大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

秋田地方裁判所 昭和46年(ワ)163号 判決

〔主文〕被告は、別紙物件目録記載の物件を製造販売してはならない。

被告は、その営業所および工場に存する前項の物件(完成品)並びに同物件の製造に必要な金型を廃棄せよ。

被告は、原告に対し、二五四万一、三六三円およびこれに対する昭和四六年五月二八日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

この判決は仮に執行することができる。

〔事実〕<中略> 一 原告は、訴外Mと左記の実用新案権を共同考案して共有登録し、右実用新案権の実施品である蹄鉄を製造して、日本国内はもちろん、アメリカ、カナダにも多量に輸出している蹄鉄製造販売業者である。

考案の名称 蹄鉄

登録 昭和四一年五月二七日

登録番号 第八〇三一九九号

二 本件登録実用新案の技術範囲は、「両端末の下面を内方に向つて削切して傾斜面を形成した蹄鉄」である。<後略>

〔判決理由〕一 原告が、本件登録実用新案権を訴外Mと共有し、その実施品である蹄鉄を製造していること、被告が、構造および作用効果上の特徴が右実用新案権の技術範囲に全く一致する本件蹄鉄を製造していることについては、当事者間に争いがない。

二 被告は、本件蹄鉄をMの機関として、同人の指揮監督のもとで製造しているにすぎず、その製造行為は同人の実用新案権の正当な実施の範囲に属する旨主張するので、この点につき検討する。

<書証>、証人Mの証言、原告および被告代表者の各本人尋問の結果によれば、次の事実が認められる。すなわち、被告は、馬具等を中心とする機械工具の製造販売を業とする会社であるが、昭和四二年初め頃、Mから本件実用新案権に係る本件蹄鉄の製造の依頼を受け、以後、本件蹄鉄を製造し、Mの指示に従つて、専ら同人の経営する有限会社日本M商会に納入しており、他に右製品を販売したことは全くない。また、右製造に当つては、M自身が蹄鉄の金型の原型を作出し、蹄鉄の釘穴、溝等の構造に関する詳細な技術指導、材料の品質、製造機械の性能等に関する具体的な指示をし、製品につき綿密な検査をしており、製造量および製品の単価も終局的には同人が決定し、被告はその範囲内において製造しているにすぎない。そして、製品の包装には、Mの指示により「マルテイプロダクツ」の商標が記され、被告の製造であることを示すようなものは、製品およびその包装にも全く記されていない。他方、被告は、Mまたは前記日本M商会との間に何らの資本的なつながりもなく、本件蹄鉄製造のための金型を所有し、その他の機械設備は、従来被告が所有していたもののほか、大部分を被告自身の負担において新たに購入して備え付けたものであり、また、材料も被告自身の負担で調達しており、これらについてMから何らの資金的援助も受けていない。したがつて、被告は、前記のとおりMから指定される単価の範囲内において製造工程の合理化等により利潤を上げることが可能な一方、材料費等のコスト上昇や不良製品による損失は被告の危険負担に帰せられている。そして、被告の本件蹄鉄製造による利益は、帳簿上「売上」として処理されている。以上の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

右認定事実によれば、被告とMとの関係は、請負契約的要素を含むいわゆる製作物供給契約ということができ、被告の本件蹄鉄製造は、Mのかなり綿密な指示のもとに行なわれてはいるが、被告が製造のための機械設備等を所有し、自己の計算において材料を調達し、利潤を上げている以上、単にMのために、その機関として、工賃を得て製造しているにすぎないものとは認め難く、被告が、自己のため独立の事業として製造しているものであると認められる。したがつて、被告は、Mから本件実用新案権の通常実施権の許諾を受けて、自己のため独立の事実としてその実施をしているものといわなければならず、右実施権の許諾につき、本件実用新案権の共有者である原告の同意があることについては、被告の主張立証がないので、被告の本件蹄鉄製造は、原告の実用新案権を侵害するものといわなければならない。また、前記証人Mの証言および被告代表者本人尋問の結果によれば、被告代表者Kは、Mとの間の前記契約を締結する当時、同人から原告が本件実用新案権を共有している事実を知らされていたことが明らかであるから、特段の事情の認められない本件においては右侵害について故意があるものというべきである。

三 そして前掲<書証>および証人Hの証言によれば、本件実用新案権の実施料は昭和四二年八月から昭和四六年六月二六日までの被告の本件蹄鉄の総売上げ高、売上げ利益率および取引上通常採用されている実用新案権の製品販売価額に対する実施料等を総合考慮し、右総売上げ高の五パーセントを下回わることはなく、したがつて、昭和四二年八月から昭和四六年六月二六日までの右実施料相当額は、少なくとも五〇八万二、七二七円を下ることはないと認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。そうとすれば、本件実用新案権は原告とMとが共有しているのであるから、右金額の二分の一である二五四万一、三六三円が、原告の通常受けるべき実施料相当額である。

四 そうすると、原告の本訴請求はいずれも理由があるので認容することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条を、仮執行宣言につき同法一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(篠原昭雄 石井健吾 多田元)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!