秋田地方裁判所 平成10年(わ)46号 1998年5月27日
本店所在地
秋田県仙北郡西仙北町土川字次第森三一番地一
有限会社仙北ファーム
(右代表者代表取締役 嵯峨藤夫)
本籍
秋田県仙北郡西仙北町土川字次第森三一番地の一
住居
同町土川字次第森三一番地一
会社員
嵯峨龍司
昭和七年九月九日生
主文
一 被告人有限会社仙北ファームを罰金一〇〇〇万円に処する。
二 被告人嵯峨龍司を懲役一〇月に処する。
同被告人に対し、この裁判が確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人有限会社仙北ファーム(以下「被告会社」という。)は、秋田県仙北郡西仙北町土川字次第森三一番地一に本店を置き、豚の生産、飼育及び販売を目的とする資本金五〇〇万円の有限会社であり、被告人嵯峨龍司は、被告会社の業務全般を実質的に統括していた被告会社従業員であるが、被告人嵯峨は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿したうえ、
第一 平成五年七月一日から同六年六月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二七七四万〇四〇三円であったにもかかわらず、平成六年八月三一日、秋田県大曲市上栄町九番四号所轄大曲税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一二万五七三八円で、これに対する法人税額が一万一五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額九六一万九〇〇〇円と右申告税額との差額九六〇万七五〇〇円を免れ、
第二 平成六年七月一日から同七年六月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が四一四七万三七九一円であったにもかかわらず、平成七年八月三一日、前記大曲税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一六四万〇六〇一円で、これに対する法人税額が四五万二四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額一四七八万五五〇〇円と右申告税額との差額一四三三万三一〇〇円を免れ、
第三 平成七年七月一日から同八年六月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が四二八六万八八八六円であったにもかかわらず、平成八年九月二日、前記大曲税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二四四万一〇八一円で、これに対する法人税額が六八万一八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額一五三一万三八〇〇円と右申告税額との差額一四六三万二〇〇〇円を免れたものである。
(証拠の標目)
判示事実全部について
一 被告会社代表取締役嵯峨藤夫及び被告人嵯峨龍司の当公判廷における各供述
一 被告会社代表取締役嵯峨藤夫の検察官に対する供述調書(乙1)
一 被告人嵯峨龍司の検察官に対する供述調書(乙2ないし5)
一 嵯峨まゆみの検察官に対する供述調書(甲11、12)
一 嵯峨まゆみ(甲13)、西郷榮悦(甲14)、松田朗(甲15)、熊谷康雄(甲16)、坂本三郎(甲17)及び坂本潤(甲18)の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 大蔵事務官作成の製品売上高調査書(甲2)、支払手数料調査書(甲3)、リース料調査書(甲4)、受取利息等調査書(甲5)、雑収入調査書(甲6)、未納事業税認定損調査書(甲7)、損金算入県民税利子割調査書(甲8)及び調査報告書(甲10)
一 検察事務官作成の捜査報告書(甲19)
一 登記簿謄本(乙6)
判示第一の事実について
一 押収してある確定申告書一綴(平成一〇年押第九号の一)
判示第二の事実について
一 押収してある確定申告書一綴(平成一〇年押第九号の二)
判示第三の事実について
一 国税査察官作成の調査報告書(甲9)
一 押収してある確定申告書一綴(平成一〇年押第九号の三)
(法令の適用)
一 被告会社
罰条 いずれも法人税法第一五九条第一項、第二項、第一六四条第一項
併合罪加重 平成七年五月一二日法律第九一号附則第二条第二項、刑法第四五条前段、第四八条第二項(各罪所定の罰金額を合算)
主刑 罰金一〇〇〇万円(求刑罰金一二〇〇万円)
二 被告人嵯峨龍司
罰条 いずれも法人税法第一五九条第一項、第二項
刑種の選択 懲役刑選択
併合罪加重 前記附則第二条第二項、刑法第四五条前段、第四七条本文、第一〇条(犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重)
主刑 懲役一〇月(求刑同)
刑の執行猶予 前記附則第二条第三項、第二項、刑法第二五条第一項
(量刑の理由)
被告会社は、被告人嵯峨龍司とその娘夫婦が主体となって経営しているものである。被告人嵯峨は、その業務全般を実質的に統括していたのであるが、豚舎の建替資金等の確保のため法人税ほ脱を企て、豚の取引の売上を除外するなどの方法により不実の申告を行い、三期分の法人税額合計三八〇〇万円余りを不正に免れたものである。除外の利益相当分については、家族名義で分散して貯蓄する一方、税理士には売上を除外した帳簿等を渡して確定申告書を作成させていたものである。また、ほ脱率は、約九七パーセントという高率である。税金のほ脱犯罪は、国家の課税権を侵害し、租税収入を減少させるものであって、被告会社及び被告人嵯峨の刑事責任は重いといわねばならない。
しかしながら、被告会社は、修正申告をして正規の税額を納付したほか、重加算税(約一四一五万円)、延滞税(約四八三万円)を既に納付したものであり、被告人嵯峨らは、本件脱税につき反省していることもあるので、これら諸般の事情を総合考慮し、主文の刑に処したうえ、被告人嵯峨については、その刑の執行を猶予することとする。
(検察官 澤田潤 弁護人 小泉健 各出席)
(裁判長裁判官 秋山敬 裁判官 田邊三保子 裁判官 佐藤重憲)