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秋田地方裁判所 昭和48年(む)105号 決定 1973年9月18日

主文

本件各準抗告の申立はいずれもこれを棄却する。

理由

一本件各準抗告申立の要旨は、被疑者らにはいずれも勾留の理由、必要が認められないのにかかわらず、被疑者らを勾留した各原裁判は違法であるのでその取消しを求める、というのである。

二まず、職権をもつて、被疑者らが本件各被疑事実を犯したことを疑うに足りる相当の理由の有無について判断するに、一件記録中、原裁判時に存した資料によると、被疑者らが本件各被疑事実を犯したことを疑うに足りる相当の理由があるものと認められる。

三次に、原裁判時に存した資料により認められる被疑者両名の地位、関係、各被疑者と被害者との関係ならびに本件犯行の態様犯行後の被疑者らの行動等を総合すると、被疑者両名を原裁判時点において釈放するときには、被疑者両名が通謀し、あるいは被害者に不当な働きかけをして、本件犯行の態様について罪証を隠滅するおそれが存したことが認められ、さらに、被疑者能戸は執行猶予中の犯行であること等の事実に照せば、同人が逃亡すると疑うに足りる相当の理由があるものというべきである。また、本件犯行の罪質、態様、被疑者らの地位、被疑者能戸の前科、前歴等に照せば、勾留の必要性を認めることができる。

四よつて被疑者両名を勾留した原裁判はいずれも相当であり、本件準抗告は理由がないから、刑事訴訟法四三二条、四二六条一項によりこれを棄却することとし、主文のとおり決定する。

なお、原裁判後に作成された資料をも含めて、一件記録を検討すれば、被疑者能戸が本件犯罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由が存するか否かについては疑問なしとせず、従つてまた、被疑者米田が本件犯行の態様について罪証を隠滅するおそれがあるか否かについても疑問なしとしないのであるが、勾留取消の裁判においては格別事後審たる準抗告審の構造上、原則として原裁判後の資料はこれを自判の場合の資料とすることはともかく原裁判の当否の判断資料に供することはできないものと解するのが相当であり、本件においてはその例外を認めるべき特段の事由も認められないので主文のとおり判断する。

(伊澤行夫 柄多貞介 赤木明夫)

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