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秋田地方裁判所 昭和25年(行)19号 判決

原告 沢田一義 外四名

原告 秋田県教職員組合

右代表者 委員長

被告 秋田県教育委員会

右代表者 委員長

一、主  文

原告等の請求はいずれもこれを棄却する。

訴訟費用は原告等の連帯負担とする。

二、請求の趣旨

被告秋田県教育委員会が昭和二十四年十月二十五日原告沢田一義、同下総次郎、同佐藤勇、同笹川富男を休職処分に、同年二月二十八日原告赤坂隆三を懲戒免職に附した行政処分は何れもこれを取消す。

訴訟費用は被告の負担とするとの判決を求める。

三、事  実

(一)  原告秋田県教職員組合は秋田県下の各高等学校、中学校、小学校に勤務する教職員を主な構成員として結成されている組合で原告(原告組合を除く)等はその組合員であると共に職務上並に組合内に於ける地位、閲歴は別紙目録記載の通りである。

(二)  被告は従来都道府県若しくは都道府県知事又は市町村若しくは市町村長の権限に属した教育事務を管理し及び執行する等の教育行政を行う行政庁であるが請求の趣旨記載通りの日時に原告組合を除く各原告に対し夫々休職並に懲戒免職に処する旨の行政処分を行つた。

(三)  被告が右のような処分を行つた理由として説明するところは

一、原告沢田、同下総、同佐藤、同笹川等に対しては「教育委員会の事務の都合による」旨の一片の説明書を交付し、又辞令には官吏分限令第十一条を準用する旨記載されているのみであつて具体的理由は何等示されていない。

二、又原告赤坂隆三に対しては「長期に亘り職場離脱してその職務上の義務に違背し職務を怠りたるものによる」というのである。

(四)  然しながら原告組合を除く各原告は右の如き処分理由の説明は或は単に発令の根拠となつた法規を指示記載したに過ぎぬもので国家公務員法に所謂「処分の理由」の説明にはならないものであるか或は事実に相違し不当なものであるのみでなく、本件処分はこれに先だつ僅か二日前に被告より各地方出張所を通じて突然に退職願を提出するよう理由も示さず強要脅迫され、充分考慮の余裕も与えられず自己の意に反して強行されたものであつたので昭和二十四年十一月二十一日と二十五日の二囘に亘り被告を相手どつて審査の請求をした。

(五)  被告は当時審求書を受理しながら今日に至るまで既に三ケ月以上もその審査は勿論之に必要なる調査も何もなさず原告等の迅速なる裁決を求むるとの再三の陳情にも言を左右にして誠意ある態度を示さない、かくては原告等の被むる損害甚大であるばかりでなく組合活動も間接に妨害される結果となる。

(六)  のみならず事の真相は被告はかねてから原告組合の弱体化をねらつていたところ偶々当時均衡予算実施の美名の下に行われた昨年の政府の所謂定員法に依る行政整理に便乘し原告等(原告組合を除く)を含む原告組合の組織の幹部が組合員の利益を擁護し献身的に組合活動をしているのを快しとせず之等の幹部を各職場より追出すことによつてその所期の目的を達しようと企て原告等(原告組合を除く)を或は理由なく休職処分に付し或は事実に相違した不当の理由を付して懲戒免職処分にしたものであるが右処分は何れも憲法第十四条同第二十八条に違反し無効である。

(七)  なお原告組合はその機関に於いて本件処分の取消を求めるためにあらゆる可能な手段によつて闘うことを決議したものであるが元来労働者の権利を擁護伸長するための団体としてその構成員のために違法な行政処分の取消を求める権利が有るものである。

(八)  以上のような次第であるから原告等は行政事件訴訟特例法第二条の但書の規定により右審査の裁決を待たずしてこの件を提起するものである。

と。

尚原告下総次郎に関し同人が被告委員会の調査に当り「特定の政治活動に活躍したとの事は事実であり、特定政党の機関誌「村の旗」を村で発行していた、その内容は村内に於ける事件その他一般についての報道をなすもので田沢村の村民の約半数以上が購読していたと陳述したことは相違ないが右は教員として学校の授業時間中になしたことはなく時々事実上の編輯したものであり編輯人は下総ではない、又事業としたものでもないと釈明した外、公立学校の教育公務員に対する休職処分、懲戒免職処分等がその任命権者である教育委員会の行うものであることは教育委員会法第四九条第五号教育公務員特例法第一、二項によつて明白であるが右の如き処分を行うに当つて教育委員会は自ら勝手気儘に之を行い得ないことも亦明白なところである。即ち右第四九条第五号は教育委員会は「別に教育公務員の任免等に対して規定する法律の規定に基き校長及び教員の任免其の他の人事に関する」事務を行うとあつて法律外の規定乃至は自由裁量によつて前記の如き処分をすることを認めていない。而してこの別に定める教育公務員の任免等に関して規定する法律というのが、その後制定施行された前記特例法であることはその第二章の規定からして明瞭である。従つて本件原告等(組合を除く以下同断)に対する休職処分、懲戒免職処分等は前記特例法の規定に依る場合の外は之を為し得ない処であつて特例法によつて原告等を休職乃至懲戒免職処分に付することができるのは同法第一四条第一五条の場合以外にはあり得ないものといわなければならない。ところが被告の原告等に対する処分辞令によつて明らかであるが前記の如く教育公務員の任免その他の人事については法律の規定即ち特例法に基いてのみ之を行うことができるのであつて法律の規定以外の規定である前記の如き政令ではその人事を行い得ないものといわなければならないから本件処分は違法である。

尤も被告は本件処分は特例法第一五条及びその附則第三三条の委任による政令である同法施行令第九条により適法の委任ある場合として本件処分は「当該都道府県の吏員の例によつた」ものであり、都道府県の吏員の例によれば地方自治法附則第五条により「都道府県の吏員は地方公務員法が制定施行せられるまでは従前の官吏に関する規定を準用される」ものであるから前項の如き場合による処分も違法でないとされるようであるが仮りに百歩を譲り官吏分限令、官吏懲戒令の準用があるとしても、これらの政令は一般事務職員を対象とし、そのもののみに全面的に適用されるものであつても教育公務員の如く教育を通じて国民全体に奉仕するというその職務と責任の特殊性が認められている(特例法第一条)ものに対しては規定の性質上当然準用されないものがあると云わなければならない。況んやこの限りにおいては之等の政令を準用することは政令を以て法律を以て定めることとされている教育委員会法第四九条第五号を変更することとなり、その不当なるや論なきところであるに於いておやである。即ち苟くも教員については事務の都合等ということはある筈なく、従つて前記官吏分限令第一一条第一項第四号の規定の如きは当然教員についてはその準用ないものである。このことは赤坂を除く原告等に対して教育委員会が特例法第一五条第三項の規定によつて交付した処分説明書の文言によつても明らかな如く、その休職処分の事由が、教育委員会の事務の都合によるとあつて原告等が教育委員会の一般事務職員であるならば格別不当な準用ではないにしても教育委員会の事務職員でない原告等をこれと同列において教育委員会の事務に都合によつて処分することは準用し得ない官吏分限令第一一条第一項第四号を牽強附会にも準用した違法な処分であると云わねばならない。加之被告は処分説明書で教育委員会の事務の都合によると休職者に対する処分理由を説明しておきながら本件口頭弁論に於ける陳述ではその具体的理由として各本人の行動を列挙し右が或は教育委員会の方針にもどつたとか或は非難さるべきものであるとか或は好ましくないものである等と主張しているが、これは全く前後撞着矛盾も甚だしいものであるといわなければならない。斯くの如きは畢竟するに被告の本件処分について正当の理由がなかつたことを自ら暴露したものであつてこの点からも本件処分は取り消さるべきものである。同時にまた右の事実は教員について官吏分限令の性質上準用出来ない規定を無理に準用したことを裏書するものであつて本件休職処分はこの点からしても取り消さるべき性質のものである。更にまた百歩を譲つて被告主張の如く教員についても官吏分限令、官吏懲戒令の準用があると仮定しても、被告の原告等に対する処分は純粋な自由裁量を許したものではなく、法規裁量を命じて居るものであることは国家公務員法第七四条の如き規定の特例法中にないところからして当然である。ところが既に本件口頭弁論において明らかになつたところから見ても被告の本件処分は全く前記政令を勝手気ままに拡張釈解乃至濫用して為したものであることは明白であり、これは明らかに法規裁量の域を逸脱した何等客観的に妥当性のない何人をも首肯させる処分とは認めがたい不当なものであり取り消さるべきものである。

又仮りに本件休職処分が官吏分限令による適法なものであるとしても被告は休職期間中の給与について最初はこれを支給しながら後にこれを停止するの不法を敢てしている。即ち最初は特例法施行令第九条、地方自治法附則第五条により官吏分限令を準用して三分の一の休職給を支給して置きながら後にこの取扱を間違いと称して特例法施行令第一一条、特例法第三条、国家公務員法第八〇条によつて、三分の一の給与の支払をも停止したのであるがこの後の場合は休職期間中の給与の規定でなく一般の給与規定であつてこれを休職期間中のものに適用するは違法なること明白である。かかる措置は到底これを容認し得ないところであつてこの点からしても亦本件処分は取り消さるべきものである。

最後に本件原告等に対する被告の休職並びに懲戒免職処分は不当労働行為を構成するものであつてかかる違法な犯罪的行政処分は当然無効のもので即刻取り消さるべきものと信ずる即ち被告の前記処分の具体的事由は実は事務の都合によるとか長期の職場離脱による義務違反乃至職務怠慢によるものではなく、原告等が秋教組の役員として被告と対等の立場に立ち、正当な組合活動を活溌に行うことを快しとせず組合を骨抜きにせんと企図し、原告等の正当な組合活動を故意に曲解し、事実に相違した解釈を為し、処分理由を正当化せんとしたものであることは被告の具体的処分事由に対する原告等申請の証人の証言竝に既に提出した書証等だけでも明らかであり、以上の如く本件処分理由が逐一事実に相違する虚偽のものであるか乃至は全く正当な組合活動であつたことが証明された以上本件処分事由は全く客観的妥当性を欠くものであるといわなければならない。

若しそうだとするならば処分当時及びその以前において或は日教組中央委員、中央委員、中央執行委員、青年部副部長、高校部副部長の任にあつた原告等に対する本件処分は他に特別の事情のない限り原告等が正当な組合活動をしたこと、政党に加入して居つたことを理由として処分したものと推定せざるを得ない。而して本件においてはかかる特別の事情が存在して居つたことの一つも被告によつて主張乃至証明されていない。

かくの如く正当な組合活動に従事する組合幹部乃至役員が一方的独断理由によつていとも容易に処分せられることを放任するに於ては組合員は組合幹部乃至役員となることを囘避し組合は自主性を失い御用化することは必定である。事実原告等の所属する秋教組においては証人仲谷忠雄の証言に明らかな如くその兆候、処分後の最初の大会に於ける役員選挙を以て見られ、之を克服するに容易でなかつたことは想像に難くない。果して然らば本件処分は労働組合法第七条に違反する不当労働行為であり且つ憲法第一四条をじゆうりんする無効のものといわざるを得ない。

と補述した。

(目録)

氏名   職務上の地位    組合内の地位

沢田一義 鷹巣中学校教諭   北秋田郡支部青年部副部長

下総次郎 田沢小学校教諭   中央執行委員

佐藤勇  雲然小学校教諭   前中央執行委員

笹川富男 角館南高等学校教諭 中央委員

赤坂隆三 大曲小学校教諭   日教組中央執行委員

被告訴訟代理人の答弁

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告等の負担とする。

請求原因に対する答弁

一、訴状第一項中原告等の組合内に於ける地位の点は不知その他の事実を認める。

二、同第二項、第三項は認める。

三、同第四項中昭和二十四年十一月二十一日同二十五日二囘に亙り審査請求のあつた事実のみ認めその他は否認する。

四、同第五項以下は否認する。

抗弁

一、原告中秋田教職員組合については訴訟当事者適格を欠くものとして訴は却下さるべきものである即ち組合自体は何等の処分を受けた者でもなく本件は他の原告等個人対被告間の問題に過ぎない。

二、又組合以外の原告に付いては県教育委員会に審査請求をなし近く審査が開始さるべき状態になつて居るのであるからその審査の結果を待つべきである。審査請求後三ケ月を経過したとはいうものの右審査に関する規定は我国に於いて始めての事なのでこれが審査を為すための準備が整わずこれが為の審査の請求を正式に処理することすら出来なかつた実状にあるもので審査が多少延引するのも已むを得ない次第であるかかる場合に於いては原則通り審査の結果を待つて訴を提起すべきものと解すべく此の点から原告等の本訴は却下されて然るべきものと思料する。

三、原告等(組合を除く)は訴外二十数名と共に休職又は免職の処分を受けたものであるが其の理由は原告等個人々々に付夫々正当な処分理由があつたもので原告等主張の様に組合運動と関連せしめたものではない即ち原告等は勤労を怠り教育公務員としての服務規律に違背し為めに教育の実績あがらず又教育者として不適格であると認められたもので県教育の刷新上已むを得ざる措置であつた処分の理由を具体的に説明しなかつたのは寧ろ原告等の名誉を重んじたからに過ぎない。

四、右の如く原告等に対する処分は違法のものではないが百歩を譲つて仮りに違法処分なりとしても該処分を取消すことは公共の福祉に適合しないものと認めるを相当とすべく行政事件訴訟特別法第十一条により此の点から云つても原告等の請求は棄却さるべきものである。

五、被告が組合を除く各原告を休職又は懲戒免職処分に付した具体的理由は左の通りである。

(一) 原告沢田一義については

一、(イ) 週五日制の実施により土曜日は授業を行わず職員の研修行事を計画することが多いのであるがそのため同僚職員が殆んど出勤する中に沢田は出勤することが稀であり出勤しても申しわけの程度に過ぎなかつたし又早退することしばしばであつた。

(ロ) 宿日直勤務に対してもその職責を尽さず昭和二十三年秋宿直中に他出して留守中に職員室に何者か侵人して机の中をかき乱された事実がある。

以上を綜合するに沢田の平常の勤務は積極的に熱意を有するものとは認められない。

二、(イ) 生徒に対して煽動的であつて生徒を使嗾して事をなそうとする傾向があつた例へば校舎建築促進のため生徒大会を催しその席に町当局を呼び出して生徒が詰問した事実があつたがこのことの背後には沢田が働いていたと一般から見られていた。

(ロ) 政治活動と称し任地を離れることがしばしばあつたが一度も届出をしていない。

(ハ) 国鉄、全逓の争議等に活躍したり郷里七座村の供米阻止運動に活躍したこと等も教育者としての行きすぎにつき世間の非難の声が高かつた。

以上の事実は教育者としてあきらかに逸脱行為であり且つ勤務時間を割いて政治的活動をなしたことは教育公務員としての服務規律に違背し教育基本法の趣旨及び教育委員会の方針にもとるものである。

(二) 原告下総次郎については

一、昭和二十三年度事故欠勤三十一日、病気欠勤十二日、昭和二十四年度事故欠勤三十一日、病気欠勤七日、尚その外に昭和二十二年度中に学校長の許可なく数ケ月間職場を離れた事実があり早退することしばしばであり出席すべき学校の会合にも欠席勝ちであつた。昭和二十四年五月には福島県の飯坂に於ける日教組の大会に出席、又岩手県教組の知事殴打事件の応援に二週間岩手県に滞在したがこれらの長期にわたる離任地に当り被告委員会の許可を得なかつたかくの如きは教員として勤務怠慢、服務規律に違背するものであり尚事故欠勤、職場離脱、早退等の内容には組合活動によるものもあつたと思うが勤務時間中の組合活動は政令第二百一号に違反するのみならずその後この政令に基き県及び被告委員会から行つた数次の指示通牒にももとるものである。

二、(イ) 下総は欠勤が多いため授業の成績あがらず又その整理もわるく、自己の欠勤中の授業、補充者との間に引きつぎがわるい為めその結果他の学校に比していつも成績がわるかつた。

(ロ) 勤務状況不良であつたため職員間の折合もわるく職員の協力融和の上に障碍となることが多かつた。常に他出が多いため他の教員に授業補充の負担が加はり迷惑を及ぼしていた。このような不快な勤務状況のため同僚中には他校転出を希望する者もあつた。

(ハ) 教育委員会の方針に対しては常に反抗的態度に出で積極的な協力をなさずただ事務的に処理するに過ぎなかつた。

(ニ) 特定の政治的イデオロギーによる授業が行われることの懸念から一般父兄の側から校長に対して授業者変更の申入があつた。

(ホ) 特定の政治活動に活躍し例えば特定政党の農村工作隊の先導的活動をなし又は特定政党の機関紙の編集に当る等教育者として行きすぎの行動につき非難せられた。

以上各項の事実は教育者として逸脱行為であつて教育基本法第八条の趣旨及びこれに基く教育委員会の指示通牒にもとるものである。

(三) 原告佐藤勇については

一、被告委員会は学校及び教職員の政治活動に関して教育基本法第八号の趣旨に基き常に中正の立場を保持すべきことを指示通牒しているのであるが左記の行動はこれらにもとるものであり明らかに教育者としての逸脱行為であつてそのため地域社会の一般から不信を買つていたものである。

(イ) 雲沢村西長野高森部落等の供米割当及び個人の割当が不当であると村当局に供米闘争をした(昭和二十三年度)

(ロ) 宿直室に居住していたが政治活動のため同志と深更まで会同すること多かつたため村民の不評を受けていた。

(ハ) 政治活動に関するビラ、壁新聞、その他印刷物を自村分は大部分自分で書いて張り歩き活溌な政治活動をした。

(ニ) 村民税、所得税の軽減のため猛烈な税金闘争をした。

(ホ) 選挙闘争に於いては自ら先に立つて同志を指揮し夜中にメガホンをもつて特定政党の為の票数の獲得に努めた。

(ヘ) 特定政党の党員獲得、細胞強化のため個人を訪問、入党勧誘等主義の宣伝に活動した。

(ト) 不当配給摘発のため調査し当局に抗議した。

(チ) 教育委員会の方針には根本的に反対意識をもつていた。

(リ) 昭和二十四年宇留野校長時代「アカハタ」の配布を児童にさせた事実がある。

(四) 原告笹川富男については

一、昭和二十三年度 四十三日間出張

昭和二十四年度     四月から六月二十五日まで八日間出張

右出張の大部分は政令第二百一号の趣旨竝に教育委員会の指示通牒にもとり、勤務時間中に所轄庁の許可なくして職場をはなれたものである。

尚二十四年二月被告委員会の許可を得ずして離任地して大分県別府市に旅行した事実がある。

これらは職務を怠り教育公務員として服務規律に違背する行為というべきである。

二、教科担任としては歴史を担当していたが革命理論に重点を置き他の歴史的事実を閑却に付したため生徒は一般史に於ては知識が低位にあつた。

三、特定政党に入党を勧誘する等、特定の政治活動に活躍しその逸脱行為につき地域社会の一般から不信の念を抱かれていた。

(五) 原告赤坂勇三については

昭和二十三年十一月から昭和二十四年二月下旬まで学校長及び教育委員会の許可を受けることなく職場離脱を敢えてし、引続き二月下旬から処分を受けるまで約八ケ月間の長期にわたり許可なくして職場を離れて東京都に滞在していたものである。

右は教育公務員として職務を怠り服務規律に違背したものであり、これに対し被告委員会及び当時の学校長稲田金右衛門から再三注意を与えたにも拘らず却つて反抗的言辞を以てこれにこたえる態度であつた。その間昭和二十三年七月三十一日政令第二百一号の公布により勤務時間中の組合活動は認められないこととなり知事及び当委員会はこの政令公布後組合に対して通達書を送りその後も数次にわたり指示通牒しているのであるが原告赤坂はこれを黙殺して敢えて職場離脱を継続していたものである。

(立証省略)

四、理  由

よつて審按するに被告は原告中秋田県教職員組合については訴訟当事者の適格を欠くものであると抗弁するが民事訴訟に於ては参加を認め従参加、主参加、当事者参加を認める等の規定もあるは勿論苟くも法律上の利益ある場合は当事者として私権の保護を受け得る建前にあるからして原告の主張事実に依ると原告秋田県教職員組合は秋田県下の各高等学校、中学校、小学校に勤務する教職員を主な構成員として結成されている組合で他の各原告はその組合員であるとともに原告沢田一義は鷹巣中学校教諭であつて組合内の地位として北秋田支部青年部副部長であり田沢小学校教諭である原告下総次郎は同組合の中央執行委員の地位にあり、雲然小学校教諭である原告佐藤勇は同組合の前中央執行委員の地位にあつた者、角館南高等学校教諭の原告笹川富男は同組合の中央委員であり、また大曲小学校教諭であつた原告赤坂隆三は日教組中央執行委員の地位にあつた者であるところ被告は昭和二十四年十月二十五日原告沢田一義、同下総次郎、同佐藤勇、同笹川富男を各休職処分に同年二月二十八日原告赤坂隆三を懲戒免職に処する旨の行政処分を行つたが原告組合はその機関に於いて本件処分の取消を求めるためにあらゆる可能な手段によつて闘うことを決議したものであり労働者の権利を擁護伸長するための団体としてその構成員のため違法と信ずる行政処分の取消を求める権利があるとして他の各原告と共に本訴請求に及んだのであると謂うのであつて本件判決を受けることについてやはり法律上の利益があるものと解するを妥当とするからこれに反する被告の抗弁はこれを採用しない。

次に被告は組合以外の原告は被告秋田県教育委員会に対して為した審査請求に基く審査の結果を待たないで本訴を提起したから本訴は却下されるべきであると抗弁するけれども行政事件訴訟特例法第二条の法意から観るときは行政庁の違法な処分の取消又は変更を求める訴であつても行政庁に対する不服の申立が為された日から三ケ月を経過したとき又は訴願の裁決を経ることに因つて著しい損害を生ずる虞のあるときは訴願の裁決を経ないで訴を提起することができるわけであるところ組合を除く各原告から前記行政処分に対して不服を申し立て審査の請求があつた日から本訴の提起前既に三ケ月を経過してもまだ裁決のなかつた事実自体は被告の認めて争のないところであるから本訴の提起を目して不適法のものとは認めがたいからこの点に関する被告の抗弁もまた採用しがたい。

進んで組合を除く各原告に対する被告教育委員会の休職又は懲戒免職の当否を按ずるに良識ある公民たるに必要な政治的教養は教育上これを尊重しなければならないが法律に定める学校は特定の政党を支持し又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならないことは教育基本法の明定するところであると同時に都道府県の教育委員会は都道府県の設置する学校その他の教育機関を所管し、学校その他の教育機関の運営及び管理に関することは勿論教育委員会及び学校その他の教育機関の職員の任免その他の人事に関する事務を行う職務権限を有することは教育委員会法の規定するところであり、教職員の休職又は懲戒処分については任命権を有する教育委員会がこれを行うことは教育公務員特例法の規定上明らかである。また法律で定める学校の教員たるには一定の資格が要件とされ、禁治産者及び準禁治産者は勿論、禁錮以上の刑に処せられた者や免許状取上けの処分を受け二年を経過しない者及び日本国憲法施行の日以後に於ては日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し又はこれに加入した者は学校の教職員となる資格のないことは学校教育法の明文上明らかなるところであつて苟くも公立学校の教員なる者は日本国憲法及びこれに基く叙上教育基本法及び学校教育法の精神に従い教員としてふさわしい言動に出でべきでありこの教員としてふさわしい常軌を逸脱するが如きことがあつてはならない筈である。そこで教育行政の局に当る者が少くとも教員として逸脱行為のないように念じて随時適当な指示と指導とを管下教職員に対して行つて来た所以のものもそこにあることは論を俟たないのである。証人斎藤悦郎の証言に依るも政治活動の範囲について被告秋田県教育委員会では管下教員に対して通牒を発したことが認められるし同証言によつて真正に成立したものと認められる秋教学校五六号学校に於ける政治活動についてと題する文書に依れば被告委員会は政治教育は重要であつて中正な立場で行わなければならないが政治教育を政治活動と混同してはならない(一)ある党派の政治的イデオロギーを弁護したり出席者たちにある党派の政治団体の加入を依頼すること(二)ある党派の政治上の文書を配付したり、ある党派の政治上の資料や紙芝居等を見せること(三)ある特定の政治的候補者の選挙を援護したり、又は特に落選するように宣伝したりすること(四)学校とか教師とかの地位又は自己が教育組織に関係あるのを利用してある党派の政策を宣伝するために会合を開いたり、出席したり、家庭訪問したりすること、(五)学校の教育計画の一部として、又いついかなる所においても、いずれかの党派的政治活動に従事するよう生徒児童に要求したり、又は影響を与えようとすること、(六)教職員や生徒児童に対して特定の政治団体への経済的利益を与えることを勧誘することを行う場合は政治的活動と解されるからかかる政治活動は慎まなければならない趣旨を指示し、同時に政令第二百一号第一条第二項勤務時間中の組合活動の取扱い方針をも明らかにし、組合活動として専従者はこれを認めないこと及び勤務時間中の組合活動は原則としてこれを認めない、但し所轄庁の長の承認を得たときは政令第二百一号第一条第一項但書の交渉の如きは差支えない趣旨をも指示した事実が認められる。

而して証人吉田慶助、同斎藤悦郎、同松田銀治、同伊藤昇、同堀川康行、同伊藤尚正、同高須修二、同中村勝郎、同稲田金右衛門の各証言を成立に争のない乙第一号証同第二、四号証と証人高須修二の証言により真正に成立したと認められる乙第三号証の一、二を綜合して考察するときは、原告沢田一義は国鉄労働組合の争議に出動応援し或は共産党運動に協力した度合が教員として行き過ぎであつたり、共産党の文化運動として出したバッチを生徒につけさせたり、生徒に対して自分は共産党に入党していると話したり、阿仁合の奥や綴子村の奥の寒村部落に政治活動のために出掛けたり、引揚列車の通過、下車等の場合に出向いて活動したり七屋村に「赤い地球」等と題する特定政党に関する紙芝居や幻燈をやりに行つたり、同村には昭和二十三年秋頃瀕繁に帰省してその翌日は壁新聞を貼つて活動するというので村当局、村議会の人々から沢田一義を村に帰らぬ様に阿仁部の寒村に転任方の運動を起す段階まで至つたこと、その他前進座が町に来たとき原告沢田が白昼広告ポスターを貼つて歩いたその時刻は生徒がまだ学校から帰らぬ頃の時間であつたこと等の事実が認められ、原告下総次郎については他府県に出張する場合は被告委員会の許可を必要とするのに同人は何等その許可手続をとらないで出張し、秋田県内の出張の際は学校長の許可を得て出張すべきに無届で出張したり、日本共産党の農村工作隊に対する協力が教員として必要以上度が過ぎ、同工作隊が他村から田沢村に来たとき原告下総次郎はその団体と行動を共にし、部落の各家々を訪ずれ、その時は工作隊の人達が赤旗を持つていたので生徒の父兄からあんな風なことは先生としてやるのは困るとP、T、Aの会合の際に問題とされ校長から原告下総次郎に対して注意された等の事実が認められると同時に同原告は欠席勝ちであり授業上の支障もあつたので他の先生が原告下総次郎の担任である教室の授業を受け持つ機会も多い等の事情もあり、また教員の服務規律としては法的のもの、学校できめたもの或は被告秋田県教育委員会から指示されたもの等あるが原告下総次郎は欠席多く、従つて右規律を破るような結果をも生じた事実が認められる原告佐藤勇については仙北郡雲沢村高森部落は村として米の収獲の多いところで昭和二十二年度までは供米割当について何等同部落から苦情がなかつたのに翌二十三年度の供米割当に対して同部落民から凄い闘争が起つたその割当は不当ではなかつたが右闘争の指導を為した者は原告佐藤勇であつた、また右高森部落民が所得税の申告問題で大騒ぎをしたことがあつた際にも原告佐藤勇が他の一名の教員とともに右闘争の指導をしたり、雲然中学校のPTA総会の席上において原告佐藤勇は「自分は先生を罷めるため辞表を出すが絶対に雲沢村を去らない、そして断乎として闘い村民を皆共産党員にして見せる」と放言したり、共産党の機関紙アカハタを原告佐藤勇が角館町から持ち来つて西長野部落から雲然中学校に通学する生徒を通じて配付させたことについても父兄の間に問題となつたりした等の結果赤い先生は困るというわけで同原告に対する転任運動が展開された事実が認められる。

原告笹川富男については角館北高等学校教員藤原二郎及び津村諦堂に対して同原告は共産党に入党方の勧誘を為しまた昭和二十四年二月頃角館町内の電柱や板塀に角館南高等学校内の日本共産党の青共班が結成されて居りその青共班がその名に於て角館北高等学校の青共班の結成を祝う旨のポスターを貼つたことあり、右南北高等学校の青共同盟が結成されたその指導は原告笹川富男がしたものであつてこれらの行動は父兄に相当不安の念を起させたり学校内でガリ版の「ともしび」と題するものを発行していたがそれには青共班に加入した人達も投稿して居り、原告笹川富男の発刊を祝う旨の記事も登載され、同原告は右青共班の結成や活動について学校の内外ともに重大な役割を演じた事実が認められる。

原告赤坂隆三については同原告は組合の専従者は認められなくなり日教組の中央執行委員として長期職場を離れて組合専従者たることが許されない情勢になつたことを知悉しながら学校長及び被告秋田県教育委員会の許可を受けることなく昭和二十三年二月から昭和二十四年二月下旬まで大曲小学校教諭の職場を離脱しその後も依然無許可のまま日教組の組合本部に在駐したので当時の大曲小学校長稲田金右衛門氏から同校教諭の職場に復帰するかまたは退職願を提出するよう勧告されたが原告赤坂隆三は恬としてこれに応じなかつたものである事実が認められる。

原告訴訟代理人の提出援用に係る証拠中叙上の認定に反する部分は信を措きがたく結局叙上の認定を覆すに足る証左がない。

叙上説示の如き事実の認められる以上は原告沢田一義は教育者として逸脱行為に出で勤務時間を割いて政治的活動を為したもので教育公務員としての服務規律に違背し教育基本法の趣旨及教育委員会の指導方針にもとつたものであり、原告下総次郎、同佐藤勇両名もまた教育者として逸脱行為があり教育基本法の趣旨並びに教育委員会の通牒、指導方針にもとる行動のあつたものであり、原告笹川富男は政令第二百一号の趣旨並びに教育委員会の指示方針にもどり教育者として逸脱行為のあつたものであり、原告赤坂隆三の前示行動は教育公務員として職務を怠り、服務規律に違背したものであると謂わざるを得ない。

教員の任免権を有する教育委員会が教員に対しその意に反して辞任し、免職しその他これに対していちじるしく不利益な処分を行い又は懲戒処分を行うについては国家公務員法第八十九条乃至第九十二条第二項の規定を準用することは教育公務員特例法第十五条の規定上明らかであるから任命権者である被告秋田県教育委員会が原告沢田一義、同下総次郎、同佐藤勇、同笹川富男に対して昭和二十四年十月二十五日各休職処分を為し、原告赤坂隆三に対して同年二月二十八日附を以て懲戒免職の処分を為したのも無理からぬことで決して不当な処分とはいうことはできまい、原告訴訟代理人の主張する如き憲法第十四条の違反でもないことは勿論また原告主張の如き不当労働行為でありと認め得べき証左がないから所論の如き労働組合法第七条の違反でもない。

本件処分自体が叙上の趣旨に適合し相当である以上はこの処分について偶々適用法令等について多少見解の相違があつたと仮定するも結局に於いてその処分行為そのものは実質的、客観的に正当なることに帰するから該処分はこれを取消すべき限りでないと解すべきである。

従つて原告の本訴請求の理由のないことは既に叙上の説示によつて自ら明らかであるから爾余の判断を俟つまでもなく失当としてこれを棄却せざるを得ない。よつて訴訟費用について民事訴訟法第八十九条の規定を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 熊倉正治 安田忠治 泰不二雄)

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