大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

秋田地方裁判所 平成2年(ワ)357号 判決

原告

若狭強

大塚重信

越後克也

右三名訴訟代理人弁護士

金野和子

横道二三男

被告

有限会社大金商事

右代表者代表取締役

大塚金蔵

被告

大塚金之助

山田芳美

右三名訴訟代理人弁護士

廣嶋清則

右訴訟復代理人弁護士

菅原佳典

被告

秋田県

右代表者知事

寺田典城

右指定代理人

大塚隆治

小野寺貞夫

佐藤攻

関谷久

石崎英一

菅生伝

小田嶋稔

鈴木浩一

富山清美

松田功一

伊藤雅一

事実及び理由

第三 争点に対する判断

一  争点1(不等沈下等の発生の有無)について

1  〔証拠略〕によれば、原告若狭宅敷地、若狭アパート敷地、原告大塚宅敷地及び同越後宅敷地(以下「原告ら敷地」という。)の北側道路に面した部分については、いずれも地下約三・二五メートルから約四・七メートルの間にかけて未分解の木片くずからなるごみの層が約一・四五メートル存在し、右ごみの層は、右各敷地とも敷地奥(南側の方向)に行くに従って徐々に拡大し、敷地の最奥の部分においては、地下約一・六メートルから約四・〇三メートルの間にかけて約二・四三メートル存在していること、そのため、右各敷地とも不等沈下が生じ、原告若狭宅建物、若狭アパート建物、原告大塚宅建物及び同越後宅建物(以下「原告ら建物」という。)が傾斜したり、右各建物の基礎や壁の各所に亀裂が生じるなどしていることが認められる。

2(一)  この点について、被告大金商事、同大塚及び同山田は、まず原告らの敷地にごみが存在するか否か、また存在するとしてその範囲はどの程度かについて不明というべきであると主張する。

しかしながら、〔証拠略〕によれば、原告大塚宅敷地の道路に面した部分をボーリング調査したところ、地下約三・二五メートルから約四・七メートルの間にかけて未分解の木片くずからなるごみの層が約一・四五メートル存在していること、若狭アパート敷地の最奥の部分(道路からもっとも離れた部分)においては、地下約一・六メートルから約四・〇三メートルの間にかけて未分解の木片くずからなるごみの層が約二・四三メートル存在していることが認められる。右ボーリングの調査結果に加えて、右ごみの層は、原告ら敷地の周辺は昭和二〇年代は沼地であったが、その後水が引き、昭和四〇年ころには水はほとんどなくなってごみが捨てられるようになり、昭和四五年ころには多量のごみが蓄積し、平らにならされて周囲より逆に二メートル程度高いごみ山となっていた(鑑定人白石建雄及び同的場保望の鑑定)という事情や、平成元年三月に原告ら敷地の裏側の土地が掘削された際にも、地表から一・五ないし二メートル(写真に写っている人の身長と比較して判断した。)の辺りから下にかけて少なくとも一・五ないし二メートルの木片ごみが地層断面にまんべんなく存在していた(〔証拠略〕)という事実を考慮すると、右認定のごみの層の存在を認めるのが相当である。

(二)  また、被告大金商事、同大塚及び同山田は、原告ら敷地に不等沈下は生じていないと主張し、原告ら敷地の地下に存在するごみの層が原因で不等沈下が生じ、原告ら建物が傾斜し、外壁や基礎に大小の亀裂が生じるなどしているとした鑑定人及川洋の鑑定(以下「及川鑑定」という。)は、誤っていると主張している。

しかしながら、及川鑑定が、鑑定の前提としているごみの層の存在については、前記のとおりその存在が認められるから、被告らが主張するような前提事実において誤りがあるとはいえない。

また、原告ら建物の傾斜、外壁や基礎の亀裂の存在については、前掲各証拠によればその存在が認められるのであり、右のような現象が生じた場合には、不等沈下が原因であることが一般であり、原告ら敷地の地下にごみの層が存在していることを考慮すると、ごみの層のクリープ現象に起因する不等沈下により、原告ら建物に傾斜、亀裂が生じていると判断したのは正当であるから、この点を非難する被告の主張も理由がない。なお、被告らは、原告ら建物に傾斜、亀裂が生じているとしても、そもそも基礎工事が不十分であったり、日本海中部地震後の復旧工事の不完全さに起因する可能性もあるのに、それを考慮せず、調査もしていないから及川鑑定には信用性がないと主張しているが、原告ら建物に一様に(その程度は各建物ごとに異なるが)傾斜が生じている以上、各建物の基礎工事にいずれも問題があったというよりは、不等沈下が原因であると考えるのが合理的であるし、日本海中部地震の後に建築された原告越後宅建物についても傾斜が生じていることからすると、復旧工事の不完全さが原因であるということもできないというべきである(原告若狭宅建物は、日本海中部地震後建物の傾斜を直すためにジャッキアップ工事を行っているが、その工事の内容からするとその時点で一旦傾斜が直されたと認めるのが相当であり、右工事によりおおよそ1/74もの傾斜が生じたとは到底考えられない。右の点に関する〔証拠略〕はその内容も曖昧で到底採用できない。)。

(三)  さらに、被告大金商事、同大塚及び同山田は、平成二年五月に行われた建築士牧野善行が行った測量結果(〔証拠略〕。以下「牧野測量」という。)と平成七年四月に行われた鑑定人山田栄治が行った鑑定(以下「山田鑑定」という。)を比較すると、原告ら建物の高低差にほとんど変化が認められないことからすると、原告ら敷地に不等沈下は発生していないと主張する。

確かに、被告らが主張するとおり、牧野測量をした平成二年五月から山田鑑定をした平成七年四月までの約五年間の間に原告ら建物の高低差について顕著な変化はないことが認められるが、前記認定の原告ら敷地の地下の状況及び原告ら建物の傾斜等の事実を考慮すると、本件土地について不等沈下が発生していると認めるのが相当であり、牧野測量と山田鑑定との間で原告ら建物の高低差に顕著な変化がないことは、原告ら敷地の造成工事は昭和五三年七月に修了し、原告若狭宅建物及び原告大塚宅建物は同年に、若狭アパート建物は昭和五五年に、原告越後宅建物は昭和五九年に、それぞれ建築されたもので、いずれも牧野測量まで六年ないし一二年が経過していることからすれば、その間に不等沈下が徐々に沈静化に向かっていたためであると認められるから(なお、その後も不等沈下が続いていることは後記認定のとおりである。)、結局、被告らの右主張も理由がないというべぎである。

(四)  また、被告大金商事、同大塚及び同山田は、原告ら敷地に不等沈下が発生していたのであれば、原告らがその敷地に建物を建てた直後からその旨の苦情を言っていてしかるべきはずなのに、そのような苦情を建物を建てた業者に言ったことはないから、不等沈下はなかったとも主張している。

確かに、〔証拠略〕によれば、若狭アパート建物及び被告大塚宅建物については日本海中部地震まで原告若狭や同大塚から建物の補修の依頼はなかったことが認められるが、〔証拠略〕によれば、原告らは平成元年に隣接地が掘り下げられて地下にごみの層が存在しているのを見て初めて自分達の敷地の地下にもごみが存在しているのではないかと思い始め、それまでに生じていた建物内部の不具合等の問題も不等沈下によるものではないかと考えたことが認められ、それまでに生じていた不具合についても知り合いの業者に頼むなどして処理していたものであるから、右の事情をもって不等沈下が生じていなかったと認めることはできないというべきである。

さらに、右被告らは、原告大塚宅敷地前の道路に電柱を移設した際には地下からごみはでなかった旨の陳述書(〔証拠略〕)を提出しているが、前掲各証拠から認められる事実を考慮すると、右認定を妨げるものとはいえない。

3  右のとおり、原告ら敷地の地下の木片くず等からなるごみの層が存在し、そのために不等沈下が生じ、原告ら建物の基礎や壁等に、亀裂等が生じていることが認められ、他に右認定に反する証拠はない。

二  争点2(被告大塚の故意の有無)について

1(一)  〔証拠略〕によれば、まず、次の事実が認められる。

(1) 被告大金商事は、昭和五三年に本件開発工事について秋田県知事に対する開発行為の許可申請手続きを寺山良秋(以下「寺山」という。)に依頼した。

(2) 被告大金商事は、当時代表取締役であった被告大塚の妻の兄弟である小林一郎が経営する小林土建に本件開発工事を行わせる予定であったが、寺山から、本件開発工事は、秋田県においてA級にランクされる会社でなければ許可が下りないと言われ、本件許可申請書を提出する際に、工事施行者としてA級にランクされている北部建設株式会社(以下「北部建設」という。)の名前が同社に無断で使用されていることを知りながら、そのまま秋田県知事に提出した。その際、添付書類として提出された工事施行者である北部建設の納税証明書等については、寺山が別の工事に関して入手していた北部建設の書類を同社に無断でコピーしてこれを提出した。

(3) 寺山は、本件開発工事の対象地が以前木材の皮等のごみ捨て場であったことを知らなかったが、本件許可申請書を作成するために測量調査し、現地にごみが散乱し、近所の人や被告大金商事からもごみが埋まっているということを聞いたことから、本件開発工事を行うためにはごみの入れ替えを行う必要があると判断し、本件許可申請書の設計説明書の「土地の地形・地質及び措置」の欄に「平坦地、砂質、一部ごみがあるため砂と入替えをする」と記載した。

(4) 寺山は、本件許可申請の手続きのみに関与しており、本件開発工事の監理の依頼は受けていなかったものの、本件開発工事の途中で工事の様子を見に行ったところ、パワーショベルで五、六メートルも掘り起こして砂の入れ替え工事を行っているのを見て、自分が当初予想していたよりもごみが多く工事が大掛かりであることに驚いた。

(二)  なお、証人寺山良秋は、被告大金商事は本件許可申請書のとおり北部建設に本件開発工事を依頼するものと考えていた旨証言するが、同証人は、本件許可申請書の工事施行者として北部建設と記載した理由について、被告大金商事から工事施行者は北部建設に依頼してあるからと言われたためではなく、自分の判断で北部建設を工事施行者にし、特に被告大金商事に了解を得ることはしなかった、という不自然な説明をしていることや、被告大金商事に北部建設の納税証明書等を貰うようにとの話をすることもなく、たまたま自分が所持していた北部建設の納税証明書等を無断でコピーして便宜を図っていることからすると、証人寺山良秋の右証言は、にわかに信用できないというべきである。むしろ、寺山の右行為内容からすると、同人は被告大金商事が北部建設に本件開発工事を依頼する意思がないことを知りながら、本件許可申請が許可されるためにはA級にランクされる業者でなければ難しいため、北部建設の名前を無断で使用することにし、被告大金商事もこれを了解していたと認めるのが相当である。

2  右認定事実をもとに、当時被告大金商事の代表取締役であった被告大塚が、ごみにより将来不等沈下が生じる可能性があることを知りながら、これを放置したまま宅地造成を行ったか否かについて判断するに、前記認定のとおり、本件開発工事についてはごみを砂と入れ替えることが予定されていたが、本件開発工事は在来地盤に最大一メートル程度盛土をするという造成計画であり(〔証拠略〕)、大量のごみを掘り返して除去することまでの記載はないことや、右ごみの量や工事の規模について、本件許可申請書を作成した寺山自身が、自分が予想していたよりもごみの量が多く、工事も大規模であることに驚いていたのであるから、そのままごみの入れ替え工事を行えば、寺山が本件許可申請書に記載した整地工事費(金一六九六万五〇〇〇円)では到底足りなかったということが容易に推測できる。したがって、本件開発工事を施行した小林土建においても、完全にごみを除去するとなると右整地工事費では赤字になることを容易に判断できたはずであるから、ごみの除去の問題と工事費用について、被告大金商事と協議をし、当時被告大金商事の代表者であった被告大塚も大量のごみの存在について認識したということも容易に推測できる。

そして、前記認定のとおり原告ら敷地の地下に大量のごみがなお存在していることからすれば、被告大塚は、小林土建との間の協議の中で、ごみを完全に除去するとなると多額の追加工事費がかかるため、ごみを完全に除去することはしないので、一部除去したもののほとんどは放置したまま上に砂を盛土することにし、小林土建はそのとおり本件開発工事を行ったものと認められる。

なお、原告らは、被告大金商事は、本件開発工事について当初からごみを除去する意思がなかったので、A級にランクされる北部建設ではそのような不完全な工事を請け負ってくれないことから同社に依頼しなかったものの、小林土建では本件許可申請が許可されないため、便宜上、工事施行者について北部建設の名前を無断で使用した旨も主張しているが、本件開発工事の経緯は前記認定のとおりであり、右主張の事実を認めるに足りる証拠はない。また、北部建設を工事施行者とする虚偽の本件許可申請を提出し、実際には小林土建に開発工事を行わせたこと自体は、直ちに原告らに対する関係で不法行為を構成するものではない(右のような開発行為が行われたからといって、直ちに土地の評価が減少するものではない。)から、右の事実をもって、被告大金商事及び被告大塚に責任があるとはいえない。

3  右認定のとおり、被告大塚は、ごみの存在を知りながらこれを放置したものであり、ごみが木片等からなるものである以上、地上に建物等の重量物が建てられれば、下等沈下が生じる可能性があることを容易に知り得たはずである。それにもかかわらず、ごみを完全に除去しないまま本件開発工事を完了させ、原告らに宅地として土地を売却し、前記のとおり損害を与えているのであるから、被告大塚は、原告らに対し不法行為責任を負うというべきである。

そして、被告大塚は、当時被告大金商事の代表取締役であったものであるから、被告大金商事は、被告大塚の右行為について原告らに対し不法行為責任を負うというべきである。

三  争点3(被告秋田県の責任の有無)について

1(一)  原告らは、まず、秋田県知事は、開発行為の許可があった場合には、申請書に記載されている工事施行者が都市計画法三三条一項一三号に適合する業者であるか否かを、工事施行者から資格証明書、事業経歴、建設業許可申請書、経営事項報告書、納税証明書のみならず、本件工事の施行についての承諾書等の提出を求めることなどして調査すべき義務があるところ、被告秋田県知事は、右調査義務を怠り、過失によって被告大金商事の虚偽の本件許可申請を漫然と認めてしまったと主張している。

これに対し、被告秋田県は、都市計画法三三条一項一三号(本件許可当時は一二号)に関する知事の審査は、工事施行者に客観的に工事完成能力があるか否かについて行われるものであり、本件許可当時においては、建設省の通達及び県規則の規定に基づき、工事施行者の納税証明書、財務諸表、工事経歴書の添付を求めていたが、工事施行者の承諾書は提出書類の対象とはなってなかったものであり、本件許可申請書において提出された北部建設の工事経歴書、財務諸表、納税証明書は写しであったが、これらの添付書類は、工事施行者と工事施行等につき何らかの約定がなされていない限り第三者が容易に入手し得るものではないし、また、これらを不真正のものと疑うべき特段の事情もなかったから、申請者に工事施行者の承諾書の提出を求めたり、工事施行者に電話で確認を求めたりしなかったことについて過失があったとはいえないと反論している。

(二)  そこで、原告の右主張について判断するに、まず、秋田県知事が本件許可申請に際し工事施行者の承諾書の提出を求めなかったことは争いがないところ、都市計画法三三条一項一三号(本件許可当時は一二号)は、開発行為の工事施行者の審査について、当該開発行為に関する工事を完成するために必要な能力のあることを要求するが、本号の趣旨は、あくまでも工事を完成するために必要な能力を欠いている者等不適格な工事施行者を除外しようとするものであるから、本号に関する知事の審査は、右観点から工事施行者に客観的に工事完成能力があるか否かについて行えば足りるものである。

したがって、建設省通達及び県規則二条に基づき、右工事完成能力があるか否かの判断とするために工事施行者の納税証明書、財務諸表、工事経歴書の添付を求め、工事施行者の承諾書は提出の対象としていなかったという取扱いが不相当であったとはいえないから、秋田県知事が工事施行者の承諾書の提出を求めなかったことに過失があったとはいえない。

また、本件許可申請書に添付された北部建設の工事経歴書、財務諸表、納税証明書は、いずれも写し(コピー)であった(争いがない)が、これらの添付書類は、工事施行者と工事施行等につき何らかの約定がなされていない限り第三者が容易に入手し得るものではないから、これらを不真正のものと疑うべき特段の事情や、本件許可申請書の工事施行者の記載が虚偽であると窺わせるような特別の事情がない限り、北部建設に確認する注意義務はないというべきであるところ、本件において、右の特別の事情があったと認めるに足りる証拠はないから、秋田県知事が北部建設に確認しなかったことに過失があったとはいえない。

なお、原告らは、寺山が誤って添付したマルナカ商事株式会社あての「建設工事入札参加資格申請書(〔証拠略〕)を審査すれば、本件開発行為における工事施行者が誰であるかについて、当然疑義を持たなければならないと主張するが、そもそも右書類は、県規則の規定上、本件許可申請に要求されている書類ではなかったものであるから、これを審査しなければならない理由はなく、また、確かに同証にマルナカ商事株式会社の記載があるが、申請者が北部建設となっており、本件では申請上の工事施行者である北部建設株式会社それ自体の客観的な工事完成能力を判断すれば足りる以上、右申請書が添付されていたことから、直ちに工事施行者の記載について疑念を抱いて確認しなければならなかったとはいえないというべきである。

右のとおり、秋田県知事は、本件許可申請の際に必要な注意義務を尽くさなかったという原告らの主張は理由がなく、その他、本件許可申請の審査に注意義務違反があったと認めるに足りる証拠はない。

2(一)  また、原告らは、秋田県知事は、本件許可申請の目的が宅地分譲にあり、かつ対象地中にごみ捨て場が含まれており、同法三三条一項所定の基準に適合するためには、ゴミを除去し、砂と入れ替える等将来地盤沈下を生じさせないような措置が講じられなければならないことを知っていたものであるところ、被告大金商事からの許可申請書添付の設計説明書に「砂と入替をする」との記載があったため、基準に適合する開発行為の許可申請であると判断してこれを許可したものであるから、秋田県知事としては、担当者を現場に赴かせあるいは工事工程書並びにその時点の現場写真を提出させる等して砂の入替工事の確認をすべきであったのに、工事途中及び工事完成時における砂の入替工事の確認も怠り、さらに、工事施行者である北部建設に確認することも怠り、許可内容に適合しない工事施行であるのに、設計説明書に記載されたとおりの措置が施されたものとして、被告大金商事に開発行為に関する工事検査済証を交付したと主張している。

これに対し、被告秋田県は、都市計画法三六条二項に規定する完了検査は、当該工事が物理的、技術的に許可の内容を充足しているか否かを確認するために行われるものであって、検査方法は、工事の結果が許可の内容に適合していると見極められるものであれば足り、従って、工事の検査は、工事の結果を目視や検測の方法により確認し、完成後では目視や検測もできない地下埋設物等の確認については、工事写真や施行管理資料等の客観的手段によって行われ、本件開発行為に関する工事の検査においても、右検査方法を採り、適正に行われたものであり、また、その際に特別の事情がない限り工事施行者を確認することは要求されておらず、一般にも検査において、特に工事施行者を改めて確認することはしていないから、本件完了検査の際に工事施行者の確認をしなかったことについて過失はないと反論している。

(二)  まず〔証拠略〕によれば、秋田県知事は都市計画法に基づく開発工事の検査は秋田県が施工する請負工事等に関する秋田県工事検査規程の工事検査の基準に準じて実施していたこと、右検査規程では中間検査を行うこととされていたこと、本件開発工事の完了検査を実施した野村堅一は、本件開発工事の途中に現地に赴き工事の状況について調査したことはなく、本件開発工事の完了届出が提出された後に現地を調査したこと、調査の際に右野村は、本件許可申請において許可されたとおり工事が行われているか否かを計画図面、設計図面と現地を照合して確認したこと、ごみと砂の入替工事がきちんと行われたか否かについて写真等の提出を求めて確認したことはなく、口頭で確認したのみであること、野村は右調査の際に工事施行者とされた北部建設から話を聞く等して工事の状況について確認することはしなかったことが認められる。

(三)  右認定のとおり、秋田県工事検査規程では中間検査を行うこととされていたが、本件開発工事の完了検査を実施した野村堅一は、本件開発工事の途中に現地に赴き工事の状況について調査したことはなく、本件開発工事の完了届出が提出された後に現地を調査したものであるところ、右の点について、証人野村堅一は、開発工事の検査は秋田県工事検査親程に準じて行うことになっていたものの、そのとおり実施しなければならないという取扱いになっていたものではないと説明し、建設省が昭和五四年七月二五日に「都市計画法による開発許可制度の運用の適正化について」と題する通達(〔証拠略〕)を出して、開発許可した案件について適宜工事施行状況の報告を求める等工事の実施状況の把握に努めることを求めたことからすれば、本件開発工事が行われた昭和五三年当時は開発工事の途中で工事施行状況について申請人から報告を求めたり、現地で確認するということは一般的に行われていなかったものと推認されることからすれば、野村が本件開発工事の途中で現地に赴いて工事の施行状況について確認しなかったことに過失があったとはいえないというべきである。

また、野村は完了検査のために現地を調査した際に、本件許可申請において許可されたとおり工事が行われているか否かを計画図面、設計図面と現地を照合して確認したが、ごみと砂の入替工事がきちんと行われたか否かについては写真等の提出を求めて確認したことはなく、口頭で確認したのみであり、また工事施行者に対する確認も行わなかったが、都市計画法三六条二項は、「都道府県知事は、前項の規定による届出があったときは、遅滞なく、当該工事が開発許可の内容に適合しているかどうかについて検査し、その検査の結果当該工事が当該開発許可の内容に適合していると認めたときは、建設省令で定める様式の検査済証を当該開発許可を受けた者に交付しなければならない」と規定するところ、その趣旨は、無秩序な開発によるスプロール化を防止するとともに、良好な市街地の形成を図るため、開発行為に最低限度の水準を保たせることにあると解されるから、右検査の目的は、当該工事が当該開発許可の内容に適合しているかどうかを判断することにあり、検査の方法も工事の結果が許可の内容に適合していると見極められるものであれば足りるというべきである。

そうすると、野村の調査が右の程度のものであり、ごみと砂の入替工事について口頭で確認したのみで、現地を掘り起こしてまでの確認をしなかったことや北部建設に問い合わせる等して工事施行者として記載された者が許可申請書どおり施行したかについて確認しなかったことについて過失があったとはいえないというべきである。

もっとも、野村は、ごみと砂の入替工事について写真等の提出を求めて確認することもしていなかったが、〔証拠略〕によれば、野村は本件開発工事の対象となった土地の地下に大量のごみが存在することを全く知らず、また本件許可申請書に添付された図面等にもごみがどの程度存在するかについて記載がなかったことから、さしたる量ではないと考え、ごみと砂の入替工事の実施状況をさほど重要視していなかったことが認められる。そうすると、右のとおり(完了検査は工事が開発許可の内容に適合しているかどうかを判断すれば足りるものであり、本件許可申請書にごみと砂の入替工事の内容について特に図面に記載がなく、現地調査で表面上はごみの存在が窺えなかった以上、それ以上写真等の提出を求めず、口頭で確認したことをもって過失があったとはいえないというべきである。

なお、原告らは、秋田県知事は、本件許可申請の目的が宅地分譲にあり、かつ対象地中にごみ捨て場が含まれており、同法三三条一項所定の基準に適合するためには、ゴミを除去し、砂と入れ替える等将来地盤沈下を生じさせないような措置が講じられなければならないことを知っていたのであるから、その点について十分確認すべきであったと主張するが、野村はごみが大量に存在していることを知らず(秋田県知事において本件開発工事の対象土地の地下に大量のごみが存在しているということを認識していたと認めるに足りる証拠はない。)、本件許可申請書の右記載内容からすれば、本件許可申請においてごみと砂の入替工事は地盤沈下対策として行われることになっていたが、その工事の実施状況についての確認を右の程度で済ませたことについて過失があったとはいえないというべきである。

3  以上のとおり、原告らの被告秋田県に対する請求は理由がない。

四  争点4(被告山田の瑕疵担保責任の有無)について〔略〕

五  争点5(損害額)について〔略〕

第四 結論

以上のとおり、原告らの本訴請求は右の限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 手島徹 裁判官 田邊浩典 山下英久)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!