福島家庭裁判所会津若松支部 昭和56年(少ハ)2号 決定 1981年12月03日
少年 O・M(昭三八・一〇・六生)
主文
少年を中等少年院に戻して収容する。
理由
一 本件申請の理由
少年は、当庁の昭和五五年六月一九日中等少年院送致決定に基づき盛岡少年院に送致され、昭和五六年四月二〇日一般遵守事項のほか、特別遵守事項として、(イ)帰住先の指定、(ロ)福島保護観察所への出頭日時の指定及び(ハ)人の物を盗らないこと、(ニ)家出・放浪や無断外泊などをしないこと、(ホ)悪友と付合わずよく働くこと、を定められこれを遵守することを誓約して仮退院し、福島保護観察所の保護観察下に入つた。しかるに、
1 昭和五六年六月二三日ごろから七月二三日ごろまで、及び同年九月五日ごろから同月二五日ごろまでの間、正当な理由もなく無為徒食を続け、
2 同年七月六日午後九時ごろ、福島市○○町付近路上において、同月一〇日午前〇時ごろ、同市○○町付近路上において、同月二四日午後八時ごろ同市○○町付近路上において、いずれもバイクを無免許運転し、
3 同月二四日ごろから八月一二日まで帰住先である父の許から家出したまま寄り付かず、同年九月五日からは住込先の○○食堂を無断で飛び出し、友人宅を転々と泊り歩いて一定の住居に居住せず、
4 同年七月一四日ごろから素行不良者と交友し、五回位ラバーセメントを吸入し、また飲酒するなどして不良交友を続け、同年九月二五日ごろからは暴力組織○○分家○○組々員数名と交際し
たもので、以上はいずれも一般遵守事項及び特別遵守事項(ニ)、(ホ)に違反するものである。少年の行状に対し、保護観察官及び担当保護司は少年との接触を強化して指導を続け、同年八月一二日には引致して調査の上、更生保護会への委託、就業先の開拓及び父に対する指導等に当つたが、その後も改善の気ざしは見られなかつたものである。加うるに、父は既に少年の監督に熱意を失い、もはやその保護による少年の更生は期待できず、少年も父に対する親和の情をもつておらず、また別居中の母の保護能力も極めて乏しい現状では、在宅での改善は困難であり、少年が、前回少年院送致となつた犯罪と同種の犯罪を犯すおそれが極めて強い。
以上の次第で少年院に戻して収容するのが相当と思料し、犯罪者予防更生法四三条一項によりこの申請をする。
二 当裁判所の判断
本件記録及び調査・審判の結果によれば、上記申請の理由のとおりの事実が認められるが、以上のような少年の行動・生活態度の根底には鑑別結果に指摘されたとおり、物事を自己中心的に考え、他人の迷惑をも省みず目先の快楽を求めて行動する少年の性格の歪みがあり、それは既に指摘されていたところであるが、中等少年院における矯正教育によつても改善されなかつたといえる。
ところで、少年は前記のとおり昭和五六年九月二五日ごろから暴力団組員と付合い出し、一〇月中旬ごろには同組員と共に恐喝まがいの行為を行つていることが認められるが、少年はそれを客観視することができないでおり、少年の性格からみて名実共に少年が暴力団組織に組み込まれることが大いに懸念される状況にあり、保護観察の経過をも考慮すると今や在宅保護の限界を超えているというべく、少年院に戻して再度強力な矯正教育を施すのが相当であると思料する。
もつとも、少年は既に長期収容を経験していること、仮退院中の非行にさほど悪質なものはみられないこと、少年の性格改善のためには収容・非収容を問わず相当の期間を要すると考えられるが、盛岡少年院における成績経過等に照らし再度の長期間の収容保護は避けるのが望ましいと考えられること、以上の点から執行機関においては少年の収容が長期間に亘らぬよう配慮されたい。(もとより短期処遇を勧告するものではない。)
よつて、犯罪者予防更生法四三条一項、少年審判規則五五条、少年法二四条一項三号、少年審判規則三七条、少年院法二条を適用して、主文のとおり決定する。
(裁判官 中嶋秀二)