大判例

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福島家庭裁判所郡山支部 事件番号不詳 判決

本籍 福島県田村郡滝根町大字広瀬字貝谷二百十一番地

住居 福島県田村郡小野町大字谷津作字小治郎八十二番地

温泉旅館業 二瓶章 昭和二年三月十九日生

主文

被告人は無罪。

理由

本件公訴事実は、

被告人は昭和二十七年九月以来肩書住居において、旅館飮食業広太屋の全営業を事実上主宰しているものであるが

(一)  昭和二十九年三月一日自宅店舖内において未成年者である○遠○豊外八十七名に対し清酒八升を供与し、

(二)  同年十二月二十三日前同様自宅店舖内において未成年者である秋山博外二名に対し清酒四合を供与したものであるというのである。

よつて審按するに本件起訴は被告人に対し、被告人が右広太屋なる商号で経営している旅館、飮食業に関し、右公訴事実記載のとおり、未成年者飮酒禁止法第一条第三項違反にあたる行為があるものとして、同項にいわゆる営業者としてその刑事責任を問うものとしてなされたものであることは明らかである。

およそ同法第一条第三項にいわゆる営業者とは営業主を指称し、同項違反にあたる行為があつた場合営業者として刑事責任を負担するには、自己名義をもつてなす自己の営業に関する限り現実にみずからその営業を執行することは必要でなく、その営業につき、経営を事実上全然他人に委ねている場合でも、その自己に代りその営業行為一切をしている他人の違反行為に対し、営業者としての責任を免れないことは同法第四条第二項の明定するところである。しかも同項はいわゆる転嫁罰規定なることを表示しているものと解すべきであるから、同法第一条第三項違反にあたる行為があつたときは、その違反にあたる行為が自己名義でなす自己の営業に関する限りその営業者自身がみずからした行為であると、その営業者以外の同法第四条第二項列挙の者がした行為であるとを問わず、その営業者のみが自己の右違反行為又は右列挙の者の右違反行為による刑事責任が自己に転嫁されることにより処罰されるものといわなければならない。

そこで被告人の当公廷における供述、副検事に対する被告人の供述調書中の供述記載、証人二瓶栄子の当公廷における供述を綜合すると、前記広太屋は温泉業のほか、その業態上客に酒類を供与すべき、旅館飮食業も営まれておること、その旅館、飮食業につき、営業主として行政官庁の許可を受けているのは被告人の父二瓶義章で右営業の名義人も同人であり被告人は同人から右広太屋の右営業につき、経営を包括的に委ねられ、同人に代つて右営業行為一切をしていることを各認定すことができる。

よつて右広太屋なる商号で営れる営業のうち旅館、飮食業につき、右認定の事実から、同法第一条第三項にいわゆる営業者に該当する者は前記説示の理由により被告人の父二瓶義章で、被告人は同人の委任にもとずき右営業全体に関し、同人の代理権を有し、同人に代つて右営業行為一切をしているもので、同法第四条第二項にいわゆる代理人に外ならないものと断定することができる。

してみると被告人に対し右広太屋なる商号で営れる旅館、飮食業に関し、前記公訴事実記載のとおり同法第一条第三項にあたる違反行為があるものとして、同項にいわゆる営業者としての責任を問わんとする本件公訴は、前記認定のように右広太屋なる商号で営れる旅館、飮食業については父二瓶義章が同項にいわゆる営業者で、被告人は右営業全般について同人から包括的に代理権を授与されているもので同法第四条第二項にいわゆる代理人に過ぎないことから右違反行為が被告人によつてなされようと、他の同項列挙の者によつてなされようと、いずれにせよ、その違反行為による刑事責任が右営業者に転嫁され、右営業者のみが処罰の対象となるものと解すべき同項の前記規定の趣旨に照し被告人に刑事上の責任を負わしめるみちがないことが明らかであるから、その余の点について判断するまでもなく、その理由がなく、結局犯罪の証明なきに帰着し、刑事訴訟法第三百三十六条に則り主文のとおり判決する。

(裁判官 中谷直久)

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