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福島家庭裁判所郡山支部 平成4年(家)477号

主文

事件本人の親権者を相手方から申立人に変更する。

理由

1  申立ての要旨

申立人と相手方は、昭和53年10月6日に婚姻し、平成2年4月13日に両者間の長女である事件本人の親権者を申立人と定めて協議離婚したが、その後、相手方が申立人に対して親権者変更の調停を申立て、同年6月15日、事件本人の親権者を申立人から相手方に変更する内容の調停が成立した。

ところが、事件本人が相手方との生活になじめず、申立人に対して同人宅への転居を希望したため、申立人は、平成3年1月31日、相手方に対して親権者変更の調停を申立て、同調停において、同年9月11日、申立人が申立人宅において事件本人を監護養育することを相手方は承諾するという内容の調停が成立したのであるが、申立人は、申立人の現在の夫である遠藤信介(以下「遠藤」という。)が事件本人を養子にしたいとの希望を有していること、また、事件本人もそれを強く希望していること等を理由として、再度事件本人の親権者を相手方から申立人に変更することを求めて本件申立てに及んだ。

2  当裁判所の判断

(一)  一件記録及び当庁家庭裁判所調査官○○○○の調査結果によれば、次のとおりの事実を認めることができる。

(1)  申立人と相手方は、昭和53年10月6日に婚姻し、昭和54年8月18日に長女である事件本人をもうけたが、申立人が勤務先で知り合った申立人の現在の夫である遠藤と交際するようになったことから、平成2年4月13日、事件本人の親権者を申立人と定めて協議離婚した。

ところが、申立人が事件本人を相手方の元に残したまま、遠藤の転勤に伴って埼玉県大宮市内に転居することとなったことから、相手方は、同年5月24日、申立人に対して親権者変更の調停を申立て、同年6月15日、事件本人の親権者を申立人から相手方に変更する内容の調停が成立した。

その後、申立人は、同年11月22日に遠藤と婚姻したが、自らの生活が安定したことや、事件本人が申立人らとの同居を希望したことから、平成3年1月31日、相手方に対して親権者変更の調停を申し立てた。

こうして申立人と相手方との間の調停手続が進められることとなったものの、申立人が、同年5月初旬ころ、調停の成立を待たずに、しかも、相手方の意向を無視したまま事件本人を申立人宅に引き取ってしまったため、これに憤慨した相手方が申立人への親権者の変更を拒否したが、かろうじて事件本人の監護権を申立人に認めることを承諾したので、同年9月11日、申立人が申立人宅において事件本人を監護養育することを相手方は承諾するという内容で両者間に調停が成立した。

ところが、申立人は、上記の調停手続により、事件本人の親権者を相手方のままにし、事件本人に対する監護権のみを取得するという内容で合意して調停を成立させたにもかかわらず、遠藤が事件本人を養子にしたいとの希望を有しており、また、事件本人もそれを強く希望している等として、再度本件申立てに及んだ。

(2)  事件本人は、父母が協議離婚し、その後親権者が申立人から相手方に変更されたといっても、家にいることが少ない相手方とは接触も少なく、また、もともと相手方よりも申立人を慕っていたこともあって、ほとんど祖父母と共に生活していた。

その後、事件本人が相手方との生活を嫌い、申立人と同居することを希望したこともあって、事件本人は、平成3年5月初旬ころ、申立人に引き取られ、申立人らと同居して生活することとなったが、申立人宅で生活するようになって情緒的にも安定し、現在は、健康で、同居している遠藤や同人と申立人との間の子供らともよく親和し、同人らとの関係も良好で、今後も申立人らと同居していくことを希望している。

なお、事件本人は、現在家族の中で一人だけ姓が違うことについては戸惑いを有しており、今後高校進学を控えていることもあって、遠藤の希望通りに同人の養子となることを望んでいる。

(3)  遠藤は、本件の問題について冷静に受け止めており、事件本人の福祉を最優先に考える一方で、相手方の立場をも思いやるなど誠実な人柄で、事件本人に愛情をもって接しており、事件本人を養子にしたいと考えている。

(4)  ところで、相手方は、「元々申立人が転勤先で知り合った遠藤と一緒になるために出ていったもので、非は申立人にあるにもかかわらず、勝手に事件本人を引き取ったかと思うとこれを口実に親権者の変更を求めてくる」として申立人の行為を非難し、また、「このまま親権者の変更に応じてしまえば、事件本人との関係が全く切れてしまうことになる。事件本人が本当に遠藤との養子縁組を望んであるのならやむを得ないが、少なくとも、事件本人が自らの意思で養子縁組の申立てができるまで待つべきだ。」と述べて、親権者の変更に応じない意向を示している。

(二)  以上の事実によれば、協議離婚の際には自ら事件本人の親権者となっておきながら、僅かの間に親権者の変更に応じたり、再び親権者の変更を求めたりするなどの親権者問題に関する申立人の安易な態度や、親権者の変更を求めて相手方との間で調停が進行中であるにもかかわらず、相手方の意向を全く無視して勝手に事件本人を引き取ってしまう申立人の態度には非難されてしかるべきものが存するし、また、申立人は、事件本人の親権者問題に関し、一旦は相手方に親権を残したまま申立人が監護権を取得するという内容の調停を成立させた(しかも、この当時から申立人には弁護士が代理人として関与していたことからすれば、上記の通りの調停内容が法律上どのような効果を持つのか十分に理解していたものと考えられる。)にもかかわらず、僅か半年くらいしか経過しておらず、さほど事情が変更したとも認められない時期に再度本件の親権者の変更を申し立てているのであって、これに反発を示す相手方の心情も理解することができる。

しかしながら、上記認定事実によれば、現在相手方に親権が存するといっても何らの実質をも伴ってはいないのであって、しかも、相手方が今後親権者たるに相応しい実体を備えることは現段階においては不可能といわざるを得ない状況にあることを考慮すれば、親権者を相手方から申立人に変更した方が事件本人の福祉に合致することは明らかというべきである。

(三)  以上によれば、事件本人の福祉のため、事件本人の親権者を相手方から申立人に変更するのが相当である。

よって、主文のとおり審判する。

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