福島家庭裁判所郡山支部 昭和48年(家イ)114号 審判 1973年10月18日
申立人 岡本やえ子(仮名)
相手方 岡本照夫(仮名)
主文
1 申立人と相手方とを離婚する。
2 相手方は申立人に対し、財産分与として別紙物件目録記載の建物につき相手方の持分二分の一を移転し、その旨の持分移転登記手続をせよ。
理由
1 本件記録添付の戸籍謄本、入院証明書兼診断書、診断書、誓約書、家庭裁判所調査官村田礼次郎の調査報告書ならびに本件調停の経過によると、次の事実が認められる。
(1) 申立人と相手方は昭和三九年五月事実上婚姻し、昭和四〇年九月二一日届出をした。
(2) 申立人は現住所地で婚姻前から鍼灸マッサージ師をして暮していた。相手方は当時から無職無資産で、先妻の子を連れ、申立人方にいわゆる入婿として同居するようになつたもので、結婚後も定職を持たず、酒びたりの毎日で、酔うと申立人に対し暴行をくりかえした。
(3) 親類の者が間に入り、相手方の態度を改めさせようとしたがそのかいがなかつた。別紙物件目録記載の建物は、もともと申立人が建てたものであるが、相手方に働く気を起させるため申立人と相手方の共有名義にしたものである。しかし、そのかいもなく、渇酒癖は強くなり、精神病質兼慢性酒精中毒のため、昭和四七年一〇月から○○病院精神科に入院している。しかし、狭義の精神病ではなく、怠惰、酒のみ、乱暴、自己中心的という性格、行動に問題があるので、離婚、財産分与等の問題についての意思能力は正常である。
(4) 申立人は、前記職業による収入で相手方の入院費用も負担しているが、最近健康を害し、年齢的にもこれ以上その負担に堪えられず、主文掲記のとおりの調停を求め、本件申立に及んだ。
(5) 相手方は、本件調停において、当初は離婚に反対したが、第二回調停期日に出頭する途中、付添の病院職員を振り切つて逃げ、方々で多量の酒を飲んだ結果吐血し、○○病院に再収容され、胃の手術をした。それらの後仕末の費用もすべて申立人の負担に帰した。その後最終調停期日において、相手方は離婚と申立どおりの財産分与には異存がないが、その条件として、今直ちに退院させてくれなければ調停に応じられないとくりかえした。病院側は今年中は入院が必要であるとその見解を述べた。
2 当裁判所は、調停委員湯浅広平、同武田ハルの意見を聴き、当事者双方のため衡平に考慮し、前記認定事実その他一切の事情を観て、家事審判法第二四条により主文のとおり審判する。
(家事審判官 白石悦穂)