福島地方裁判所郡山支部 平成16年(ワ)169号 判決 2007年3月16日
主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
被告は,原告に対し,金3201万3900円及びこれに対する平成15年10月22日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,原告が被告に対し,原告居住の建物が火災で焼失したことから,原被告間の保険契約に基づき,建物及び家財についての保険金を請求している事案である。
1 争いのない事実
(1) 原告は,平成14年9月25日,被告(旧商号東京海上火災保険株式会社)との間で,次の保険契約を締結し,保険料4万8960円を支払った。
ア 保険種類 住宅総合
イ 証券番号 **********―0
ウ 保険期間 平成14年9月29日から1年間
エ 保険の目的 建物(木造鋼板葺2階建床面積約182平方メートル,以下「本件物件」という。)及び動産(本件建物内の家財一式)
オ 建物の所在 福島県大沼郡会津高田町字佐布川甲<番地略>
カ 保険金額
建物 200万円
家財 1800万円
(2) 原告は,平成14年12月28日,被告との間で,次の保険契約を追加締結し,保険料5万2200円を支払った。
ア 保険種類 住宅総合
イ 証券番号 **********―0
ウ 保険期間 平成14年12月28日から1年間
エ 保険の目的 (1)の契約に同じ
オ 建物の所在 (1)の契約に同じ
カ 保険金額
建物 2400万円(価格協定につき建物の評価は2600万円)
家財 200万円
(3) 本件建物及び同建物内の動産は,平成15年1月13日,火災(以下「本件火災」という。)によって全焼した。
(4) 原告は,被告に対し,平成15年10月21日付けで,前記(1),(2)記載の各保険契約(以下「本件各保険契約」といい,前記(2)記載の保険契約を「本件追加契約」という。)に基づき,保険金を請求した(被告の受付日は同月24日)。
2 争点
(1) 本件火災は原告の故意によるものであるか否か。
(被告の主張)
本件各保険契約の普通保険約款(以下「本件約款」という。)第2条1項1号には「保険契約者,被保険者またはこれらの者の法定代理人の故意による損害については保険金を支払わない」旨が定められているところ,本件火災は,放火の具体的方法及び実行犯は必ずしも明らかではないが,原告自身の故意行為によって発生したものないしは原告の関与のもとにその意向に基づいて発生したものと推認されるから,被告は保険金支払義務を免責される(故意免責)。
すなわち,本件火災は,平成15年1月13日午前4時15分ころに屋内から出火しているところ,原告の父親である甲野太郎が同日午前3時50分ころに新聞配達のために外出しており,その際,煙や匂い等火災の初期状況に起こる現象に気が付いた形跡はなく,その後火災発生までの約25分の間に火災と分かる状況になっていることは,急激な火源つまり何らかの有炎火源が存在したことになり,その有炎火源が一気に近接可燃物に延焼したとみるべきである。この点,原告は,電気ポットのコードの短絡部分に接するこたつ用敷き布団あるいはワゴンテーブルからずり落ちた紙に発火し,ワゴンテーブルの上の紙,更にはレターケースに入っていた100円ライターに燃え移り,短時間で大きな炎となったものと主張するが,①火災現場にあった電気ポットの底部に溶解物と電気配線様のものが付着した状況が見られたものの,それらの配線は比較的長く原型を保ち,配線が短絡したときに見られる寸断された状況にないなど,本件火災の出火状況が失火としては極めて不自然であり,放火と認めるのが相当であること,②本件追加契約の締結と本件火災の発生が時間的に接近していること,③本件追加契約によって建物の保険金額が200万円から2600万円に,建物家財の合計では2000万円から4600万円に大幅に増額されていること,④本件建物には地元の農協に重複契約があったこと,⑤原告の父親である甲野太郎には過去にも保険金取得歴があること,⑥原告は経済的に困窮していたと評価して差し支えない状況にあったことからすれば,本件火災は放火であり,これは原告自身の故意行為ないしは原告の関与のもとにその意向に基づいて発生したものというべきである。
(原告の主張)
確かに,短絡火花は局部的,瞬間的エネルギーとしては大きいものの,局部的,瞬間的であるがために,周囲の可燃物の温度をその発火温度にまで高めることは少ない。しかし,可燃性気体や熱容量の小さい綿ぼこりなどには十分に着火し得るし,連続的に短絡火花が発生した場合や,接触不良等による局部発熱により絶縁劣化が進行して短絡する場合,例えば,素人修理によるねじり接続部分や頻繁な屈曲により生じた半断線部分等の接触不良により,電線が局部的に発熱し,絶縁劣化から短絡に進行した場合のように既に温度が上昇していたり,炭化(グラファイト化)が進んでいる被覆類には着火する危険がある。そして,本件火災現場では,電気ポットがこたつの傍にあり,そこにはこたつ布団等がかけられ,その周囲には座布団が敷かれていたのであるから,乾燥した小さな綿ぼこりが存在・堆積していた蓋然性は高く,堆積した綿ぼこりに着火して急速に炎が広がったことは十分に考えられる。前記電気ポットは,平成14年春ころから時々電源が入らないことがあり,その際,コードよじれをなおしたりしてみると,スイッチが入っていたので,現状のままで使用していたのであって,接触不良等による局部発熱により絶縁劣化が進行し,短絡したと考えられることから,被覆類に着火し,さらに綿ぼこりに燃え移り,急速に炎が広がったとも考えられる。
(2) 原告の保険金請求について不実表示があったことによって,被告が保険金支払義務を免責されるか否か。
(被告の主張)
本件約款第24条1項は,「保険契約者または被保険者は,保険の目的について損害が生じたことを知ったときは,これを当会社に遅滞なく通知し,かつ,損害見積書に当会社の要求するその他の書類を添えて,損害の発生を通知した日から30日以内に当会社に提出しなければなりません」と規定され,同条4項は,「保険契約者または被保険者が,正当な理由がないのに第1項または第2項の規定に違反したときまたは提出書類につき知っている事実を表示せずもしくは不実の表示をしたときは,当会社は保険金を支払いません」と規定されている。そして,原告は,本件訴状において,焼失した動産は訴状添付の損害額明細書記載の合計2759万5000円の物品であると主張しているところ,そのような罹災品を購入したことの立証は何らなされていないばかりか,画一的な目録自体の記載からも現存した物品を忠実に記載したものとは考えられず,相当部分が事実と相違するものと推認される。なお,原告は,平成17年9月8日付けの第6準備書面で焼失した動産についてその時価額を601万3900円として,請求を減縮したが,これによって一旦なされた不実表示の事実が消滅するものではない。
したがって,原告の以上の行為は,「提出書類につき知っている事実を表示せずもしくは不実の表示をしたとき」に該当し,被告は保険金支払義務を負わない(不実表示免責)。
(原告の主張)
原告は,本件訴訟前に保険金請求をした際,焼失動産の損害額算定について,被告担当者から何ら指導もなかったため,焼失動産の購入価格をもって算定して請求したにすぎない。
(3) 本件各保険契約が公序良俗に違反しているか否か。
(被告の主張)
前述の故意免責及び不実表示免責を基礎付ける事実を総合すると,本件各保険契約は原告が保険金を不正に取得する目的をもって締結されたものであると推認することができ,同各契約は公序良俗に反し無効というべきである。
(原告の主張)
争う。
第3 当裁判所の判断
1 本件火災の出火状況等
(1) 証拠(甲10,11)によれば,次の事実が認められる。
ア 本件火災は平成15年1月13日午前4時15分ころ発生したとされているところ,本件建物の南隣の建物に住んでいた甲野四郎は,同日午前4時25分ころ,本件建物の玄関東側(茶の間)の屋根軒下から炎が吹き出しているのを見て,119番通報をした。会津高田消防署は,同通報によって,本件火災の発生を覚知し,同4時34分ころには現場に臨場し,放水を開始して消火活動にあたったが,本件建物は全焼し,前記甲野四郎の建物も類焼した。
イ 本件建物の本件火災による焼損状況は,次のとおりである。
(ア) 本件建物は,ほぼ中央に位置する玄関を基点として西側の物置及び車庫については屋根や柱がしっかりとした形で残存しており,茶の間の北側にある台所についても,柱,壁,台所の形が残存し,建物北側の屋根,柱,外壁も残存している。
(イ) 台所の東側にある和室は,茶の間側の柱は一部は焼け落ち,一部は焼け細りが見られるが,和室北側の天井や壁はそっくり残存し,本件建物の北側開口部である窓については,噴出した炎によってサッシ戸が割れて落下しているが,屋根,外壁,柱も残存している。
(ウ) 茶の間東側の和室は,茶の間に近い方はトタン屋根も柱も焼きが激しく,トタン屋根も茶の間の上部の部分と一緒に落下して大きな穴が開いた状態であるが,和室の東側に進むにつれて,柱,壁が残存している。
(エ) また,台所東側の和室の屋根や外壁は崩れずに残存しているが,茶の間に接する和室の屋根や外壁は高温にさらされて屋根のトタンが溶解落下し,外壁のセンターサイデングも一部は崩壊し一部は残存しているものの,焼損が激しい。
(オ) 本件建物の2階は激しい焼きにより下階の茶の間とその東の和室に落下し原形をとどめていない。
(カ) 茶の間は焼損の程度が一番激しく,茶の間上部に位置する2階部分は屋根とともに高温により溶解変形し,四隅に立っている柱も外より亀甲模様が大きく炭化が深く,壁体の部分についてはすべて燃え落ちて残存していない。
(2) 以上の状況からすれば,本件火災の出火箇所は茶の間であり,そこを中心に延焼が拡大していったものと認められる。
2 原告の本件火災原因についての主張ないし供述
原告が消防署や被告に報告している本件火災の態様は,次のとおりである。(甲8,10)
(1) 原告は,本件建物で,妻である甲野葉子(以下「葉子」という。),実父母である甲野太郎(以下「太郎」という。)及び甲野花子(以下「花子」という。),長男夫婦である甲野二郎及び甲野桜子,同夫婦の子である甲野三郎及び甲野桃子と同居して暮らしていた。
(2) 太郎は,平成15年1月13日午前3時ころ,起床し,トイレに行ってから茶の間に入り,石油ファンヒーターを点けて着替えをした。そして,起きてきた花子と少し話をした後,電気ポットのお湯でお茶を一杯飲み,たばこを1本吸って,こたつの上にあった瀬戸物の灰皿を使ってたばこの火を消し,午前4時になったのを確認して,玄関の電灯を点け,いつものとおり,バイクで新聞配達に出かけた。他方,花子は,太郎が出かけてから床に戻った。
(3) その後,葉子は,前同日午前4時10分ころ,起床し,太郎が点けた玄関の電灯を消して,床に戻ろうとしたが,茶の間が明るく見えていることから,南側の戸を開けて中を見たところ,茶の間内の北側右手にあった仏壇の周辺ないしその前辺り及びこたつの布団辺りが燃え上がっているのを発見し,大声を出して,花子及び原告を起こした。なお,原告の長男夫婦及びその子らは,前日夕方から妻の実家に泊まりがけで出かけていたため,本件建物にはいなかった。
(4) 原告は,葉子の「おばあちゃん,お父さん火事だ」との叫び声で目を覚まし,すぐに声のする台所(茶の間の北側)に行ったところ,花子が「茶の間が火事だ」と言うので,茶の間の戸を開けて,茶の間に一歩足を踏み入れた。すると,茶の間の仏壇と茶の間の東側にある座敷との境の唐紙戸が炎となって燃え上がっており,部屋中に煙が充満していた。
(5) また,花子は,台所で水道水を使って火を消そうとしたが,水が出ないと言っていたので,原告は,「早く逃げろ」と言って,2人で外に出た。他方,原告は,葉子がどこにいるのか分からなかったので,玄関からもう一度家に入り,「お母さん」と叫んだところ,「そっちには行けない」という声がしたので,「出られるところから出ろ」と言った。葉子は,座敷寄りの縁側から出た。
3 本件追加契約締結についての経緯等について
証拠(甲5,7の1・2,9,13,14,乙7の1ないし3,8,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(1) 原告は,毎年8月25日ころ,同日に保険期間が終了する自動車保険の更新手続をしているところ,平成14年の更新の際,保険代理店の丙山和夫から1か月後に火災保険の更新があるが,建物の保険金額を増額したらどうかと勧められた。原告は,その際には保険金額の増額をしなかったものの,同年暮れころ,丙山と相談して,保険金額の増額を検討し,同時に,同人の勧めに従って,建物については価格協定を付帯し,本件追加契約を締結した。
なお,原告は,同年12月11日,会津若松市を通行中,マンションから炎が吹き出して燃え上がる火事を見て,さらに新聞でその原因がハロゲンヒーターであることを知り,自分の家でも孫たちの洗濯物がストーブの周囲に干されていることから,万一のことが心配になって丙山と相談したとしている。
(2) ところで,本件建物については,太郎が,昭和42年9月に会津農業共済組合との間で保険契約を締結していたところ,昭和50年2月21日午前10時40分ころ,当時の本件建物において,母屋(82.64平方メートル)及び物置小屋(59.50平方メートル)を全焼する火災があり,原因については,太郎は漏電と主張していたが,最終的には同人のたばこの火の不始末とされたものの,同人はその保険金を受領した。
(3) また,本件建物については,太郎において,本件各保険契約とは別に,前記組合との間で,建物について1200万円,家財について500万円の保険に加入しており,本件火災によって,合計1506万9130円の保険金が支払われている。
(4) 他方,原告は,高校卒業後,空調工事関係の会社に委託外注社員として勤めていたが,同社が平成13年3月ころに倒産したことから失業し,その年は新しい職を得ることはできず,平成12年の所得は287万4268円であったのに対し,同13年の所得は128万2051円であった。原告は,平成14年には順次数社で働いたが,同年1月から4月まで勤めた会社での報酬は168万8872円であり,同年6月から8月まで勤めた会社での収入は支払調書がないために不明であり,また,別の会社では150万円の収入があったとされているがこれを基礎付ける支払調書等はない。また,原告は,平成14年10月からは,GEエジソン生命保険株式会社会津若松営業所に勤めていたが,同月から12月までの間の収入は45万円(交通費等は自己負担)であったものの,10月は研修期間であったため約20万円の固定給であったことからすると,11月と12月は平均すると,もっと低い収入である。
なお,原告は,昭和62年ころには東京海上火災保険株式会社の代理店として業務をしていたことがあり,丙山和夫とはそのころに知り合っている。
(5) ところで,本件建物及びその敷地には本件建物の住宅改造資金に充てるため福島協和信用組合との間で締結された平成7年4月27日付け金銭消費貸借契約に基づく600万円の借金のために抵当権が同年6月30日に設定されており,本件建物についての200万円の保険金及び家財の1800万円の保険金について,平成14年10月8日付けで質権設定を受けているところ,平成15年2月5日現在の残高は333万2759円で,毎月4万2821円から4万2977円の返済をしていた(質権は平成15年9月1日消滅している)。
4 本件火災の具体的原因について
(1) 本件火災の具体的出火原因として可能性のある,たばこ,こたつ,ファンヒーター,電気ポット等については,次のとおり,考えられる。(甲10)
(ア) たばこについては,前記2(2)記載のとおり,太郎がこたつの上にあった瀬戸物の灰皿を使って火を消したとしている上,その時間帯と出火した時刻とは極めて近接しており,たばこが出火原因だとした場合,炎が出て燃え上がるまでにはある程度の時間がかかると考えられることと符合しない。
(イ) こたつには,直接電源は入っておらず,温風ヒーターから温風筒を用いて暖房をとっていた状態であり,出火原因とは考えられない。
(ウ) ファンヒーターは,茶の間の西側に設置されていたが,茶の間の西側と東側とを比較すると西側の方が焼きが少なく,ファンヒーターからの出火は考えにくい。
(エ) 電気ポットは,常時コンセントにつないでお湯を沸かしている状態であったところ,焼損した電気コードには短絡痕らしきものがあったものの,警察で鑑識した結果,これが出火原因であるとの判断には至らなかった。
(オ) 他方,出火箇所が家人のいる家の茶の間であり,家人以外の第三者が本件建物に忍び入って放火したとは考えにくい。
(2) ところで,短絡火花による出火の場合,可燃性気体の引火爆発や堆積した綿ぼこりに着火して急速に炎が広がるケースは例外として,通常の着火物では炎の立ち上がりは遅く,たばこの微小火源による出火と類似した形態,すなわち,短絡箇所を中心に出火箇所付近が局部的に深く焼け込む出火の形態を示すことが多いとされている。(甲12)
(3) 以上に認定した事実及び諸事情を総合すると,本件火災の出火箇所は茶の間であり,そこを中心に延焼が拡大していったと認められるものの,太郎が本件建物から出ていった時刻と出火時刻とは近接し,さらにその後すぐに相当程度の炎が出ていたというのであるから,特別の事情がない限り,電気ポットの短絡によって本件火災が生じた可能性は低いというべきである。そして,本件追加契約がなされた日と本件火災の発生日とが比較的近接していること,マンションの火災やその新聞記事を読んだことによって,本件追加契約を締結して保険金額を増額したとの原告の説明には不自然さが残ること,本件建物には本件各保険契約以外の保険契約が締結されていたこと(原告は,このことを,本件追加契約締結の際,丙山和夫に話している旨,平成17年12月16日に行われた本人尋問手続において供述しているが,それまでは,これと異なる事実を主張ないし供述していた),原告の父親である太郎は,以前,本件建物の火災保険金を取得したことがあること,本件火災の出火箇所は茶の間であり,原告やその家族以外の第三者が出入りする可能性は考えにくいことなどの事情を考慮すると,本件追加契約の締結状況や出火原因について,不審な点が多い。
しかしながら,茶の間にはこたつが設置されており,そこには綿ぼこりが少なからずあると考えられるから,具体的な条件次第では,電気ポットのコードの短絡によって火災が生じる可能性がまったくないとまでは言えないし,そもそも,本件火災が何者かによる放火であると認めるに足りる証拠はないと言わざるを得ない。
したがって,結局のところ,本件火災の具体的出火原因は不明であるというほかはなく,原告の故意に基づくものとは認められない。
5 原告の保険金請求における不実表示について
(1) 原告は,本件訴状において,焼失した動産は訴状添付の損害額明細書記載の合計2759万5000円の物品であると主張したが,その後,平成16年9月27日付けの準備書面で,会津農業共済組合からすでに受領していた保険金を考慮して請求の減額をし,更に,平成17年9月8日付けの第6準備書面で焼失した動産についてその時価額を601万3900円として,請求を減縮しているところ,動産についての請求額は当初主張額の4分の1以下であり,少なくとも,当初の動産の内容等についての主張等には不実の記載がされていたというべきである。そして,このような不実表示があったすべての場合に保険会社の保険金支払の義務を免除する効果を認めることは,保険契約の趣旨及び保険契約者等の保護に反する場合があると考えられるが,本件追加契約の締結及び出火原因については,前述のとおり,不審な点が少なくなく,このような事案の場合には,保険契約のモラルリスクを回避するため,本件約款の定めるとおり,保険会社の保険金支払義務を免除する法的効果を認めるのが相当であり,その結果は,原告が保険代理店の仕事をしていたことに照らし,酷ではないというべきである。
(2) したがって,被告は,原告に対し,本件約款24条1項に基づき,本件各保険契約に基づく保険金支払義務を免れると認めるのが相当である。
6 以上によれば,原告の請求は,その余の争点を判断するまでもなく理由がないので,これを棄却し,訴訟費用の負担につき民訴法61条を適用して,主文のとおり,判決する。