大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

秋田地方裁判所湯沢支部 昭和55年(ワ)24号 判決 1980年12月19日

原告

高階隆治

ほか二名

被告

高橋易男

ほか一名

主文

一  被告は、原告らに対し、それぞれ、金一〇九万二九二七円及びこれに対する昭和五四年一二月二一日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らのその余の請求はいずれも棄却する。

三  訴訟費用はこれを三分し、その二を原告らの負担とし、その余を被告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告らに対し、それぞれ、金二八〇万五一四〇円及びこれに対する昭和五四年一二月二一日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

3  仮執行免脱の宣言

第二当事者の主張

一  請求の原因

1  交通事故の発生

発生時 昭和五四年一二月二〇日午後五時四〇分ころ

発生地 秋田県雄勝郡稲川町字観音寺八一の一先道路上

加害車 普通乗用自動車

運転者 被告

被害者 高階ミヨ

態様 被告は、現場付近を小安方面から湯沢方面に向けて加害車両を運転して時速七〇キロメートルの速度で進行中、おりから右道路を湯沢方面から小安方面に向け対向して右側歩道路肩付近を徒歩で進行してきた被害者に自車前部を衝突させた。

結果 本件事故により被害者は骨盤骨折、頭部打撲等の傷害を負い、六時間半後の昭和五四年一二月二一日午前零時一二分、秋田県湯沢市表町三丁目三番一五号の雄勝中央病院にて、急性循環不全のため、死亡した。

2  責任原因

被告は、制限速度を三〇キロメートル超える七〇キロメートル毎時の速度で走行したことと、左手でカセツトテープの操作をし右手片手ハンドル操作をして前方注視を怠つた過失により本件事故を惹起したものであり、民法七〇九条により、本件事故によつて生じた損害を賠償する責任がある。

3  損害

(一) 医療費 金一四万六八九〇円

(二) 付添費 金六〇〇〇円(二日分)

(三) 諸雑費(ふとん借賃を含む) 金三万円(二日分)

(四) 輸血した人へのお礼 金三万五〇〇〇円(金五〇〇〇円×七人分)

(五) 葬祭費 金七〇万円

(六) 逸失利益 金一五四五万六三一九円

(七) 慰謝料 金一一〇〇万円

(八) 弁護士費用 金一〇〇万円

4  相続関係

原告らは高階ミヨの被告に対する損害賠償債権を三分の一ずつ相続した。

5  よつて原告らは、それぞれ、被告に対し、右損害金の内金八四一万五四一九円(右損害金合計二八三七万四二〇九円からすでに填補をうけた損益相殺金一九九五万八七九〇円を控除した分)の三分の一の、金二八〇万五一四〇円及びこれに対する昭和五四年一二月二一日から支払済まで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求の原因に対する認否

1  1、2、4の事実は認める。

2  3(一)、(二)の事実は認める。

3  3(三)については、入院一日あたり六〇〇円として金一二〇〇円が相当である。

またふとん借賃は否認する。

4  3(四)については、特別事情による損害と考えるべきであり否認する。

5  3(五)については金五〇万円が相当である。

6  3(六)については金九五二万九三八五円が相当である。

7  3(七)については金八〇〇万円が相当である。

第三証拠〔略〕

理由

一  請求原因1、2及び4の事実については、当事者間に争いがない。

二  そこで同3の損害につき検討を加える。

1  医療費

金一四万六八九〇円であることは、当事者間に争いがない。

2  付添費

金六〇〇〇円であることは、当事者間に争いがない。

3  諸雑費

金一二〇〇円については、当事者間に争いがない。その他、原告本人尋問の結果によると、ふとんの使用料として金五〇〇〇円の出費をしていることが認められ、これも損害と考えるべきである。その余の損害については、これを認めるに足りる証拠はない。

4  輸血した人へのお礼

原告本人尋問の結果によると、輸血をした六人に対し各金五〇〇〇円ずつ合計金三万円支払われたことが認められる。そして、本件事故による被害者の受傷状況等に鑑み、右の出費は本件事故に基づく相当な損害と判断される。

5  葬祭費

原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨により認められる被害者の年令、職業、社会的地位等に照し、金五〇万円が相当である。

6  逸失利益

被害者については、原告本人尋問の結果により、十年来パートに出て収入を得ていた他、家庭の主婦として、二人の子供と高齢の夫の母親の面倒をみていた等の事情が認められ、これらの事情を考慮すると、被害者の収入は四九歳の女子の年齢別平均給与額で計算すべきである。そして、成立に争いのない甲第一〇号証によると、四九歳の女子の平均給与月額は金一四万六〇〇〇円であることが認められ、最低就労可能年数六七歳まで一八年間右の収入があるものとみて、それより生活費としてその四〇パーセントを控除し、これを基礎としてホフマン方式により中間利息を控除すると、被害者の逸失利益は金一三二四万八四八三円となる。

(146,000×12×0.6×12.6032=13,248,483)

7  慰謝料

本件事故の態様、結果及び原告本人尋問の結果認められる被害者の家庭状況等諸般の事情を考慮すると、慰謝料は金九〇〇万円が相当である。

8  弁護士費用

金三〇万円が相当である。

三  そうすると、被告は、原告らそれぞれに対し、損害賠償として金一〇九万二九二七円(右合計金二三二三万七五七三円からすでに損害の填補をうけた金一九九五万八七九〇円を控除した額を三分したもの)及びこれに対する履行期経過後の昭和五四年一二月二一日から支払済まで年五分の割合による遅延損害金の支払義務があるというべきである。

四  よつて、原告らの被告に対する本訴請求は右の限度で理由があるのでこれを認容し、その余の請求はいずれも理由がないのでこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条本文、九三条一項本文を、仮執行の宣言につき民訴法一九六条を、それぞれ適用して、主文のとおり判決する。

なお、仮執行免脱の宣言の申立については、相当でないから、これを却下する。

(裁判官 門野博)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例