福島家庭裁判所白河支部 昭和48年(家)272号 審判 1974年1月21日
申立人 沢本信介(仮名) 外二名
主文
1 本籍福島県石川郡○○町字○○△△△番地筆頭者榊幸之助の除籍中、申立人沢本信介の戸籍記載を全部消除すること、
2 (1)本籍福島県西白河郡○○町大字○○字○○△△番地筆頭者沢本善介の除籍、および(2)本籍同所筆頭者申立人沢本信介の戸籍中、申立人沢本信介の父母欄および続柄欄に「父榊幸之助、母キク」「五男」とあるのを夫夫消除すること、を許可する。
申立人らのその余の申立を棄却する。
理由
1 申立人らは、「(1)本籍福島県西白河郡○○町大字○○字○○△△番地筆頭者申立人沢本信介の戸籍中、同人の父母欄、父母との続柄欄に、「父榊幸之助、母キク、五男」「養父沢本善介、養母なか、養子」とあるを、「父沢本安司、母ミネ、長男」と訂正すること、(2)本籍同県同郡同町大字○○字○○○△△番地筆頭者申立人沢本誠介の戸籍中、同人の父母との続柄欄に「長男」とあるを「二男」と訂正すること、(3)本籍同県同郡同町大字○○字○○○△△番地の△筆頭者申立人沢本洋介の戸籍中、同人の父母との続柄欄に、「二男」とあるを、「三男」と訂正することを許可する。」との審判を求め、その実情は、
申立人沢本信介は沢本善介(同人はもと名を安司と称したが、昭和三一年四月二八日善介と変更したのである)、ミネ夫婦間に長男として生れたのであるが、申立人沢本信介の祖父沢本善介の迷信的意見から、榊幸之助、キク夫婦の五男として出生届出がなされ、更に同夫婦の承諾の下に上記祖父沢本善介、なか夫婦の養子となる縁組がなされたため、本籍福島県西白河郡○○町大字○○字○○△△番地筆頭者申立人沢本信介の戸籍にはその旨の記載がなされるにいたつたものであり、これは錯誤であるから、これを「父沢本安司、母ミネ、長男」と訂正することの許可を求める。
又、申立人沢本誠介、同沢本洋介は夫々沢本善介、ミネ夫婦の二男および三男であるところ、本籍福島県西白河郡○○町大字○○字○○○△△番地筆頭者申立人沢本誠介の戸籍中には、その父母との続柄欄に「長男」と、本籍同県同郡同町大字○○字○○○△△番地の△筆頭者申立人沢本洋介の戸籍中には、その父母との続柄欄に「二男」と夫々記載されてあるので、これらは錯誤であるから夫々「二男」および「三男」と訂正することの許可を求める、というにある。
2 よつて調査するに、
本籍福島県石川郡○○町○○△△△番地筆頭者榊幸之助の除籍中、申立人沢本信介につき父榊幸之助、母キクの五男との旨の記載があり、
本籍同県西白河郡○○町大字○○字○○△△番地筆頭者沢本善介の除籍および本籍同所筆頭者申立人沢本信介の戸籍中には申立人沢本信介の父母欄および続柄欄に「父榊幸之助、母キク、五男」「養父沢本善介、養母なか、養子」との記載があり、
本籍同県同郡○○町大字○○字○○○△△番地筆頭者申立人沢本誠介の戸籍中、申立人沢本誠介の父母との続柄欄「長男」との記載があり、
本籍同県同郡同町大字○○字○○○△△番地の△筆頭者申立人沢本洋介の戸籍中、申立人沢本洋介の父母との続柄欄に「二男」と記載があることが認められる。
しかるところ又、沢本善介(同人は明治四一年二月二五日生でもと名は安司であつたが、昭和三一年四月二八日これを善介と変更したものである)は榊ミネと結婚式を挙げて同棲し内縁関係に入つたうえ、ミネは昭和四年一〇月二七日申立人沢本信介を生んだのであるが、当時、夫婦に第一子として男子が生れると不幸になると信じられていたため、申立人沢本信介は沢本善介、ミネ夫婦の長男として届出られず、ミネの父方叔父に当る榊幸之助(昭和二〇年六月一二日死亡)から同人とその妻キク(昭和六年三月二七日死亡)夫婦の五男として虚偽の出生届出がなされたこと、次いで榊幸之助、キク夫婦は昭和五年四月一日申立人沢本信介につき上記沢本善介の先代沢本善介(明治一三年六月一四日生、昭和三一年三月二日死亡)、なか(昭和三五年三月三〇日死亡)との間で養子縁組を結んだため、申立人沢本信介につき上記筆頭者沢本善介の除籍および筆頭者申立人沢本信介の戸籍にその旨記載されるにいたつたこと、他方、沢本善介、ミネ夫婦は昭和四年一一月二〇日にいたりその婚姻届出をし、ミネは昭和九年一月一三日に申立人沢本誠介を、次いで昭和一一年六月一八日に申立人沢本洋介を順次生んだが、上記事情から申立人沢本誠介は沢本善介、ミネの長男、申立人沢本洋介は同夫婦の二男として出生届出がなされたため、上記筆頭者申立人沢本誠介、および筆頭者申立人沢本洋介の各戸籍にその旨記載されるにいたつたものであることが認められる。
上記事実によれば、申立人沢本信介は沢本善介、ミネ夫婦の子であつて榊幸之助、キク夫婦の子ではないことが明らかであるから、上記筆頭者榊幸之助の除籍、筆頭者沢本善介の除籍、筆頭者申立人沢本信介の戸籍中、申立人沢本信介の父母およびその続柄の記載は錯誤であるものといわなければならない。
しからば、上記筆頭者榊幸之助の除籍中、申立人沢本信介の戸籍記載を全部消除し、筆頭者沢本善介の除籍および筆頭者申立人沢本信介の戸籍中、父母欄およびその続柄欄の記載を消除すべく、申立人沢本信介の本件申立はこの限度において理由がある。しかして申立人沢本信介についてはその適法な出生届が未だなされていないのであるから、その出生届出をまつてその父母欄および続柄欄につき、その記載をなし、かつ上記筆頭者申立人沢本誠介の戸籍および筆頭者申立人沢本洋介の戸籍の各申立人の父母との続柄欄を夫々「二男」「三男」と訂正し、又上記筆頭者沢本善介の除籍および筆頭者申立人沢本信介の戸籍中、養父母欄および続柄欄については、その養子縁組無効の確定判決をまつてこれを消除するのが相当である。従つて未だ上記出生届出のない本件においては、これらの訂正を求める部分は理由がないものといわなければならない。
よつて戸籍法第一一三条により主文のとおり審判する。
(家事審判官 磯部喬)