえも会社はしていない。)では到底改善される見込みがないというが如き特別の事情も認められず、解雇処分をもって臨むに値する程度の従業員としての不適格性が存するとは判定できず、そこに客観的妥当性は存在せず、本件解雇は解雇権の行使がその限度を超えたというべきであり、解雇権の濫用にあたり無効といわざるをえない。

なお、会社としては経営難に対処した時、できる丈余剰労働力を削減し利潤を確保すべく成績不良者の整理解雇(人員整理)の方向に向うは当然であろうが、矢張り、前記解雇の労働者に与える影響から、その場合も合理的理由を有しないものは許されないのであり、そこには企業の全部又は一部閉鎖、経済的危機打開策としての解雇等会社にとって人員整理をせざるをえない等会社が切迫した状況にあるという客観的合理的外部的状況が存在し且解雇そのものも合理的基準にもとづく客観的な妥当性を有するものでなくてはならないところ、前記認定の如く一般経済界の不況に伴い会社も業務成績はかんばしくないものの、各疎明資料を検討するも、会社が人員整理をしなくては存立を危くさせられるが如き切迫した状況を呈していることは窺えられず、それは会社が申請人の解雇事由として人員整理を勤務成績不良と併せて掲げたのは成績不良ということが申請人の将来を傷つけかねないことを考慮したという面もある旨答弁していることからも表象されるものであり、又、本件解雇は前記の如く申請人にとってその処分が勤務成績不良といわれる所為との間で均衡性を欠き客観的妥当性を有しておらないことを合わせ考えると、かかる状況下でなされた解雇は決して許されるべきものでなく、人員整理に藉口したものといわざるをえず、本件解雇が無効であることに変りはない。なお、申請人が試用期間中の従業員であっても、正規の従業員として取り扱われなくてはならず、試用期間中の従業員であるからといって安易な解雇が許されないことは前記のとおりである。

よって、申請人のその余の主張は判断するまでもなく、本件解雇は解雇権の濫用により無効である。

第三、なお、会社は仮に本件解雇が無効であったとしても、申請人は昭和四九年一〇月一九日退職に依り厚生年金、失業保険証を受け取った旨の書面に署名捺印しており本件解雇を既に承認しているのであるから、最早本件解雇を争うことは許されず、申請人の主張は何等理由がない旨主張するので判断する。

申請人が昭和四九年一〇月一九日退職に依り厚生年金、失業保険証書を受け取った旨の書面に署名捺印したことは当事者間に争いがないが、各疎明資料、申請人および被申請人代表者審尋の結果を綜合すると、同日午後五時五分前ころ申請人は坂本部長から話があるからと二階の事務所に呼ばれ、「解雇予告したとおり今日限りで終りだから」と申し渡されたが、本件解雇後解雇事由を明確にして欲しい、解雇を撤回して欲しいと会社に再三請求して来ていた申請人は本件解雇にどうしても納得できず、「臨時職員がいるのに、なぜ私を解雇するのか」「人員整理ということではおかしいのではないか」等と同部長に詰問し、同部長は不適格であるからと解雇理由を説明したが、両名の話合は噛み合わないまま時間が過ぎ、五時を過ぎたため、このままでは埓が明かないと思った申請人が給料、年金証書等を受け取り帰ろうとしたところ、そこに同席した横山部長らからそれらを受け取ったというサインが欲しいと何度も求められたことから、申請人は解雇を承認するという気持からでなく何時までも話してもしようがないと考え、サインをしても大したことでないだろうと思いつつ会社で用意しその旨記載してある書面に署名捺印をしたものであるが、その際申請人は自分がサインをしても解雇を承認するものではない旨その場にいた前記坂本部長、高崎課長らに話してその日はその席を立ち帰ったが、他人から当該書面を会社では退職の証拠とするのではないかと指摘され、会社に当該書面を利用されることを危惧した申請人はその日のうちにこれを撤回する旨内容証明郵便で会社に通知を出しており、更に、翌二〇日が日曜日であったため、申請人は翌々日の二一日朝当該書面の返還を会社に請求したことが一応認められる。

そこで、考えるに、前記認定の如き本件解雇後の申請人の行動、当該書面に署名捺印した経緯、事情およびその際の申請人の言動、その後の申請人の言動等から判断すると、申請人が本件解雇を争う意思を放棄して本件解雇を承認したものとは到底いえないから、会社の主張は当を得ないものである。更に、解雇とは会社の一方的な意思表示で効力を発生する、いわゆる形成権の行使であるところ、前記の如く本件解雇は解雇権の濫用により無効なものであるから、無効の解雇を承認しても無効な形成権の行使は決して有効となるものではなく、又、申請人の当該署名捺印は前記認定の如き事情からすれば申請人において後日本件解雇を争わないとの特別の意味を有するものとも解釈できないものであるから、これらの点から考えても会社の主張は失当である。

第四、保全の必要性

≪証拠省略≫を綜合すると、申請人はなんのアルバイトもせず会社から支払われる賃金を唯一の生活の資としていたが、昭和四九年一〇月一八日以降(会社の一ヶ月は二一日から翌月二〇日までで、二〇日締切である。)会社は申請人に対し給与を支払っておらず、現在申請人は一応一週間に一、二度申請人代理人方で仕事の手伝をし日当として金一、〇〇〇円から一、五〇〇円を得るのみで、申請人代理人方にゆかない時は兼業農家たる実家の農業の手伝をしているものであり、会社から得た給与中から母親へ渡していた生活費金二万円も支給できなくなり、家計も圧迫し、不安定な状態下で生活を保っていることが一応認められる。しかも、申請人が同僚の多い旧時の職場に復して自己の好きな当該仕事に従事して働くことを強く希望していることは各疎明資料により明らかであるから、かかる状況に照らすと、右のような無効な解雇によって、被解雇者として取り扱われ、職場に復帰しえないことは申請人にとって著しく顕著な損害であって、且その損害は後日の補償等をもってしては償いえないと一応認められる。従って、申請人の地位保全を図る必要性はこれを背定せざるをえない。

申請人の収入額につき、平均月額が六万七、五四二円であることおよび会社の賃金支払期日が毎月二八日であることは当事者間に争いがなく、≪証拠省略≫によれば、申請人は前記の如く申請人代理人方に一週間に一、二度手伝にゆき日当金一、〇〇〇円から一、五〇〇円を得ていることが一応認められるが、現金収入はこれのみであり、かかる収入は解雇期間中生計を維持するための一時的方便にすぎず、その地位生活が安定しているとはとても判定しがたくかえってこれによる収入は将来極めて不安定なものであり申請人の生活上の不安があると窺われるものであり、申請人の以上の状況を考えると、申請人において賃金支払の仮処分の必要性もまたこれを肯定するのが相当というべきであるところ、その必要性の限度について考えるに、申請人は会社に対し労務の提供をしていないものの、それは会社の労務の受領拒否に基づくものであるから、申請人は会社に対し解雇期間中の全額賃金請求権を有するというべきであるが、しかし一方、労働者が解雇期間中に会社の労務の受領拒否により給付を免れた労働力を他の職に転用して得た収入は、労働者が労務提供債務を免れたことと相当因果関係にあるから、会社は労働者に対し右収入の償還を請求できるとするのが相当であり、民法五三六条二項但書に基づき、労働者が受くべき反対給付たる賃金総額からこれを控除できると解するので本件につき検討するに、申請人は前記認定の如く申請人代理人方へ一週間に一、二度ゆき日当として金一、〇〇〇円から一、五〇〇円を得ているのみであり、当該収入はいわゆるアルバイト的なものといわざるをえないので、民法五三六条二項但書を適用し当該収入を前記賃金から控除すべきは妥当でなく、申請人は会社に対し全額賃金請求権を有するといえる。そこで、会社は申請人に対し昭和四九年一一月以降同五〇年二月まで前記被保全権利たる賃金月額金六万七、五四二円の割合による賃金合計額金二七万〇、一六八円および昭和五〇年三月以降本案判決確定に至るまで毎月二八日限り一ヶ月金六万七、五四二円の賃金を支払う必要性がある。

第五、よって、本件仮処分申請はその理由ありと認めるので、保証を立てさせないで、これを認容することとし、主文のとおり決定する。

(裁判官 古屋紘昭)

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